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銀魂 −アインクラッド篇−

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・・・

一体幾度の時間が経過しただろうか。
誰もが休む暇を得られなくただ一刻一刻と時間が過ぎていく。
しかし、体力を消耗しきったプレイヤー達に休みを与えまいと骸骨百足は暴れまわるも、ついにその長きに渡った戦闘に終止符が打たれようとしていた。
「懐に潜れェェェェェッ!!」
「奴を宙へと叩き上げる!皆の者、ゴリ=ランに続けェェェッ!!」
近藤と桂を中心に各々のプレイヤーは二人の一声と同時に骸骨百足の下腹部目掛けて飛び出し、ほぼ同時に下から上へとスイングをするように叩き上げ、宙に浮いた百足は最後の抵抗をするかのように残った脚でじたばたと動かしていた。
「アスナッ!頼む!!」
「まかせて!これで終わらせるわっ!」
百足のHPは残りわずか。気が付けば赤い危険域まで減らしていた。
つまり、最後の渾身の一撃を与えることができれば奴を倒せる。

その大役を引き受けたアスナは体を半身引きつつ骸骨百足に向かって一気に加速する。右手が白銀の光芒を引いて突き込まれ、爆発じみた衝撃音と共に百足の体がまばゆいエフェクトフラッシュが炸裂した。地響きを立てて落下した骸骨百足のHPバーはアスナの強攻撃で大きく減少するもまだ足りない。しかし、そこへ『閃光』の異名に恥じない連続攻撃が容赦なく加えられた。華麗なダンスにも似たステップを踏みながら恐るべき死殺技の数々を繰り出すアスナの姿を、プレイヤーたちは呆けたような顔で見つめていた。
周囲を圧する存在感を振りまきながら剣を操り続けたアスナは勝利までの方程式が組み終えたかのか、最後の攻撃だと言わんばかりフワリと跳んで距離を取り、着地と同時に突進攻撃を敢行した。彗星のように全身から光の尾を引きながら、正面から骸骨百足に突っ込んでいく。
「フラッシング・ペネトレイター・・・っ!!」
ソニックブームに似た衝撃音と共に彗星は百足の体を貫通し、長い滑走を経てアスナが停止した直後、敵の巨体が膨大な光の欠片となって四散した。

「・・・・うっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

アスナは力が抜けたように地面へと座り込む。

終わった。
ついに終わったのだ。
だが、誰一人として歓声を上げる余裕のある者はいなかった。アスナに続き、皆が倒れるように黒曜石の床に座り込み、あるいは仰向けに転がって荒い息を繰り返している。
「アスナ・・・」
全身に重い疲労感に襲われるキリトはアスナの元に寄り添い、同じく床に膝をつく。二人は背中合わせに座り込み、しばらく動くことはできそうにもなかった。

二人とも生き残った―――。

そう思っても、手放しで喜べる状況ではない。
あまりにも犠牲者が多すぎた。

「トシ・・・被害状況は?」
「13人だ。・・・その内、・・・1人はうちの隊士だ」
「っ!!・・・すまないッ!・・・くそッ・・・」
「ゴリ・・・いや、近藤。自分を責め込むな。俺達ができることは彼の無念を背負ってこれからも生き続けることだ」
「桂ぁ・・・そうだな、てめぇの言う通りだよ。・・・・感謝するぜ・・・」

土方の言葉にキリトは信じることができなかった。
皆トップギルドの、歴戦のプレイヤーだったはずだ。たとえ離脱や瞬間回復不可の状況とはいえ、生き残りを優先した戦い方をしていればおいそれと死ぬようなことない。
・・・と、思っていたのだが。

「うそだろ・・・」
エギルの声にも普段の張りはまったく無かった。生き残った者たちの上に暗鬱な空気が厚く垂れ込めた。
「まだ、四分の三だけなんだぜ?それなのに・・・こんな戦いがまだ二十五回はあるっていうのかよ!」
クラインの言う通りだ。
何千のプレイヤーがいると言っても、最前線で真剣にクリアを目指しているのは数百人といったところだろう。一層ごとにこれだけの犠牲を出してしまえば、最後にラスボスと対面できるのはたった一人・・・というような事態にもなりかねない。

おそらくその場合は、残るのは間違いなくあの男だろう。

キリトは視線を部屋の奥に向けた。
そこには、他の者が床に伏す中、背筋を伸ばして毅然と立つ紅衣の姿があった。ヒースクリフだ。
無論彼も無傷ではなかった。視線を合わせてカーソルを表示させると、HPバーがかなり減少しているのが見て取れる。銀時とアスナ、3人がかりでどうにか防ぎ続けたあの巨大な骨鎌を、ついに一人で捌ききったのだ。数値的なダメージに留まらず、疲労困憊で倒れても不思議ではない。
だが、悠揚迫らぬ立ち姿には、精神的な消耗など皆無と思わせるものがあった。

全く・・・信じられないタフさだ。

まるで機械―――永久機関を備えた戦闘機械のようだ・・・。

―――・・・いや、待て。



そんなことありえるだろうか?



俺達「人間」は努力して何かを得る生き物だ。

むしろ、このゲームの世界ではスキルを得るために様々な課題を達成していかなければならない。

しかし、そこにはある壁が立ちふさがる。

自身の持ち得る「体力」、それと「時間」だ。

体力すらも管理されたこの世界ではそれ相当分の努力をしなくてはいけない。
言わば、データ上で管理された数値にまで到達しなくてはいけない。

そのような時間・・・たった「2年」で得ることができるのだろうか?


現実のアスリートであっても何年何十年と磨き上げた己の器量で結果が出せる。
だから、努力に近道なんて存在しないのだ。

近道はない。

だが、この世界・・・「ゲーム」の世界であれば?



このゲームを作成した人物であれば?



ましてや、それを「管理している者」には可能なのでは?







「流石だな、団長様」

この空間に大きく声を発した者がいた。銀時だ。
銀時はボロボロの体を叩き起こし、ヒースクリフの元へと寄っていく。そんな彼にヒースクリフは眉一つ微動だにせず黙って聞き続ける。

「トップギルドという名のお山の大将からしてみれば、あんな百足が出よぉが、ましてや強敵だろぉが、大した問題じゃねぇみたいだな。あんたがいなきゃ俺達は今頃『全滅』だったかもな」

「・・・。」

「やっぱあんたは『聖騎士』と言われるだけの実力がある。俺もあんたにゃかなわねぇみてぇだな」

ヒースクリフの前に立ち止まった銀時は腰の黒刀を抜刀。
その先をヒースクリフの喉元に突き付けた。

そんな行動を見ていた回りのプレイヤー達は言葉を失ってしまう。
あの男は一体何をしている?

それは、エギルとクライン、更には近藤と桂も同じ気持ちだった。
剣を突き付けられた当の本人はこの時初めて沈黙を破り、とても落ち着いた低音の声で銀時に聞き返した。

「・・・何のつもりかな?」
「とぼけんじゃねぇ。ようやくてめぇに会うことができたんだ。ここで全部吐いてもらうぜ」
「君の話の趣旨がよくわからないが」
「てめぇが一番よくわかってんだろ」



・・・もしかして、ギンさんは俺と同じことを考えているのでは?



キリトは彼の行動にいち早く気付く。
しかし、それはあまりにも確信が無く、信憑性が低い。
自分が想像している『答え』にたどり着くには、まだ何かが足りない。

「おい万事屋。一体どういうことだ、説明しろ」