銀魂 −アインクラッド篇−
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『ソードアート・オンライン』
・第二十二層 南西エリア南岸 キリトとアスナの家の前
日が沈みかけ、空はオレンジ一色となった。
キリトは重い足を引きずりながら帰路を歩いており、自分たちの新たな生活拠点のすぐ目の前までたどり着いていた。次第に自身の影が大きくなる。
キリトは釣り道具一式を装備し今日こそは大漁だ、と豪語して家を後にしたのだが結果は昨日と同じ。どんな顔をして家のドアを開ければ良いかずっと悩んでいた。
「おかえりなさい、キリトくん」
「っ!・・・た、ただいま・・・アスナ」
だがそんな考えも虚しく、自分より先に彼女が出迎えてくれた。いつの間にか背後にアスナが立っており、心音の鼓動が大きくなり冷や汗が流れ始める。
拙いっ・・・俺はまだ言い訳をまだ考えていない・・・ッ!
まだだっ!まだ闘えるッ!!
アスナに喰らいつけ!!喰らい続けるんだッ!!こんなところで俺は終われな――
「心の声出してまで必死にならなくても大丈夫よ!今日は煮込みハンバーグを作ったから一緒に食べましょ?」
「は、・・・はい・・・というか、あれ。・・・嘘、聞こえていたんだ・・・どうしよう、すごく恥ずかしくなってきた・・・」
「七十四層の攻略中からずっと聞こえていたわよ?最初は何を独り言話しているのかなって思っていたけど、私?は?慣れたわよ?」
キリトの顔が自然と赤面になり両手でそれを隠し、アスナは優しく彼の頭を撫でてあげる。
そんな彼女はハッと何かを思い出したのか勢いよく両手をパンと叩いた。
「そうよ!忘れていたわ!実はキリトくんのためにね?特注品である物を注文していたの!」
「え?ある物って、一体なに?」
「たしか、もうそろそろ届くはずだけど・・・・嘘―――」
ふと、アスナは『何か』を見て、その身体を固めてしまう。
何故だろうか?
キリトはアスナの目線の先を見て、その目を大きく見開いた。
目線の先には二人の大人、一人は子供を背負い、一人は大きな荷物を背負っている。二人の大人達の後ろから日の光が照らされ、シルエットのようになっているため誰なのかが確認できないが、その特徴的な見た目にキリトとアスナは心当たりがあった。
まだ、確信をしたわけではないが二人はその大人の元に向かって走り出す。
近づいていくにつれてその大人達の姿が鮮明になっていく。
間違いない―――あの人だ!
「「ギンさぁぁぁぁぁぁぁん―――っ!!」」
「どうも〜アルゲード・デリバリーでっす。釣りスキルがゼロのお客様に必ずヒットするであろう特注品の最高級木製ルアーをお届けに参りました〜。・・・って。お、おい!」
キリトとアスナは思わず銀時に抱き着く。
たった一か月近くしか経過していないのにも関わらず、まるで何年も対面をしていなかったかのような勢いだったので、土方とサムは思わずくすりと笑ってしまった。
「ぐすっ・・・もう、ギンさん!寂しかったんだからっ!返事ぐらいしてよねっ!」
「俺も心配してたんだぞっ!なんで黙ってどこか行っちゃうんだよっ!!」
「っ・・・・あぁ。悪かったな・・・キリト、アスナ・・・」
銀時は心の中の曇天が一気に晴れたのか、結んだままの唇にかすかな笑みを浮かべて二人を抱き返す。
いつの間にか、こちらの世界でも大切な存在ができてしまったようだ。
ほんの少しだけ離れて、やっとそれを知ることができた。
「サム。お前が今、繋げたもんはとんでもねぇ代物だったのかもしれねぇな。・・・きっと、『こいつら』ならこの世界を攻略してくれるはずだ。俺はそう思っている」
「はい、僕はこれからも繋ぎ続けます。僕が繋げることによって、こうして皆が笑顔になってくれるなら僕も嬉しいです」
3人の影が一つの大きな影となり、太陽が沈むとともに更に大きくなる
その影が無くなるまでキリトとアスナは銀時を離さなかった――――。
・・・To Be Continued
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w



