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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15

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第55章 虹の女神の再生、前編


 まだ夜が明け切らぬ暗い、猛吹雪の吹き付ける中を、ロビンとシン、そして背負われたリョウカが進んでいた。
 他の仲間はまだ宿で休んでいる。彼らは先に行く、とだけ書き置きを残し、まだ闇に包まれた雪道を歩いていた。
 なぜ彼らだけ、それも明け方に、しかも重病人のリョウカまで連れて最後の灯台を目指しているのか。それは少し前に遡る。
    ※※※
「リョウカの肉体は限界だって?」
 ロビンは絶望するシンを余所に、シエルが何を言っているのか理解できずにいた。
「戸惑うのも無理はありませんね。ロビン、実はリョウカは生まれて間もなく亡くなったエナジストなのです……」
 ロビンはそれでもまだ現実に起きている事態を把握し切れていなかった。もしかしたら、これまでの事は全て夢だったのでは、という疑念が頭を過ぎったほどである。
「亡くなったって、じゃあここにいるリョウカは一体……?」
「順を追ってお話しする必要がありそうですね」
 シエルは少し間を置いてから話し始めた。
「約十五年前に起こっていた天界での大戦の末、ほとんど魂だけとなった私は、再生すべくエナジストの体を憑代とする必要がありました……」
「天界、まさか!?」
 ロビンはかつてヒナから告げられたことを訊ねた。
「リョウカ、いや、リョウカの本体だという君は神様なのか!?」
 シエルは、それが癖なのか、伏し目がちに小さくはい、と答えた。
 ヒナの予想はその通りだった。シエルは話を続ける。
 元は死んだエナジストであったリョウカを、シエルは自らの残る力を使い蘇生させた上で憑代としていた。先天性の病によりリョウカは息絶えていた。病を取り除くまでの力はもう、その時のシエルには残されていなかった。
「おい、一体どうすればいい!? どうすればお前達を助けられるんだ!?」
 何故、シエルは再生しなければならなかったのか。ロビンがそこまで聞く前に、シンが二人が助かる打開策を求めた。
「私とリョウカをマーズ灯台へ連れて行ってください」
「マーズ灯台へ、どうしてだ?」
「リョウカと私の共有するエナジーは全てのエレメンタルですが、本質は炎です。火の力が溢れ出るマーズ灯台へ行けば、燃え盛る生命力がリョウカを回復させてくれるでしょう」
 しかし、それも一時であるとシエルは付け足した。
 リョウカの命の灯火はもう一日も残されていなかった。つまりは残る時間は半日にも満たなかった。シンはそれを聞き、これまでにないほどの絶望感に崩れ落ちた。
「半日でリョウカが死んでしまったら、どうなってしまうんだ?」
「リョウカが自らの真の存在をしれば、私は解き放たれ、神として再生することができるのです。しかしそれが叶わなければ、リョウカとともに魂ごと消滅してしまいます」
 圧倒的に不利な賭であった。仮にリョウカが復活したところで、寿命は間もなく訪れる。その間にリョウカがシエルの存在を認識し、自らの事も知る、などということは途方もなく小さな可能性だった。
「……行くぞ」
 シエルの話を聞き終始絶望していたシンだったが、ついに、立ち上がった。
「シン?」
 どこへ行くつもりか、問いかけるまでもなかった。
「マーズ灯台へ急ぐぞ! グズグズしちゃいられない。妹を守るんだ! どんなに小さな確率でも可能性があるならオレはそれに賭ける!」
 シンの瞳に迷いはなかった。
 シンは灯台へはリョウカを連れて単身で向かうつもりでいたが、ロビンも知ってしまったからには残ることを拒んだ。そしてシンとロビンはリョウカを連れ、書き置きを残し、仲間達を置いて夜明け前のプロクス村を発った。
    ※※※
「シン、リョウカの様子は!?」
 先行するロビンは後ろを振り向いた。
「まだ大丈夫だ、だが、体温が下がり始めた」
 ロビンは愛用のロングマフラーを外し、シンの背中のリョウカに巻き付けてやった。
「気休めにしかならないかもしれないけど……」
「いや、ありがとう。ロビン」
 今、シエルはリョウカの中へ戻り、寿命がくるのを少しでも遅らせようとしている。その方法は、シエルに残るほんの僅かなエナジーを使い、リョウカの肉体に生命力を与えるものだった。
 シエル自身にもエナジーはほとんど残されてはいない。延命できたとしても、その長さは数時間が限界であった。
 時間は僅かしか残されていなかった。シンにはリョウカの鼓動がだんだん弱まってきているのを感じられた。
ーーまだか、マーズ灯台は……!?ーー
 シンは、相変わらず吹き付ける雪に、顔をしかめた。
「シン! あれを見ろ!」
 ロビンは再び振り返り、シンを見やると、前方を指さした。
「あれは……!」
 眼下に広がる風景は、数日前、レムリアの宮殿にてハイドロより見せられたものと違わなかった。
 山々が連なる先に、漆黒に包まれた空間が覗かれた。その空間の中では、紫電が一定の周期で弾けている。
「暗黒ガイアフォール……!」
 ウェイアードの西と東の海原にある巨大な滝、ガイアフォールとは似てもに付かなかった。
 全てが暗黒であり、その先に何があるのか全く見えない。周期的にバチバチと弾ける稲妻を見ているだけで、吸い込まれるような錯覚に陥ってしまう。
「なんでも吸い尽くしてしまいそうだな、あの空間は……」
 浸食が早いのも見て取れた。暗黒ガイアフォールに近接する山は、そのほとんどが削ぎ落とされたようになっている。今こうして見ているだけでも、どんどんこちらへ迫ってきているような感じさえした。
「暗黒ガイアフォールが見えたという事は、もう少しだ。もう少し進めばマーズ灯台だ!」
「ああ、急ごう!」
 ロビン達は間もなく見えるであろうマーズ灯台を目指し、再び歩みを進めた。
 それからのマーズ灯台までの道程は、それほど遠くなかった。山岳地帯に囲まれた赤色の石造りの灯台は、周囲の山々や暗黒ガイアフォールのせいで、ひっそりとして見えた。
 視界が悪いせいでもあるだろうが、辺りを照らしうる光となる炎の力を帯びた灯台には見えなかった。その理由はマーズ灯台へ近づく毎に明らかとなっていく。
 ロビン達はマーズ灯台へたどり着いた。ドラゴンの彫像が二体ある入り口は既に開かれていた。これは、火のエナジストであるカーストとアガティオもマーズ灯台へやってきた、ということを意味していた。
 しかし、彼女らは一月も前に突入したはずなのに、灯台は灯されていない。一体どうしたことなのか。
 答えなど考えている暇は、今のロビンとシンにはなかった。
 灯台内部へ進入すると、驚くべき光景が、ロビンとシンの目に飛び込んできた。
「灯台の中が……!?」
 光景に思わず言葉がこぼれてしまったのはロビンだった。
 マーズ、火の力を司る灯台だと、この風景を見て誰が思いつくだろうか。
「凍ってる……、どこもかしこもひんやりしてやがる……」
 火の灯台といえども、灯火がない以上はその効力を発揮しないのか。灯台内部は大寒波にさらされたせいであちこちが凍結していた。
「マーズ灯台についたけど、ここで一体何をすればリョウカは……」
 ロビンの言葉はけたたましい叫び声に阻まれた。
「何だ!?」
 シンは雄叫びのした方を見た。
「グオアアアア!」