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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15

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 二度目の生を受けた子供、ホノメは、シンの親に拾われ、リョウカという名前を付けられ、育てられてきた。しかし、ホノメを死に至らしめた病は取り除かれる事なく、リョウカとして長く生きるのは不可能だった。
 リョウカを宿主として、女神である少女は失った力を取り戻そうとしていた。そんな中、リョウカの先天的病は突如として牙を剥き始めた。
 リョウカが二度目の死を迎えたその時は、彼女と共に消えてしまう危険があった。
 リョウカが死ぬことがないように、少女はリョウカから抜け出し、シエルと名乗り、シンへとリョウカを守ってくれるよう頼んだ。
「彼は最善を尽くしてくれました。ですが、残念ながらリョウカは二度目の死を迎えてしまいました……」
 本来ならこれで、女神もリョウカも消えるはずだった。しかし、天界の全てを託された女神は消えることを許されなかった。
「そこで、私は一計を案じる事にしました。人の子が死にゆくとき、その者が見る理想の夢に干渉する事です」
「……だから私の夢に兄様が現れたのか」
 夢に出てきた人々の様子がおかしかったのも納得できた。リョウカの理想がホノメとして両親と安らかな生活を送ることならば、彼の登場によりそれが狂ってしまうことになりかねなかった。
「そして、シンの役をしていたのが私です」
 女神は、打ち明けた。不意に、リョウカから笑い声が響いた。
「アハハ……、どうりで私が感づけなかったわけだ。お前、兄様とはかなり違っていたぞ? 兄様は袴なんて死んでも穿かないような人だ」
「声音は魔法でなんとかできましたが、あの格好は、さすがに……」
 シンのあの軽装を真似るのはさしもの女神でも恥を覚えたらしかった。
 恥じらいで小さくなった女神だったが、咳払いして話を戻した。
「もう察しのようですが、貴女は私の片翼を生命力として復活した、言わば私の一部です。貴女が私の元に戻れば、私は女神として再生を果たせます。ですが……」
 女神は目を伏せた。
「私の再生の為だけに人の子の存在そのものを消すことになってしまいました。もしも貴女が望むのなら、これも定め。私は再生を諦め、ほとんど崩壊してしまいましたが、貴女の理想の世界を直して私だけが消えましょう」
「お前は私がこんな世界を望んでいると思うのか?」
 口だけではない、女神の心にもリョウカの本心が届いた。理想によって作られる夢の世界だというのに、リョウカはそれを拒んだのだ。
「で、ですが、私が再生したら、貴女の意思はなくなるのですよ?」
「こんな知らない人だらけの世界に置いて行かれるくらいなら、無限地獄にでも落とされた方がましだ。無意識の中の理想で創られた世界など、私は一切望んでいない」
 理想の世界だとリョウカは認識したが、この世界はどうやら死した者が本当に望んだ世界は創ってはくれないらしい。リョウカにとっては理想などこの世界には感じなかった。
「本当に、よろしいのですか?」
「ここまでしてきて意気地のない神様だ。何のために私の夢にまで干渉したんだ? もうこの世界で記憶を取り戻した時から覚悟はできてる。女神様の翼になれるなら名誉だ」
 女神は小さく笑った。
「ふふ……、そうですね。本当に私はここまで来て、人の子に諭されるなんて、神様失格です。悪魔にやられたみんなにも笑われてしまいます……」
「本当にな、最期に神様に説教できるなんて、おかしな話だな」
 アハハ……、と二人しばらく笑いあった。そして、一息付くと、女神は自らの分け身へ向き直った。
「お前の翼に戻るにはどうすればいい?」
「何もしなくていいですよ、私と一つになるまでの間、静かにしていてもいいですし、何か話していても構いませんよ」
「……そうだな、じゃあ私の最期の言葉を聞いてくれるか?」
 二人の体が輝き始め、身にまとっているものが消えた。リョウカは自らが一糸纏わぬ姿となり、少し驚きを見せたが、すぐに視線をある場所に向けた。
「ふふふ……」
「どうしましたか?」
「いや、私の方が少し大きいな、と思ってな……」
「なっ!?」
 リョウカの視線は女神の少し控えめな胸にあった。自分の撓わなものと比べ、軽い優越感を覚えた。
「どこを見ているのですか!? ……もう、始めますよ!」
「ああ、頼む……。さて、なにから話そうかな……」
 女神は赤面しつつもリョウカの両腕を持った。同時にリョウカは最後の話をし始める。
 念じていく間に、リョウカの体は光の粉に変わっていく。
 融合している間、リョウカは、仲間達に伝えたい事を話し続けた。女神は黙って念じながらも、彼女の話に耳を傾けていた。
 リョウカの体半分が光の粉に変わって消えていった。
「もう、半分か。まいったな、私はまだ半分も話した気がしないのに……」
 語尾に涙が混じった。
「は、はは……、おかしいな、なんで私泣いてるんだろう……。思い残すことなんか、無いはずなのに……」
 女神も涙していた。念を止めることなく、閉じた瞼の端から涙が溢れ出ていた。
 リョウカが話す全てのことが、女神の記憶にもある。楽しかった事も辛かった事も、どんな事もリョウカと共に歩んできた。
 女神は友と思い出話をしているような気がしていた。しかし、その友は消えていく。
 ついにリョウカの体は無くなり、残ったのは、女神が持つ両腕と頭だけとなった。
「……ス……、お前に最後伝えたい事がある……」
 ついに両腕も消滅し、支えを失った女神の手はだらりと下がった。女神は目を閉じ涙を流したまま、最後の言葉を聞いた。
「私は、本当に、幸せだったよ……!」
 リョウカは言い残し、涙に濡れた笑顔を最後に完全に消滅した。
 無色透明の世界に一柱残された虹の女神は、己が翼が再生していくのを感じながら、涙に震えていた。