敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯
臨戦
「真田副長、及び徳川機関長はエンジンから手が離せない。よって今のメンバーで、近づきつつある敵からの防御に臨むことにする」
〈ヤマト〉第一艦橋で沖田は言った。先ほどからの艦橋クルーが立ち上がって彼に向かい、胸に手を当てる敬礼をする。「はい!」
「情報では敵は一隻であるという。だが侮(あなど)るな。大型の空母だ。ガミラス艦がここまで地球に近づいたことは前例がない。やつらにしても一隻で地球の船百隻に勝てると思ってないだろう。それを押して来るのには、よほどの理由があるわけだ。このタイミングでというからには、目的はこの〈ヤマト〉を発進前に破壊すること以外には考えられん」
「そこまで〈ヤマト〉に脅威を感じるということは――」新見が言った。「例の仮説はやはり正しいということでしょうか」
「『ガミラスは地球に波動砲があるのを既に知っている。そしてやつらはその完成を恐れている。なぜならやつらは同じものを造ることができないからだ』というやつだな。あるいはそうなのかもしれん」沖田は言った。「十年前に地球がやった実験がガミラスを呼んだのではないか、と……」
作品名:敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯 作家名:島田信之