銀魂 −アインクラッド篇−
「君達も気が付いていなかったようだね・・・それも良い。子供は次から次へ色々な夢想をするだろう。空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取りつかれたのは何歳の頃だったかな・・・歳を重ねるごとにどんどんリアルに、大きく広がっていった。この地上から飛び立って、あの城に行きたい・・・長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私はね、まだ信じているのだよ―――君のようなイレギュラーが存在するように、他の世界には、本当にあの城が存在するのだと・・・」
再び、沈黙が訪れた。
視線を遠くに向けると、崩壊は城以外の場所にも及び始めていた。無限に連なっていたはずの雲海と赤い空が遥か彼方で白い光に呑み込まれ、消えていくのが見える。
「・・・言い忘れていたな、ゲームクリアおめでとう」
ぽつんと発せられた言葉に、3人は右隣に立つ茅場を見上げた。茅場は穏やかな表情でこちらを見下ろしていた。
「―――さて、私はそろそろいくよ。もうここに用はない・・・全て、満足した」
茅場はそれを口にして上を見上げる。
どこに行くつもりなのだろう。現実世界に帰還するのだろうか。
だが、その歩みを銀髪の男の一声で止められた。
「ちょいと待ちな」
銀時は一歩前に出て茅場を止める。
止められた本人は何事かと振り向いた。
「最期にどうしてもてめぇに聞きたいことがある。お前は俺とキリトをあの世界で抹消しようとした・・・てめぇの秘密に近づいたからな。だが、一個だけ引っかかる点がある」
「何だい?」
「その秘密に近づいたのは、なにも俺とキリトだけじゃねぇ。お前の側近であり、俺達の仲間でもあった嬢ちゃんだってその対象だったはずだ。だが、てめぇは嬢ちゃんに対しては一切手を出さなかった・・・何故だ」
その銀時の問いに対し、キリトはハッと気がついた。
そうだ。言われてみればそのとおりだ。
自分たちは銀時に出会ってから常に一緒に行動をしてきた。
3人しか知らない情報だって多々あった。
だが、あのラフィン・コフィンたちは自分と彼を抹消の対象とし、迫ってきた。そこにアスナはカウントされていなかった。普通であれば、彼女も狙われてもおかしくはない。
茅場は、数秒間沈黙となった後、どこか寂しい笑みをしつつ、一言だけ返した。
「・・・ただの、気まぐれだよ」
そう言い残して、茅場は消え去った。
風が吹き、それにかき消されるように―――。
「・・・なにが気まぐれだ。てめぇはただ、・・・てめぇの大事な存在になっちまった『家族』に手が出せなくなっただけだろぉが・・・」
銀時は、茅場が立っていた場所に向かってぼそりと話しかけた。
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w



