機動戦士ガンダムRS 第38話 暁の宇宙へ
アイリス曹長は、自分の菓子を全てサオトメにあげた。
「さて私は、操縦訓練でもやりに行きますか」
そういうとジャック中尉は、食堂を後にした。
(すまない)
サオトメは、心の中でジャック中尉に謝罪した。
※
「ブースター取付作業を急げ」
アークエンジェルとドミニオンは、乾ドックで大気圏離脱用ブースターを増設していた。
※
クサナギは、オーブ連合首長国が開発したイズモ級宇宙戦艦の2番艦である。
しかしクサナギは、完成前にこの戦いが始まり仮組み立てのまま宇宙へ行きそこで最終組み立てが行われることになっていた。
「ジャンクション結合。
カタパルト接続確認しました」
「投射質量のデータに変更がある」
そのクサナギの胴体部分がM1アストレイ残存機の前にリフトで上げられた。
「宇宙へ出ることになるなんて」
マユラは、宇宙に行くなんて夢にも思わなかった。
「望むところよ」
「コロニー軍め」
しかしジュリとアサギの闘志は、十分だった。
「各機、速やかに乗艦せよ」
スロープが現れ乗艦準備が整った。
各機は、順に乗艦し始めた。
※
オーブの動きは、η艦隊もつかんだ。
「カグヤに集結している?」
ブライアン艦長は、イワン曹長に確認した。
「はい。
アドミラル・ティアンムからの情報ですから間違いないでしょう」
イワン曹長は、四天王の艦隊旗艦が偽情報に錯乱されることはないだろうと考えていた。
それは、ブライアン艦長も同じだった。
「サオトメを呼び出せ」
ブライアン艦長は、サオトメの意見も聞きたかった。
※
アークエンジェルのブリッジでは、増設ブースターの説明を首長から受けていた。
「クサナギの予備ブースターを流用したものだがパワーは、十分だ。
ローエングリン斉射と同時に全開にポジトロニックインターフェアランス現象を引き起こしそれで更に加速する」
皆は、首長からの説明を聞きながら各所の最終調整を急ピッチで行っていた。
※
サオトメがブリッジに入ると先のことをブライアン艦長から説明された。
「確かに宇宙に出る可能性は、ある」
その時サオトメは、あることに気付いた。
「いや、それが作戦か?」
ブライアン艦長がサオトメを怪訝そうに見ていた。
※
ミリアリア二等兵は、忙しい皆のためにおにぎりを配っていた。
※
マスドライバー司令室では、ウズミ前代表が直接指揮を執っていた。
「アークエンジェルとドミニオンの方は、どうか?」
ウズミ前代表は、クサナギ、アークエンジェルとドミニオンの発進準備状況が気がかりだった。
「お父様、脱出は皆で。
残してなどいけません」
その横でカガリが全員脱出を訴えていた。
「現在、ブースターの最終チェック中です」
オペレーターの1人が答えた。
「急がせ。
時は、そうないぞ」
ウズミ前代表は、カガリを無視して作業を急がすように命令した。
「お父様」
カガリは、なお説得した。
※
サオトメは、アドミラル・ティアンムに通信を入れマーク少将に自分の仮説を説明した。
「既にガンダム開発計画時にオーブと地球は、組入りアーガマもどきをかばい核ミサイルの量産が進んだ時点で宣戦布告し核ミサイル配備の時間稼ぎを行う。
わからなくもない話だがそうなると宇宙がとても危険な状況になっているということか?」
マーク少将は、サオトメの説明を聞き驚きを隠せなかった。
「軍人は、いつも最悪のケースを考慮しなければなりません。
前にも申しましたが核ミサイル以上の脅威の新兵器を開発しているかもしれません。
おそらくそれの完成の時間稼ぎもあったでしょう」
サオトメは、さらに「新兵器」の存在も危惧していた。
マーク少将は、あまりに戦慄しすぎて何も言えなかった。
「奴らの宇宙脱出は、何としてでも阻止してください。
そして私は、オーブ代表に停戦を呼びかけます」
その言葉にマーク少将は、おろかブライアン艦長も驚いた。
「私たちの真の敵は、地球軍です。
こちらには、まだビクトリア攻略戦が残っています。
それに宇宙の安全のため私たちも宇宙へ行かなくては、ならず地上戦力の大幅低下は否めません。
にもかかわらずオーブが他国の支援の使って地上戦力に攻撃を加えてきたらどうするんです?」
サオトメの質問にマーク少将は、答えられなかった。
※
リズィーシーガンダムとガンダムサイガーの発進準備が整った。
「マーク・ヘイル、リズィーシーガンダム出る」
「アツシ・サオトメ、ガンダムサイガー出る」
2機のガンダムは、決着をつけるべく出撃した。
「今度こそ決着をつけてもらいましょう。
俺たちに残された時間は、あとわずかなのだから」
イームズ准将は、作戦完了を願った。
※
マスドライバー施設のハッチが開放した。
「カグヤ周辺の貴重データは、全て許容範囲内」
整備員が気象データを報告した。
「レーダーに機影じゃ。
マン・マシーンじゃな」
首長の報告に皆が戦慄した。
「ラミアス殿、バジルール殿。
発進を」
ウズミ前代表は、叫ぶように命令した。
「解りました。
キラ大尉、アスラン中佐、援護を」
ラミアス艦長がキラ大尉とアスラン中佐に命令した。
※
キラ大尉は、フリーダムガンダムを起動させていた。
「発進を援護します。
アークエンジェルとドミニオンは、行ってください。
クサナギは?」
キラ大尉がウズミ前代表に質問した。
「すぐに出す。
すまない」
ウズミ前代表は、申し訳なさそうに答えた。
「こちらの艦載機には、高機動型モビルスーツがいない。
申し訳ないが2機だけで足止めしてください」
バジルール艦長がモビルスーツを出撃できないことに謝罪した。
アークエンジェルとドミニオンは、出撃態勢に移った。
「艦首上げ20。
ローエングリンスタンバイ」
ラミアス艦長の命令でアークエンジェルは、ローエングリンの発射態勢に入った。
ブリッジでは、カズイ二等兵が心配そうにフリーダムガンダムとジャスティスガンダムの出撃を見ていた。
※
マスドライバー司令室では、カガリが皆の脱出を懸命にウズミ前代表に訴えていた。
「お父様」
しかしウズミ前代表は、聞く耳を持たなかった。
「お前はいつまでグズグズしておる。
早く行かぬか」
ウズミ前代表は、さっさとクサナギに乗り込まないカガリにイライラしていた。
「しかし」
カガリは、皆と一緒にクサナギに乗り込みたかったので皆が乗艦するまで動こうとは考えていなかった。
「マン・マシーン接近。
距離15じゃ」
首長の1人がマン・マシーンの接近を報告した。
ウズミ前代表は、それを聞くとカガリをクサナギへ引っ張っていった。
「我等には、我等の役目。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第38話 暁の宇宙へ 作家名:久世秀一