銀魂 −アインクラッド篇−
「―――安心したまえ、キリト君。あと数分もしない間に君の体は再び動くようになるだろう」
「っ!!・・・茅場ぁ・・・」
いつ移動してきたのだろうか。
キリトの真正面に茅場が音も立てずに移動していた。
頭も動かない為、必死に見上げるように目線を上げた。相変わらずのプレイヤー達を見下したような茅場のその眼にキリトの怒りが更に増していく。
「こんなことをして一体何の意味があるっ・・・お前のお遊びにはもううんざりだっ・・・」
「何度も言わせないでほしいのだが。これは、ゲームであっても遊びではないのだ」
「お前の都合に他人の命を弄びやがって!!人の命をなんだと思っている!!」
「そうだね。一体どのような価値があるのかな」
「な゛ッ・・・なんだと・・・?」
「キリト君・・・改めて問おう―――
君たちの命に、一体どのような価値がある?」
「は・・・?」
なんだ?
この男は一体何を言っている?
命の価値?
そんなもの、大事に決まっているではないか。
この男は、本当に自分が神になったつもりでいるのだろうか?
「あんたは・・・一体・・・」
「見たまえ、キリト君。そろそろ終わりそうだよ」
「ッ!!?」
黒曜石の床が砕け、轟音を響かせて宙を舞う。
何かに叩きつけられた衝撃は尋常ではなく、強靭な硬度を誇る黒曜石もいともたやすく砕け散る程でもあった。その中央には銀時が咳をしながら埋まっている。一体、地面に叩きつけられたのは何度目なのだろうか―――途中までそのようなことを考えていたのだが、当の本人はいつの間にか数えるのをやめていた。
「ぐッ・・・く・・・」
それでも、銀時は諦めなかった。
何度身体を斬られようが、何度地面に叩きつけられようが、その度に足腰に力を込めて立ち上がる。
その姿に自然とライトの息が詰まった。
「何故・・・立ち上がれる?」
「さぁ・・・・はぁッ・・・はぁッ・・・なんでだろぉな」
「貴様は既に限界を超えている。HPがレッドに突入はしていないがとても戦える状態ではない筈。貴様を再び地へと立たせるものは一体―――」
「『魂』だ」
「ッ・・・」
銀時は右手に装備した黒刀を見せつけるかのように前に差し出した。
身体中は赤いエフェクトだらけでボロボロではあるものの、その黒刀の刀身はとても美しく光り輝いている。
「知っているか?刀ってのはな、その主の魂が宿るもんなんだよ」
「それはただの慣用句―――」
「いいや、宿るさ。俺達の魂が砕けねぇ限り、こいつはいくらでも光り輝く。たとえ刀身が折れようが、魂だけは絶対に折れねぇ。・・・諦めねぇ限りな」
「根拠がない。理解不能」
「だったら、てめぇの刀は何故輝いている?それは説明できんのか?」
「何?俺の『カタナ』は別に・・・ッ!」
ライトは、自分の黒刀を見つめた。
濁っているものの、ほんの少しだけ光り輝いていた。
何故?
何故この刀は輝いている?
少しだけではあるものの、光り輝こうとしている。
「俺は機械・・・・AIの筈」
「いいや、違ぇな」
「ッ!!しまッ――――」
この時、初めてライトは油断をしてしまった。
自分の目先には既に銀時の刀が押し寄せていたのだ。
「てめぇは紛れもなく、今を生きている。てめぇも俺達と同じ人間だ。その刀が光り輝いているのが何よりの証拠だ・・・ッ!!!!」
銀時の右垂直斬りがライトの胸部に直撃し、HPバーを大きく減少させた。その斬られた胸を、刀を持つ反対の手で抑えながら後方へと距離を取るようにジャンプする。
しかし、攻撃を受けたことより銀時の言葉に一番の衝撃を受けていた。
今を生きている・・・・
同じ・・・人間?
「その調子だァァァァァアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!頑張れェェェッ!!ギンさぁぁァアア゛ア゛ンンン!!!!」
「な、なんだ・・・?」
ふと、どこからか野太い声が部屋中に響き渡った。
ライトは思わずその声の主の元へと視線を移した。
声の主の正体はエギルだった。
エギルは大量の汗を流しながら動かせない身体に抵抗するように大声で銀時に声援を送る。
「エギル・・・お前ぇ・・・」
「クライン!俺達が今できることはギンさんを応援することだッ!!なにもできなくて情けねぇが、俺は絶対に諦めねぇ!絶対にこの世界を出て行ってやる!!だから俺は託すんだ!!俺の思いをギンさんに全て託す!!だから頼む!!俺達の分まで戦ってくれ!!ギンさァァァァん!!!!」
「チッ・・・てめぇ一人で抜けがけしやがって・・・ッ!!将軍殿ォォォォォオオオオ゛オ゛ッッッ!!!!俺もエギルと気持ちは一緒ですゥゥゥッ!!!!絶対に勝ってくださいィィィィィイイイッ!!!!」
「へッ・・・野郎にフラグを建てたことは無駄じゃなかったみてぇだな・・・・ッ!」
エギルとクラインに続くように、周りのプレイヤー達が必死に銀時へと声援を送り始める。
その光景にライトは言葉を失い、茅場も息を呑んだまま唖然としていた。
「茅場・・・これを見てもお前はまだ、俺達の命に価値が無いとでも言えるのか?」
「―――・・・無意味だ」
「意味はある。それに価値はあるさ。思いが重なった時、人はどこまでも強くなれる。そうだ・・・俺はそれを知っているよ」
―――そうだ。
あの時、レフティと対峙した時の事を思い出した。
アスナを守る。
俺はそのためだけに剣を抜いた。
だが―――反対に彼女は、俺を守る為に剣を抜いた。
思いが重なったからこそ、俺達は一緒に格上の相手を倒す事が出来た。
「・・・声援による身体強化など、システムに組み込んだ覚えはないが・・・」
「身体強化なんてもんじゃない。ましてや、ソードスキルでもなんでもない。これは―――」
その時、銀時の眼は光り輝いていた。
「魂と魂の共鳴だ―――ッ!!!!」
「なにッ・・・ッ!!?」
銀時とライトの刀が重なる。鍔迫り合いとなった。
だが、何度もこの状態になったにも関わらず、先程とはあからさまに何かが違ったのだ。
「なぜッ・・・腕力がッ・・・上がっている・・・ッ?」
「・・・ぁぁぁぁぁああああアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!!」
「俺がッ・・・押し負ける・・・ッ!!!!」
力量の差でライトは鍔迫り合いに負けてしまい、直撃となる前に最小限の動きで銀時の斬撃を回避、動揺が収まらないものの再び刀を構えなおす。
「パラメーターが上昇した?いや違う。奴に変化はなにも起きていない・・・ぐッ!」
「んな難しいもんじゃねぇッ!!」
銀時からの高速の斬撃がライトに放たれるも、それを全て防御する。
・・・しかし、次第にライトの体に細かい赤いエフェクトが出現し始める。
「底力をみせろ万事屋ァァァッ!!てめぇの本気はその程度じゃねぇだろォォォッ!!」
「この身体が動けばッ・・・すまぬ銀時、あとはお前に託す!」
「好き放題言いやがってッ!!言われなくてもこちとらずっと本気なんだよッ!!」
防御しきれていない―――?
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w



