二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

銀魂 −アインクラッド篇−

INDEX|119ページ/155ページ|

次のページ前のページ
 

・・・

『ソードアート・オンライン』
・第五十五層 グランザム主街区 血盟騎士団本部

「偵察隊が、全滅!!?」

数週間ぶりにグランザムの血盟騎士団本部に戻ったキリトとアスナを待っていたのは衝撃的な知らせだった。
二人は以前、立ち合いが行われた会議室に呼び出され、そこにはヒースクリフの他にゴドフリーを除いた幹部たちが着席をしている。ヒースクリフは顔の前で骨ばった両手を組み合わせ、眉間に深い谷を刻んでゆっくり頷いた。
なお、銀時はこの場には呼んでいない。昨日の件もあるので流石に家で待機するように指示をしてきた。

「昨日のことだ。七十五層迷宮区のマッピング自体は時間が掛かったがなんとか犠牲者を出さずに終了した。だがボス戦はかなりの苦戦が予想された。・・・そこで、我々は五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ。偵察は慎重に行われた。十人が後衛としてボス部屋入り口で待機し、最初の十人が部屋の中央に到達して、ボスが出現した瞬間、入り口の扉が閉じてしまったのだ。ここから先は後衛の報告になる。扉は五分以上開かなかった。そしてようやく扉が開いた時――」
ヒースクリフの口元が固く引き結ばれた。一瞬目を閉じ、言葉を続ける。
「部屋の中には、『何も無かった』そうだ。十人の姿も、ボスも消えていた。転移脱出した形跡も無かった。彼らは帰ってこなかった・・・」
キリトの隣でアスナが息を詰め、すぐに絞りだすように呟いた。
「十人も・・・なんでそんなことに・・・」
「結晶無効化空間・・・?」
キリトの問いをヒースクリフは小さく首肯した。
「そうとしか考えられない。アスナ君の報告では七十四層もそうだったということだから、おそらく今後全てのボス部屋がそう思っていいだろう」
「バカな・・・」
脱出不可となれば、思わぬアクシデントで死亡する者が出る可能性が飛躍的に高まる。
死者を出さない。
それは、このゲームを攻略する上での大前提だ。だが、ボスを倒さなければクリアもあり得ない。
「文字通りの本格的なデスゲームになってきたのか・・・」
「だからと言って攻略を諦めることはできない」
ヒースクリフは目を閉じると、ささやくような、だがきっぱりとした声で言った。
「結晶による脱出が不可能な上に、今回はボス出現と同時に背後の退路も絶たれてしまう構造らしい。ならば統制の取れる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。『新婚』の君たちを召喚するのは本意ではなかったが、了解してくれたまえ」
キリトは肩をすくめて答えた。
「協力はさせて貰いますよ。だが、俺にとってはアスナの安全が最優先です。もし危険な状況になったら、パーティ全体より彼女を守ります」
ヒースクリフはかすかな笑みを浮かべた。
「何かを守ろうとする人間は強いものだ。君の勇戦を期待する。攻略開始は三時間後、予定人数は君たちを入れて三十二人。七十五層コリニア市ゲートに集合だ。では解散」
それだけ言うと、紅衣の聖騎士とその配下の男達は一斉に立ち上がり、部屋を出て行った。



――しかし、ヒースクリフは何かを思い出したように入り口前で立ち止まった。



「アスナ君。そういえば君のお気に入りでるあの銀髪の男はどうした?」
ヒースクリフはこちらに振り向かずに質問をする。
「ギンさんは現在、新撰組の監視の下、彼らのギルド本部で保護されています」
「そうか。これ以上彼に接触するのは控えたほうが良い。アスナ君の報告では彼もラフィン・コフィンに命を狙われているのだろう。彼と行動をともにしていれば必然的に君たちにも被害を被る可能性がある」
「ギンさんへ会う会わないは私自身が判断します」
「そうか。・・・しかしこれは『警告』でもある。判断を間違わないことだ」

ヒースクリフはそう言い残し部屋を出て行った。
足音が聞こえなくなった後、キリトは肩の力が抜けたのか長机にちょこんと腰を掛ける。

「行儀悪いわよ?」
「誰も見てないから別に良いだろ。ヒースクリフにあのラフコフの事話したのか?」
「それはそうよ。ゲームだとしても報連相を怠るわけにはいかないわ。それに、私たちはなんとか倒したけどギンさん達が取り逃がしてしまったのだから警戒しないとね」

あのギンさんが、それと新撰組のギルドリーダーが苦戦した相手なのだから余程の強者なのだろう。ヒースクリフの警告は確かに一理がある。が、だからといって友人を放っておくわけにはいけない。逆の立場なら必ず彼もそうするだろう。

だが、彼女には危険な目に合わせたくない。

彼女だけでも、なんとかならないものだろうか?

「なあアスナ。今日は―――」
「いやよ」
「まだ何も言ってませんけど!?」
「大体わかるわよ。君は戦うなって言おうとしたでしょ?」
「うっ・・・」
「ほらね。図星でしょ?・・・自分は戦って、わたしは安全な場所で待ってろだなんて絶対にいやよ」
アスナは昂然とした歩調でキリトの前に歩み寄ってきた。その瞳に激情の炎が燃えている。
「もしそれでキリト君が帰ってこなかったら、わたし自殺するよ。もう生きてる意味ないし、ただ待ってた自分が許せないもの。逃げるなら、二人で逃げよう。キリト君がそうしたいなら私はそれでもいい」
言葉を切り、右手の指先をキリトの胸の真ん中に当てた。口元にかすかな微笑が浮かぶ。
「でもね・・・正直、私も怖い。あのラフィン・コフィンの子と剣を交わした時、本当に死んじゃうのかなって思ってた。自分の遥か先を行ってたあの子に勝機は一切なかったの。でも、キリト君が、桂さんが助けてくれてとっても嬉しかった。だから、私は戦うわ。二人で元の世界に帰って、もう一度出会うために、・・・だから、一緒にがんばろう?」
キリトは右手を上げ、自分の胸に添えられたアスナの指先をそっと包み込んだ。彼女を失いたくないという痛切な感情が胸に突き上げてくる。
「ごめん・・・俺、弱気になってる。本当は二人で今すぐ逃げたいと思ってる。アスナにも死んでほしくない。俺も死にたくない。現実世界に・・・」
彼女の瞳をじっと見つめ、その先を口にした。
「現実世界に戻れなくてもいいから、あの森の家でいつまでも一緒に暮らしたい。ずっと・・・」
「そうできたら、いいね・・・。毎日、一緒に・・・みんなで・・・いつまでも・・・わたし、一生キリト君の隣にいたい。ちゃんとお付き合いして、本当に結婚して、一緒に歳を取っていきたい。だから・・・だから・・・」

アスナはキリトの胸に顔を埋め、堪えきれない嗚咽を洩らした。キリトはその背中をゆっくりと撫でながら代わりに言葉を続けた。

「だから・・・戦おう。一緒に・・・」

大丈夫―――きっと大丈夫だ。二人なら、きっと―――。

胸の中に忍び込んでくる悪寒を振り払うように、キリトはアスナを抱く腕に力をこめた。