ダンガンロンパ・ファンタジック/リロード-Chapt.1-1
日が暮れてくるころまで、生徒はみな思い思いに海を楽しみ、
海の家のシャワーが使えなかったため
一度個室に戻りシャワーを浴びて着替え、個室で一息ついたところで、
それは始まった。
ピンポンパンポーン♪
この世界にある、無数のモニターから妖の姿が現れる。
時計を見たが、まだ午後9時。
学園長アナウンスには、まだ早い。
『えー、これより、サプライズ企画として
少し生徒に視聴覚室に集まっていただきたいと思います。
これは学園長命令です。集まらなかったらお仕置きしちゃうぞ♪』
モニターの妖はそう言って、消えた。
さっそくSNSを確認する。
『視聴覚室…赤い扉に一番近い、校舎1階の黄色いドアの部屋だったな』
と楓の書き込みがあったのをすぐに見つけた次の瞬間、
『…行きましょう、逆らったら罰ならここで人数を減らすわけにはいかない』
霊の書き込みが追加される。
学園長はルール無用なのかもしれない、という可能性は充分ありえる。
その為、香は霊の言葉に従う事にした。
……視聴覚室の黄色いドアの前に香がやって来た時には、他の15人も集合していた。
「皆来たわね」
と霊が確認し、
「行こうか」
理科がその扉を開けた。
そこには既に、妖が待っていた。
「こんばんはー!楽しい楽しいコロシアイ学園生活の初日だったでしょうね。
生徒の元気な姿を見られるのは教師の喜びでもあります。
楽しい姿をみるとやっぱ割り込みたくなっちゃうけど、自重させていただきましたー」
「あの監視カメラだな」
楓がすぐに気付く。
「もちろんですとも!
生徒に無駄な危険を与えるわけにはいかないからね!」
「いまだ、パワーをメ……」
雲隠がその学園長テンションに便乗しようとするが、
「それ以上いけない」
と華に止められた。
「さてさて、積もる話はあるでしょうが。
…ここに呼んだのは、君たちにプレゼントを渡したかったからなんだー」
と陽気に言う妖。
「プレゼント?」
華がその意味を探る。
「私は優しいからね、貴方達16人の元の世界の様子とかを撮影したビデオを用意したんだよー。
…せっかくだしプレゼントってことを判ってほしいので、私の故郷でもあり華の世界でもあるビデオを見せるねー」
と、例なのかわからないがとりあえず…視聴覚室のビデオデッキに、どこからか取りだしたビデオを入れ再生する妖。
そこに映っていたのは、平和な世界。
そして、友達のビデオメッセージだった。
『華、そっち大変だろうけど頑張って!』
『慌てて戻ってこなくていいから。こっちは任せて貴方はそっちの世界を楽しんでね!』
『少し留守にしても、妖ちゃんがそっちの様子は伝えてくれている。
だから、心配はしなくていいぞ。もっとそっちの世界を楽しんでやってやれ』
「…うう、みんなありがとう…!」
元の世界の皆が自分を応援してくれる。華は、嬉し涙を流した…
「おお、確かにこれは元気がわくビデオだな」
と楓。
「予想外でしたね、てっきり動機を提示してくるかと思ったら」
エーエルは朝のような『動機』を提示してくるのかと思ったので少し面食らってるような顔になっている。
「割とアットホームな気分になれるビデオだったな」
原作では、そんな気分になれることなどなかったのだが――
「で、みんなの分も配っておくねー。
自分の部屋にビデオデッキとテレビあったでしょう?皆見てみてねー」
と言い、取りだしたビデオを華に渡し、あと15人にもそれぞれビデオを渡しただけで妖は去った。
「まあ、特に危険なものでもなさそうだし――
明日までに全員自分の見ておきましょうよ」
と霊が提案する。
「そうだな、へっ…確かに元の世界のことは気になってたところだ…
総帥である俺が居なくなって混乱していないかとかな」
と骸。
「レノさん達のこと…気になる」
イティアも見る気満々なようだ。
「じゃ、結果は明日の朝の集まりでってことで…
そろそろ夜時間ね、解散しましょ」
そして、妖からの予想外のサプライズにちょっと妖を見直した一同は、それぞれの部屋に戻りそのビデオを見た。
一部の人を除き……見直すのを、後悔することになった。
これは、間違いなく…『動機』だったのだった。
それも、強烈な。
作品名:ダンガンロンパ・ファンタジック/リロード-Chapt.1-1 作家名:暗妖