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銀魂 −アインクラッド篇−

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・・・
『ソードアート・オンライン』
第四十七層 フローリア郊外 森林地区

職人による鉱石の加工はあっという間に終わった。
食事を終えた後に職人は鉱石を手に取り工房に引きこもる。ガガガギギギ・・・と、甲高い加工音が鳴り響きわずか5分足らずで工房から出てきた。職人の手によって無骨な鉱石は銀色に光り輝く先がとても鋭利なフック上の形となり、一体何に使うものか検討がつかないが、3人にとっては関係が無いため特に何も聞かず、昼食のお礼をした後にそのままはじまりの街を後にした。

現在、3人は最後の目的地である第四十七層「フローリア」を訪れている。
転移門があった主街区は花に覆われとても美しい街並みであり、フロア全体がそうなのかフィールドにも様々な種類の花が咲いている。

「このフロアって観光目的で訪れるプレイヤーが多いんですよ。目の保養にもなりますからね」
「右をみても左をみても花ばっかりだな。あの嬢ちゃんとペットが喜びそうな場所だ」
「時刻は15時過ぎ。大体丁度良いぐらいの時間になったな。サム、ここから目的地までどれぐらいある?」
「道なりに進んでなのでそれほど遠くはないです。すみませんねトシさん。ここまで手伝わせてしまって」
「気にするな。子供はもっと大人に頼れば良い」
「お優しいんですね。ここまで大人の人たちから親切にしてくれたのは久しぶりですよ」

その言葉に土方は眉をピクリと動かした。
サムだって、本当であれば友達と遊び、親に甘えたい年頃だろう。
生と死と常に隣り合わせであるこの世界に一人で居てはいけない存在なのだ。いや、サムだけではない。
今日一日で様々な人と出会い、その目で現状を見てきた。
常に前線に立ち続ける自分たちにとって、良くも悪くも新鮮だった。
皆、それぞれの思いを抱いて日々を生きている。
ただ、誰もが早くゲームクリアをして開放してほしい・・・という訳ではないのだ。
中には、今の生活に満足しているプレイヤーが存在している。

「なあ、サム」
「なんですか?トシさん」
「目的地に到着するまで、現実―リアル―での、お前の事を知りたい・・・駄目か?」
「ぼ・・・僕ですか?」
「無理強いはしねぇ。嫌なら別に良い」
「いえ、かまわないですよ!あまり面白くはないと思いますけど――」

3人は森林が生い茂る街道に入る。
森の吹き抜ける風と鳥のさえずりが次第に聞こえ始め、土方の質問に少しだけ悩んだサムはその口を開いた。

「僕は、お母さんとお兄ちゃんの3人暮らしでした」
「親父さんは?」
「お父さんは僕が生まれる前に病気で死んでしまって写真でしか会ったことがないです。お母さんは僕たちを育てるためにネットワーク関係の仕事をしていて、夜が遅い日もありますがそんなこと関係なしに僕たちのために朝ご飯やお昼の弁当、夕食を作ってくれます。掃除もきちっとしてくれています。優しいお母さんです。おじいちゃんやおばあちゃんの協力もあって普通の生活を送れていましたし、何不自由なく生活をしていました。あの日、までは・・・」
「あの日っていうのは、このゲームのことか?」
「はい。・・・あの日、お母さんの仕事の関係で試作段階のナーヴギアとソードアート・オンラインのデータを家に持ち帰ってきました。本格リリースに向けて最終調整をするために家で作業するために持ち帰ってきたみたいです。お母さんは『仕事で使うから絶対に触らないでね?』と言い残して、食材を買いに僕たち兄弟を残して買い物に行きました。でも、世間が注目するそのゲームに僕たちはずっと釘付けで、ほんの少しだけだったら大丈夫だよねっ・・・て、軽い気持ちで・・・その・・・」

――サムは口ごもる。
だが、土方と銀時は話の結末はわかっていた。
母親に無断で使ってしまい、結果的に出られなくなってしまったのだろう。

「ナーヴギアは一個しかなかったから、どちらが先に遊んでみるかじゃんけんで決めました。お兄ちゃんはチョキ、僕はグー。たった一回で勝敗が決まりました。『すぐ変わるから待っていて。』これがお兄ちゃんとの最後の会話でした。・・・それからは、皆さんと同じです。右も左もわからないまま僕は途方に暮れました。大人の人たちは状況が状況だったので我先にという感じで僕の相手などほとんどしてくれませんでした。幸いにも、綺麗な女性の方が僕一人で自由になれるまで一緒に居てくれて、なんとかこの仕事に就くことができました。たしか、あの人は今、血盟騎士団の副団長になっていたはずですが・・・」

まちがいなく、アスナの事だろう。
まさか自分の身近にここまでの繋がりがあったとは銀時は思いもしなかった。
サムは次第に声に覇気が無くなり、土方の背中に顔を埋めてしまう。

「あれからずっと、この世界で生きていて、様々な人に出会いたくさん繋がりができました。だけど・・・いつも寝るときに思い出します。僕の家で過ごした光景が・・・・ぐすっ・・・・本当はっ・・・・おうちに帰りたい・・・・・お母さん・・・お兄ちゃん・・・・ごめんなさいっ・・・・約束破って・・・怒っているかなっ・・・・ぐすっ・・・・呆れているかな・・・・・もうっ・・・・僕のことなんて―――」


「どうでも良いわけねぇだろぉが」


その言葉を発したのは銀時だった。
ずっと堪えていた本当の自分の想いに対し、自分と土方の前を歩く銀時はこちらに振り向かず歩きながら返答した。


「んな程度で呆れかえる親なんてどこの世界にもいねぇよ。子供ってのは多少親を困らせるほうがかえって可愛いもんさ。てめぇはもっと大人に甘えれば良い。もっと我儘を言えば良い。てめぇの尻は大人に拭いてもらえば良い。誰も文句なんざ言わねぇよ。大人は子供を守って当たり前だからな」

別に、子供がいるわけではないが銀時は多少なりとも親の気持ちがわかる気がした。
あちらの世界には自分のすぐ傍にそれが存在したからだ。

「親ってのはな、子供の為ならどんなことでもするもんさ。子供の為なら天使にも悪魔にでもなる。ウー○ー・ゴールド〇ーグや高橋○典さんにだってなれるし、デビルマンやマジンガーにだってなれる」
「ぐすっ・・・ギンさん・・・・」
「いや、流石にデビルマンやマジンガーにはなれねぇだろ」
「いつか・・・、この世界に終わりの時が訪れたらよ。てめぇは笑顔で『ただいま』と言えば良い、それだけで十分だ。親ってのは、自分の子供が笑っている姿を見ているだけで満足になるもんさ。そして自慢してやれ。俺はこの世界でたくさんの人を繋いできたってな。てめぇが繋いできたもんは、決して無駄じゃねぇよ」

土方は銀時の気持ちと同じだった。
たとえ、どれだけの時間が掛かろうが、どのような思いがあろうが、最前線に立つ自分たちはこの世界から囚われたプレイヤー達を開放させなくてはいけない。囚われた人たちのためにも。帰りを待ってくれている人たちのためにも。

「安心しろ、サム。俺たちが必ずお前たちを開放させてやる。約束する」
「トシさん・・・」
「だからお前も運び続けろ。そしてこれからも人と人を繋ぎ続けろ。俺たちには、お前たちが必要だ。それと・・・感謝する」
「僕、トシさんになにかしましたか?」