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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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突破口



〈ヤマト〉がタイタンに近づいたのは、決して古代を救けるためばかりではなかった。それがこの場を切り抜けるひとつの方法だったからだ。

今、タイタンのまわりには、敵の駆逐艦がワープで続々と出現し、〈ヤマト〉を囲い込もうとしている。駆逐艦一隻一隻は怖くはないが、問題はそれが撒いてくる宇宙爆雷だ。無数の爆雷をまさに網の目のように宇宙に張り巡らすことで、〈ヤマト〉を中に封じ込め逃げられなくさせようとしている。そのうえで数隻の戦艦をもって、〈ヤマト〉を嬲り殺す気なのだ。

これに対して〈ヤマト〉の主砲はダウン寸前。いかに強力であろうとも、今や戦艦数隻どころか、一隻さえロクに相手にできはしない。

だが逃げ道はなくはなかった。駆逐艦による爆雷の網など、短時間にそう広範囲に広げられるわけもない。そこで沖田が選んだのが、一度タイタンに大きく近づき、古代を拾って敵のいない宙を見つけて一気に加速、この場を脱出する道だったのだ。

敵は〈ヤマト〉がコスモナイトを採りに来たのはもう知っている。だがそれでも、古代の〈ゼロ〉が石を運ぶ役を担(にな)い、そのため大気圏離脱に手こずっているとはまだ気づいていないものと考えられた。古代の飛び方があまりに妙で、十五に追われて墜ちずに済むとは奇跡に等しく、誰にとっても予想外に違いないというのもある――つまりむしろ、古代の方が、自分ではそれと知らずに〈ヤマト〉のための突破口を切り開いていたと言えた。

そして沖田が、見逃すことなくそれをただちに利用する手を考え出した――〈機略の男〉と呼ばれる沖田ならではの瞬時の判断と言うべきか。

敵が気づいていないなら、古代を救けて石を手にし、同時にこの場を切り抜けるチャンスも得られる見込みがある――〈ヤマト〉が今、〈ゼロ〉を着艦誘導すべく動いているのはそうした理由からだった。

だが肝心の古代が今、〈ゼロ〉をまともに操縦できないと言うのでは……今の〈ヤマト〉が古代に与えることのできる時間はほんのわずかだった。手間取るならばこちらがタイタンの大気圏に突っ込んでしまいかねない。そうなったら足を取られて〈ヤマト〉は速度を失ってしまう。加速して逃げるつもりができなくなるのだ。

そんなところに真上にでも敵に出現されたなら――そのときこそアウトだった。〈ヤマト〉の主砲副砲は、高い仰角を取ることができない。直上(ちょくじょう)を攻撃できるのは、対空用の煙突ミサイル程度なのだ。大型戦艦の装甲に傷も付けられるものではなかった。

〈ヤマト〉はすでに、このタイタンの宙域で危険を冒し過ぎていた。〈ゼロ〉が着艦できなければ、古代とコスモナイトを捨てて離脱する他にない。

今、〈ヤマト〉は島の操縦で、〈ゼロ〉の前に出るべく進んでいった。艦橋の窓には緩やかな弧を描くタイタンの輪郭。〈ヤマト〉は大気の上層部ほぼスレスレのところにあり、ともすればオレンジ色の海の上を船が進んでいるように見えた。

その〈ヤマト〉に古代は気づいているのかどうか……〈ゼロ〉はヨロヨロと機体を揺らし、横に進路をそらすような動きをやめない。相原の呼びかけにも、古代は無線を切っているままだった。