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銀魂 −アインクラッド篇−

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・・・

仮想世界の浮遊城は既に先端部分を残すのみだった。
結局、キリト達が目にすることが無かった七十六層より上の階層が儚く崩落していく。世界を包み込み、消去していく光の幕も、いよいよ近づいていた。ゆらめくオーロラのようなその光に触れるたび、雲海と夕焼け空そのものが微細な破片を散らしながら無に還っていく。
そして、一際高い尖塔が四散し巨城アインクラッドは完全に消滅、世界には幾つかの夕焼雲の連なりと小さな水晶の浮島、そこに腰掛けたキリトとアスナ、銀時の三人が残るのみとなった。

もう、それほど時間は残っていないだろう。自分たちは、茅場に与えられたわずかな猶予時間の中にいる。
つまりその後は―――それぞれの別れを意味していた。

「・・・お別れだな」
「ああ」
「そう・・・ね」

銀時は無愛想に応える。
キリトとアスナは口にしなくても理解していた。
そして、先程茅場が言い残した別の世界の住人という言葉・・・これで確信を得た。

この世界を発てば、もう、この人に出逢うことはできない。

一ヶ月近くだけではあったものの、共に戦い抜いた親愛なる友人との永遠の別れ。

「なあ・・・ギンさん」
「なんだ?キリト」
「なんでギンさんはSAOを始めたんだ?」


丁度、真ん中に座っている銀時にキリトは話しかける。
しかし、お互い顔を見ず、その視線はアインクラッドがあったそこを見続けていた。


「あっ・・・それ、私もずっと気になってた」
「なんでってお前ぇ・・・天パーからストパーにしようとしただけですけど」
「は?それとナーヴギアと一体何の関係があるんだよ」


本当に、最初から最後まで無茶苦茶な人だ。
ストパーになるためにSAOを始めた人なんてどこの世界を探しても、おそらくこの人ぐらいしかいないだろう。


「いや、最初は全自動ストレートパーマ・・・いや、もういいわ・・・結局、騙されただけだから。気がついたらこの世界に来ちゃっただけだから」
「ほんとっ訳わからない巻き込まれ方してるわよね。もしかして元の世界でも似たようなこと多々あったんじゃない?」
「さすが嬢ちゃん、察しがいいな」
「だからっ!アスナだって言っているでしょ!」
「へっ・・・そうだったな・・・『アスナ』」
「っ!・・・な、なによ・・・今更・・・」




ギンさんがアスナって名前で呼んだの、久しぶりな気がする。
アスナ本人も驚いているのかな?




「なあギンさん、ギンさんって普段、どんな生活しているの?俺、まだ聞いてないんだけど」
「別に、大した事ぁしてねぇよ。依頼がなきゃパチンコ行ったり競馬行ったり財布に余裕があれば飲みに出かけるぐらいだな。キリト、お前ぇは?」
「俺は別に・・・ゲームして、勉強して、・・・あ、たまにパソコン組んでってぐらいかな?」
「キリト、お前ぇゲームは一日一時間だからな。それ以上はお父さん、許しませんからねっ」
「いつ、あんたは俺の親になったんだよ。というか、話戻るけど真昼間からパチンコ競馬って・・・ギンさん、本当に仕事あるのか?」




あれ・・・どうしてだろうか。
ただ、日常の会話をしているだけなのに・・・


なんで・・・こんなに・・・


悲しくなってくるのだろうか・・・





「ひっ・・・ぐすっ・・・」
「ったりめーよ。普段、俺は万事屋っていう何でも屋を構えて、猫の捜索から上様のブリーフの洗濯まで幅広く受け持っていますからね。こう見えても銀さん結構顔広いからね」
「なんだっ・・・その感じだと今とそんなに変わらないな・・・ほんとっ・・・あんたって人は・・・あれ・・・」
「ん?どうした・・・キリト」
「いやっ・・別にっ・・・あれっ・・・」




なんで?
目が熱い。


心が剣で刺されたように痛い。




ギンさんの顔を・・・見ることができない。





「ったく、しょうがねぇ奴だな。お前等二人して、何泣いてるんだよ」
「だって・・・ギンさん・・・だってぇっ・・・」
「面上げろ、アスナ。何も悲しむ事ぁねぇよ。お前のとなりにはキリトがいる。お前はこれからも、一人なんかじゃねぇ」
「ギンさんっ・・・・」



わかっている。
もう、お別れをする時なのは理解している。



でも、嫌だ。



これからも・・・ずっと、



そばにいてほしい。







「キリト。これからもアスナ守るのはお前だ。他の誰でもねぇ。お前さんだけだ。お前が繋いだ手は何が何でも離すんじゃねぇ」
「ギンさんっ!・・・わかったっ・・・約束するよっ・・・・」
「ほら、いい加減泣きやめよ・・・なぁ」

銀時は両手を広げ、キリトとアスナの頭を自身の胸板に引き寄せ、ポンポンと優しく撫でてあげた。その瞬間、二人の瞳から大粒の涙が絶え間なく流れ落ち始めた。

「よく今まで頑張ったな。キリト、それにアスナ・・・もうじき、自分達の家に帰れるぜ?好きなだけ自分のベッドに寝れて、コンビニでお菓子も買えるし、命の危険に追われることもねぇ。・・・お前さん達は、自由だ」
「いやよっ!お願いギンさん!!私達と一緒に来てっ!!これでお別れだなんて絶対に嫌っ!!」
「ギンさんっ!!もう二度と会えなくなるんだぞっ!!?そんな悲しいこと言うなよ!!」

銀時は二人の頭を撫でながら、空を見上げ、沈黙する―――。

ややしばらく、二人のすすり泣く声が響き渡る。




そして、銀時は死んだ魚のような眼をしたまま、口許を緩ませ、ほのかな笑みを浮かべながら口を開いた。





「俺ぁ『さよなら』なんて言わねぇ。例え、お前達が生きていた世界とは違かろうが、生きていた時代が違かろうがよ・・・俺達は間違い無く、一つの『空』の下で生きている。空はいつだって一つさ」



「ぐすっ・・・空?」


「ほら、アスナ。鼻水垂れてんぞ。・・・だからよ、これでお別れだなんて言うんじゃねぇ。同じ空の下で生きているんだ。だったらよ、いつかきっと・・・もう一度、出会えるさ」


「ギンさん・・・」


「今日、明日、もしかしたら会えるかもしれねぇ。もしかしたらお前等が爺さん婆さんになってやっと出会えるかもしれねぇ。それがいつになるのか俺もわかんねーがよ、俺はお前達のことを忘れやしねー。だから・・・



『また会おう』



キリト、アスナ」


銀時は二人を離し、浮島の端から立ち上がる。
世界の終焉は間近だった。最早、鋼鉄の巨城も無限の雲海も乱舞する光の中に消え去り、白い輝きの中に三人が残るだけだった。周囲の空間が次々と輝きに呑み込まれ、光の粒を散らしながら消滅していく。

そして、銀時は何も言わず歩始めた。

それを追うようにキリトとアスナも立ち上がり、銀時を呼び止めた。


「ギンさん、一体どこに!?」
「俺の世界にも、帰りを待っている奴らがいる。お前達と同じく、大切な『家族』が待っている我が家に帰るのさ。あいつらのことだ。お前達と同じで、鼻水垂れながしながら泣いてることだろーよ」


「ぐすっ・・・そっか・・・。そうだよね。ギンさんの元いた世界にも、きっと、大切な人達が待っているんだよね」