敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯
巡航ドリルミサイル
正確に言うと、それは〈第二波〉ではなかった。〈ヤマト〉を狙うミサイルは、一波も二波もすべて同時に発射されていたのである。
120のミサイルのうち、100基が通常の巡航ミサイル。残り20が地中をドリルで掘り進むタイプのものだった。〈巡航ドリルミサイル〉とでも呼ぶべきそれは通常のミサイルよりはるかに重く、速度が遅く、宇宙にいる間に迎撃されやすい。実は〈第一波〉の通常ミサイルはわざと撃ち墜とされることでドリルタイプのミサイルを地上へ送り届けるための犠牲の役を担(にな)っていたのだ。
その犠牲は報われた。20のドリルミサイルのうち、17基が無事大気圏内に入り、かつて海底であった地面の上スレスレを縫うように一点に向けて進んでいた。再び東西に分かれて並び、全周からサメの顎あごで喰いつくように〈ヤマト〉に襲いかからんとして。
その姿は、やはりまた、地球の丸みの陰にあって今の〈ヤマト〉には見えずレーダーにも映らずにいた。
作品名:敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯 作家名:島田信之