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敵中横断二九六千光年1 セントエルモの灯

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そんな声も聞こえてくる。この球場にやって来るのは今はそんな人間だけだ。

だと言うのに、よくやるよな、と思った。この球場もその〈ヤマト〉とやらのためにこないだ停電喰らったんじゃないか。あの日、ここでもスタンドでは『バカ野郎ーっ!』の大合唱が響いたのに。

なのに、〈ヤマト〉に望みを懸ける――まだ希望を捨ててない人間がいるというのだろうか。この自分はどうだろう。こうしてまだ投手として、ボールなんか投げてはいるが。

上を仰いで見えるのは、果てなく広がる天井と、支える無数の柱だけだ。これだ。これが人を絶望させる。しかしその向こうに今、遠い宇宙に一隻の船がいるのだろうか。ただ一隻で本気で地球を救おうとして?

宇宙戦艦〈ヤマト〉。それが光速を超えたという。

「〈ヤマト〉か……」

と近藤は言った。今が昼なのか夜なのかすらわからない。なのに自分があの表示をどう受け止めていいかわかるはずがなかった。