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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 15

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 入れ代わるように意識を取り戻したリョウカへ、ロビンは彼らがマーズ灯台にいる経緯を説明した。リョウカは何かを悟っていたのか、自身がここにいる理由をそれ以上追求してこなかった。
 ただシンが今奥で戦っていること、それを聞くとすぐさま駆けだしてしまった。
 ロビンは慌てて追いかけた。ドラゴンとの戦いでリョウカが果てる事があればその瞬間、彼女を宿主としているシエルごとリョウカは存在が消えてしまう事を、ロビンはシエルから聞いていた。
 シンが戦っているであろう場所へ着くと、シンは満身創痍で倒れていた。
ーー後少し、後少しだ……ーー
 ロビンはエナジーを身に纏いながら、一心にシンを復活させられるだけのエナジーをためていた。
 光の輪が消えては現れを繰り返すエナジーの隙間から、ロビンはリョウカの戦いを見守っていた。
 持ち前の速さで二体のドラゴンを翻弄しているように見えるが、途中何度も発作を起こしていた。
「ごほっ!」
 もう何度目になろうか、リョウカは喀血し、宙に血が舞った。
 口元に滴る血には目もくれず、拭わない。そのような一瞬の隙も作れないほど二体のドラゴン相手にするのは、今のリョウカには力が及んでいなかった。
 びしゃっ、と辺りに血を吐き散らしながらも戦い続けた。かなり体力を消耗している様子が見てとれた。
ーー早くリョウカを止めないと!ーー
 ロビンは急ぎエナジーの充填を終わらせようとした。しかし、焦る気持ちがそれを邪魔する。
ーーくそっ! まだなのか……!ーー
 ロビンは雑念を捨てようと堅く目を閉じた。
 リョウカは巨躯のフレイムドラゴンの攻撃を受け止めた。しかし、もう体は満足に動かず、遠くまで吹き飛ばされ、壁に強かに打ち付けられた。衝撃で呼吸が一瞬止まる。
 リョウカは崩れ倒れるが、刀を杖にしてよろよろと立ち上がった。
「ゴホっ、ガハッ!」
 リョウカはその場で大喀血した。まるでなみなみと水が注がれた桶を、ひっくり返したかのような大きな水音を立てて、血だまりができていった。
 最早致死量の出血をしているように思われたが、リョウカはまだフレイムドラゴン達を見据えていた。
「ゼェ……、ハァ……! げほ、げほ……」
 大量出血のためか、視界はもう朧気である。大小のフレイムドラゴンを見分けることはできるが、もう剣で戦う力は残っていなかった。
 自身の赤い髪の隙間からフレイムドラゴン達を、リョウカは肩で息をしながら見続けていた。
「く……、うう……」
 リョウカは、鉛のように重くなった体を刀から放し、自らが作った血だまりに足を踏みしめた。真っ赤な飛沫があがる。
 非常にゆっくりとした動きで刀を納めると、ふらふらしながらも構えを取った。しかし、すぐに力尽き膝を突いてしまう。
 フレイムドラゴン達は勝利を確信しているのか、一切攻撃を仕掛けようとしてこない。リョウカが自滅した後にその腸を食いちぎってしまおうか、言葉を喋らないながらもそう言いたげな様子である。
「……どうした?」
 リョウカは掠れきった声を出した。
「まだ戦いは終わってないぞ……!」
 強がって挑発するリョウカであったが、明らかなやせ我慢だとフレイムドラゴンの目に写り、微動だにしなかった。
 うっ、とリョウカは失血によるめまいで再び地に伏してしまった。刀を使った戦いはもはや不可能であった。
 薄れゆく意識の中、どこからか声が響く。
ーーあなたはもうすぐ死ぬ。ですが、もう少しだけ命を繋いで……ーー
 この声はこれまでも何度か頭の中に響いた声であった。
 考える間もなくリョウカは体の奥底より、燃え盛る炎の力を感じた。
ーー私の本当の力、与えればあなたの肉体が持たない……。しかし、こうなれば後はこれに賭けるしかありません……ーー
「体中が、熱い……!」
 沈痛の中での声はロビンにも届いた。ロビンは堅く閉じていた目を開いた。
 ロビンは己が目を疑った。
 リョウカは全身を火に包まれたかのような、炎が揺らめくが如くメラメラしたオーラを体中に纏っていた。
 変化はそれだけではなかった。
 真紅の髪が再び鴇色に変わり、発せられるエナジーはエナジストを圧倒的に超えるものだった。
 リョウカの心に響く声は続く。
ーー神の力は、人の身で使用すれば体が持たなくなる。だから私は半分以下の力しか与えなかった……ーー
 リョウカは何かに導かれるように体を起こした。今度はすぐに膝を付くようなことはない。
ーー神のエナジー、使えるのは一度きり……ーー
 この言葉を最後に心に響く声は途絶えた。
 立ち上がり、異常な変化を遂げたリョウカの様子を見てフレイムドラゴン達は戦闘態勢になった。
 心の声はこの力を神の力と言っていた。激しく燃え盛るエナジーが顕現している以上、これを形容するのは神の力以外思いつかない。
 しかし、そんな凄まじいエナジーを今の自分に使いこなせるのか、リョウカは懸念した。体力の消耗も激しく、そのまま力尽き、息絶える可能性が高い。最早賭けに近かった。
 フレイムドラゴン達は襲いかかってくる、爪がリョウカを引き裂くべく間合いに入らんとする。
「どの道死ぬのなら、最期まであらがってやろう!」
 リョウカは死を覚悟の中、神のエナジーを発動した。
『アルカン・エクス・フレア!』
 リョウカの全身が眩いばかりの光を発し、右手から七つの放射状の巨大な炎が放たれた。
 七つに広がる炎は様々な色をしている、虹色の神秘的な炎であった。虹色の火炎はフレイムドラゴン達を余すところなく包み込んでいく。
 虹色に輝く炎の渦は、火に強いはずのフレイムドラゴンの皮膚を焼き焦がしていった。燃やし尽くす、というよりは聖なる力で、悪なるドラゴンを浄化しているようにも形容できた。
「うう……」
「シン!」
 驚くことに、瀕死の状態であったシンが息を吹き返した。ロビンは驚きのあまりエナジー充填を止めてしまった。
 ロビンは同時にシンの脈拍を探った。あんなに弱かった脈が、しっかりと規則正しく、彼の腕から伝わってきた。
「一体どうして……?」
 はっ、とロビンは自分自身にも変化があることに気が付いた。体の奥底から湧き上がらんばかりの力がみなぎるのを感じた。エナジー充填で多少の疲労を感じていたのだが、その疲れが吹き飛んだのだ。
 これらの現象の根元は、リョウカの放った虹色の炎にあると気づくのに時間はかからなかった。あの炎を見た瞬間、ロビンは疲労が回復していくのを感じたからだ。
 虹色に輝く炎はまだフレイムドラゴン達を包み込んでいる。邪なる存在の彼らは炎による浄化で苦悶の叫びを上げていた。
 やがて炎は大爆発を起こした。
「ギイヤアアアア!」
 爆発の中心でフレイムドラゴン達は絶命の叫びをあげた。倒れ込む彼らの上には雨上がりの空へかかる虹が架かっていた。