銀魂 −アインクラッド篇−
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『ソードアート・オンライン』
・第四十八層 リンダース 森の中
森の中を無愛想な男2人が草をかき分けながら歩いていく。
黒髪の男は背中に子供を抱え、銀髪の男は無骨な鉄のケースを背負っていた。
「あの、すいません・・・僕なんかの為に手伝ってくれて・・・御礼は必ずします」
「んなもんいらねぇよ。それに構わねぇ。どうせ今日はオフの日だ、やる事が無くて暇つぶしに丁度良い」
「ったく、なんでこんな森の奥深くに住んでいる野郎がいるんだ。絶対変な奴だよ」
過去に2回程訪れた事のある銀時は、あの水車がありのどかな風景の街へ行くのだなと思いきや、男の子からそことは反対方向に行くのだと指示された。マップを確認すると階層の端にポツンとプレイヤーホームがあるのが確認できる。
「坊主、名前は?」
「僕の名前は『サム』、あなたたちは?」
「俺は『トシ』。んで、こいつは『ギン』だ」
「トシさんにギンさんか・・・お二人は知り合いなんですか?」
「「いいや、知りませんよこんな奴」」
「えっ・・あ、そ・・・そうですか」
見事に重なった2人の声にサムは驚く。なんだこの人達・・・と色々と思うも手伝ってくれている事には変わりないのでこれ以上の模索はしないこととした。
「サム、お前ぇはいつも『こんなこと』をしてんのか?」
「はい。何故ですか?」
「なんでってお前ぇ、こんな重い積荷に道も何もねぇとこを一人で運ぶとなりゃ、苦労が絶えねぇだろうが」
「そうですね。ギンさんが言ったこと、僕もたまに思います。流石に危ない場所には熟練の配達人が行くから僕は基本的に安全な場所しか配達しませんけど、それでも、僕はこの仕事を楽しいって思う事がたまにあるんです」
「配達が?」
「はい!」
銀時の問いにサムは何も惜しみなく大きな声で肯定する。
普通であれば、子供にこんな危険で大変な事をさせることは許されない。ましてや、このゲームではモンスターに限らず、PK行為すらする悪質なプレイヤーも存在する。
いくら生活の為だとしても、素直に誉めようという気にはなれない。
「『配達』って、一種の『繋がり』なのかなって思うんですよ。人から人へ、僕たちって掛け橋みたいな存在なんです」
「へっ。随分と達者な事言うじゃねぇか」
「わ、笑わないでくださいよギンさんっ!例えば・・・ギンさんとトシさんは『伝文結晶』って使ったことありますか?」
「あ?なんだそれ、田園?」
「俺は知っているぜ。要は手紙だろ?んなもの、わざわざ使わなくてもダイレクトメールがあるだろ」
「トシさんの仰るとおりです。ダイレクトメールとか僕たちを必要としないシステムが沢山あるなかで、わざわざ伝文結晶を配達してくれっていう依頼もあります。なぜそれを使うのですか?って、聞いてみたことがあるんですけど、『こちらのほうが想いが伝わるから』って言っていました。毎回使っているんですって」
「ふんっ、なかなか粋な事するじゃねぇか」
「ねっ!面白いでしょ?ほんの一例ですけど、それをつなぐのが僕たちの役目です。こんな世界でも、僕たちを必要としてくれるんだなって思うと、自然とやる気も出てくるんですよ」
その話をしている最中に目的地へと到着する。
森の中にポツリと建つ一件屋で、煙突からは煙が上がっている。
土方の背中から降りたサムはドアを2〜3回ノックし、中から痩せこけた男が出てきた。
「アルゲード・デリバリーです!依頼されていた荷物をお届けに参りました!」
「やっときた!いつも本当に助かってるよ!これが無いと狩猟ができないんでね」
銀時のケースから一つの結晶が取り出され、男は嬉しそうにそれをアイテムポーチに入れる。そのまま早速触ろうと再び結晶を取り出しオブジェクト化した。どうやら、狩猟弓のようだ。
「前使っていたのが壊れてね。困っていたんだ。昔みたいにすぐ近くにコンビニとかあるわけじゃないから、自給自足しないといけないからどうしても必要だったよ。だからといってリンダースまで行くのも大変だし、食材を買ったり外食をするまでのお金の余裕もないからね」
「もし何かあればいつでも頼ってくださいね」
「あ・・・早速、頼みたい配達があるんだ、良いかい?」
「もちろんですっ!・・・あ・・・」
サムは申し訳なさそうに後方にいた銀時と土方へ振り返る。
「気にするな。ちゃんと最期まで手伝ってやるつもりだ」
「お前さんの賃金になるんだろ?やるならやっとけ」
サムは2人に深くお辞儀をして、配送依頼を承った。
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w