敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯
巡航ミサイル
地球防衛軍司令部も、手をこまねいているだけではなかった。迎撃可能な各基地から宇宙へミサイルが射ち出された。しかし、そもそも〈ヤマト〉を造り〈ヤマト〉を護るために存在していた沖縄基地と違い、できることには限界があった。
「三分の二をなんとか撃破に成功しました」オペレーターが告げる。「しかしまだ39基が〈ヤマト〉に向けて進んでいます」
「予想される弾道です」と別のオペレーター。「ミサイルは二手に分かれ、東西から〈ヤマト〉に対して挟み撃ちをかけるようです。さらに一波と二波になり、第一波の22基が間もなく〈ヤマト〉に到達します。〈ヤマト〉から百キロ程度の地点で高度を落とし、地表スレスレにまで降下。そのまま超低空を〈ヤマト〉めがけて飛んでいくと思われます。こうなると地球の丸みのために、〈ヤマト〉からは地平線の陰に隠れて、直接狙って落とすことができません。第一波の〈ヤマト〉到達まで六百秒!」
訂正。やはり、手をこまねいているだけだった。
「〈ヤマト〉はまだ動けんのか!」
作品名:敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯 作家名:島田信之