銀魂 −アインクラッド篇−
第十五訓「世界は己で作るもの」
『銀魂』
・大江戸 かぶき町 万事屋銀ちゃん
窓を通して朝日が新八の顔に注がれ目が覚めた。
いつの間にか寝てしまったのか、応接間のソファからぼんやりと覚醒しきらない頭を起こし、テーブルに置いてあった自身の眼鏡を手に取る。時刻は6時過ぎの早朝、銀時と土方が寝ている部屋からは源外とたまが不眠不休で解析作業を行っており、反対側のソファには神楽が可愛らしい寝息をたてながら熟睡している。台所からはトントントン・・・と、野菜を切る音とともに味噌汁のおいしそうな匂いが辺り一面に漂い鼻腔を刺激させる。
「あら、起こしてしまったかい?悪かったね」
「お登勢さん、おはようございます・・・・えっ」
炊飯器を手にお登勢はテーブルの上に茶碗や湯呑など、てきぱきと朝食の準備をしていく。
一体いつから準備を始めていたのだろうか?
新八は慌てて飛び起き、お登勢の手伝いをし始めた。
「すみません!僕たちのためにここまでっ・・・」
「何言っているんだい。あいつが目覚めたときにあんたたちがくたばってたら意味がないじゃないか。あんたたちが今できることはしっかりと睡眠をしてしっかりと朝昼晩ご飯を食べて体調を万全に整えておくことさ。銀時が起きたらしっかりと未払い分の家賃を払ってもらうからね」
「はいっ!ありがとうございます、お登勢さん」
「別に『こんなこと』をしていたのは私だけじゃないよ。下にいる連中がね、朝の4時過ぎからあんたたちのために朝食を作るんだってお妙が率先して張り切って色々としていたみたいだけどね、まぁ色々あって大惨事にまで発展したもんだったから、見てらんなくなって私が用意してやったのさ。今頃、みんなしてぐっすりと二度寝しているよ。ただ新八、あの子たちの気持ちだけでもちゃんと受け止めるんだよ?」
「姉上が?・・・・はい、もちろんです!」
その時の光景は容易に想像がつく。
きっと、いつもの感じでドタバタへと発展したことだろう。しかし、自分たちのために行動をしてくれたことには変わりない。皆が起きたらちゃんとお礼の言葉を伝えなければ。
お登勢が作ってくれた朝食をテーブルへ人数分置いていく。
卵焼きと焼き魚、ほうれん草のおひたしに大根の味噌汁、生卵に納豆と朝食としては十分すぎる献立だった。その匂いに釣られて神楽が飛び起き「いただきます!」と大声で叫んだ後、よほどお腹を空かせていたのか、大盛りのご飯茶碗を片手にがっつくように食べ始めた。
「むふ〜っ!おいしいヨ!この卵かけご飯すっごくおいしいヨ!ババア!」
「せめておかずを褒めないかいッ!!ほら、新八。冷めないうちにあんたも食べな」
「はい、いただきます」
新八は最初に大根の味噌汁に手を伸ばす。口に含めた汁は食道から体中に温もりが広がる。
それと同時にふと思ったことがある。
銀時たちは、あちらの世界で満足に食事はできているのであろうか?
そんな疑問を浮かべながら、味噌汁をテーブルに置き茶碗を手に取った。
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w



