黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15
姿を現したそれは、リョウカによく似ていた。着ているものも白の小袖の着物に漆黒の袴である。しかし、その人物はリョウカとはまるで違うところがいくつか見られた。
だんだん明らかになっていく顔は、リョウカのように好戦的な感じにつり上がってはおらず、物憂そうな、睫の長い瞳をし、彼女の特長である真紅の髪は、色を持たない真っ白なものだった。
「お久しぶりですね、この姿で会い見えるのは」
白髪のリョウカ、いや、虹の名を持つものは再びシンの元へ姿を現した。
※※※
ロビンは言葉を失っていた。
リョウカが今この場所に二人いる、ということにはもちろん、驚いていたが、それ以上に驚愕すべきところがあった。
かつてイズモ村にてヒナと刃を交え、ロビンの持つ力を看破された際に、リョウカについても、ヒナは話していた。
リョウカは人間ではない、この言葉を浴びせられた時には全く理解が及ばなかった。しかし、筋道立てた話を聞いていれば、リョウカが人外の何かであることは辻褄の合う点が見られた。
それは、エナジーを持っていたことである。しかし、これだけならばエナジストというだけで片付く話だが、ヒナが言うには、イズモ村ではエナジーを呪術と呼んでいたが、リョウカは最初からエナジーと呼んでいたという。
更に追及すると、これはロビン自身もかつて気になったことだが、リョウカは火のエナジーを主体として使っていたが、どんなエナジストでも不可能な多属性のエナジーを使うことができた。エナジストは自らのエレメンタルに属さないエナジーは、ガルシアの持つ魔導書など他の媒体を介さない限り、使えないのである。
地、火、水、風。これら全てのエナジーを駆使し、尚且つ、通常エナジストの使うエナジーよりも圧倒的な威力を誇っている事から考えるに、リョウカの正体を、ヒナはこう予想していた。
神、またはそれに等しいもの、と。
そんなヒナの予想通り、神にも匹敵するような人物が現れた。彼女は何やら不思議な力を発している、エナジーとも違う、神々しいものだ。
「シエル! どうして出てこられたんだ、まさかもうリョウカは……!」
シンは純白の少女をシエルと呼んでいる。それが彼女の名前なのだろうか、ロビンがふと、考えている間にシンは落ち着くよう窘められていた。
「驚くのも慌てるのも、気持ちは分かります。しかし、まずは落ち着きなさい」
シエルとリョウカ、シンの関係性はロビンには察しかねたが、浅からぬ何かがあるのはシンの様子から理解できた。
「まだ、リョウカの肉体は完全に滅びてはいません」
「じゃあ、一体どうしてここに!?」
明らかにただならぬ事態が生じている事は、シンの慌てぶりからひしひしと伝わっていたが、シエルは彼の問いを無視し、ロビンへ視線を向けた。
「お前は一体……、リョウカ、なのか……?」
ロビンの口から自然に問いが零れた。
「リョウカとは私の仮の姿、私の方が本体、リョウカを宿主として十六年間彼女の中にいました。真の名は……、私からは言うことができません。なので私の事はシエルとお呼びください」
「シエル……」
ロビンはそれ以外口にできなかった。それほど混乱しきっていたのだ。
「シエル、オレの言うことに答えてくれ! どうしてお前は姿をあらわした? リョウカは一体どうなったんだ!?」
ロビンよりもシンの方がよっぽど混乱していた。
「そう焦らずともきちんとお話します。ロビンにも理解してもらえるよう、自己紹介しただけです」
騒ぎ立てるシンに機嫌を損ねる様子は、シエルにはなかった。よく言えば包容力が強く、悪く言えば感情に起伏がない、そのような印象である。
「私がまたこうして現れた理由は、単刀直入に申し上げましょう。リョウカの肉体は、もう限界です」
シンの顔にあからさまな絶望が浮かんだ。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15 作家名:綾田宗