銀魂 −アインクラッド篇−
・・・
『ソードアート・オンライン』
・アインクラッド 第六十一層 セルムブルグ アスナの家・
「うっ。なんだぁ?急に気持ち悪くなってきやがった・・・」
「おいギンさん、今からアスナが料理してくれるってのにどうしたんだ?」
銀時とキリトはエギルと別れ、アスナに連れられて先程のアルゲードからその更に上位の層にあるセルムブルグという城塞都市へとやってきた。
現状、キリトの手に入れたヨモツヘグリラピッドの肉を調理できるのはひょんなことで知り合ったアスナという女性プレイヤーのみだったので3人で食べるというキリトの提案によって二人は彼女の家に免れた訳だ。
一応この世界はゲームなのだが綺麗に片付けられた部屋の奥にあるキッチンから香ばしい肉の匂いが二人の嗅覚神経を刺激させる。
「いや、なんか口にダークマター押し付けられた気が・・・うぷっ」
「おい馬鹿止めろ!!こんなとこで嘔吐するなよ!?アスナに殺されるぞ!?」
「うっせぇ!!大体てめぇらガキの癖に清潔すぎるんだよ!!お前達ぐらいの年齢は部屋を適度に散らかせてお母さんに片付けなと怒られる程度が丁度良いんだよ!!」
「そんなのギンさんだけで十分だ!というか例えがやけにリアルだな!」
「さっきからどうしたの二人とも?料理、できたわよ!」
ものの数分で先程のウサギのような生物の肉塊がまるで高級料理店の一流のシェフが調理したようなレアステーキへと変貌していた。
二人は先程の会話がなかったかのように料理を凝視しよだれが口から垂れそうになる。
「ん〜、欲言えば本当はラグーラビットの肉のほうが好みだったんだけどな。ほら、シチューとか合いそうだし」
「文句言うなよ、これでも結構苦労したんだぞ?」
「はぁ・・君はいつも別の方向で苦労する人なんだね」
「まぁせっかく嬢ちゃんが作ってくれたんだ。冷めないうちにさっさと食べちゃおうぜ」
「あ、またギンさん私のこと嬢ちゃんって言った!それ止めてって言ったでしょ?」
「あぁなんだ?そんじゃぁケータとかいおなとかのほうがよかったか?」
「ギンさんそれやめてくれ。色々苦情くる」
3人は手を合わせ一言も話さず黙々とステーキを食べ始める。
ゲームの世界とはいえ銀時は滅多に口にできないであろうステーキに感動したのか一回
もボケることなく次々と口に運んでいく。本来のギャグマンガの主人公の名が聞いて呆れる。
「あぁ・・・今まで頑張って生き残っててよかった・・・」
「不思議ね・・・なんだか、この世界で生まれて今までずっと暮らしてきたみたいな、そんな気がする」
「俺も最近、あっちの世界のこと思い出さない日が増えた気がする。俺だけじゃない、たぶん皆も。昔ほどクリアだ脱出だって血眼になって叫ぶ奴少なくなったな」
「正直、攻略ペースも落ちてきているわ。今最前線で戦っているプレイヤーなんて五百人もいないわ。危険度だけじゃない。みんな馴染んでる・・・この世界に」
部屋に漂う香ばしい匂い。やや薄暗い暖色のライト。食べ終える頃にはしんみりとした空気が漂っていた。
キリトとアスナが食べ終えてそんな会話をしていた時、銀時はようやくステーキを食べ終え、高級そうな皿にガシャっとフォークとナイフを置き頭をボサボサとかきながら口を開いた。
「でも俺達は、帰らなきゃならねぇ」
キリトとアスナの内心の迷いを見透かすような歯切れの良い銀時の言葉が響いた。ハッとして顔をあげる。銀時は珍しく微笑みを見せると続けて言った。
「悪ぃが俺ぁ元の世界でやり残したことがたっくさんあるんだ。確かにこの世界は物の味方によってはきったねぇ現実の世界より美しく見えるかも知んねぇ。けどそりゃ結局人の作った幻そのもんだ。赤の他人が作ったような世界に俺達の魂は大きすぎて置いとけねぇや」
その言葉にキリトとアスナは自然と頷いていた。
やっぱりこの人はどこか他の人物とは何かが違う。キリトはなにか確信を得ていた。
この人となら・・・本当にこのデス・ゲームから抜け出せるかもしれない・・・
そう思い始めていた・・・。
「その為にも俺達ぁ進まねぇとな。こんなふざけたゲーム、さっさとクリアしちまおうぜ。俺達3人、Z万事屋でな!!」
・・・・と、思い始めていたのも幻だったのかもしれない。
「・・・は?Z万事屋?なんだそれ?」
「そもそも万事屋って・・・どちらかというと万屋じゃない?ギンさん」
「え、何?銀さんの考えたパーティ名に不満でもあんの?結構銀さん良い事言ってたとおもうんだけど」
「いや不満というかそもそもZ万事屋ってなんだよ!!というかZってなんだ!!」
「『ゼット』じゃねぇ、『ゼータ』だ」
「どうでも良いわ!!というか何勝手に俺達パーティなってんだよ!!俺はギンさんと一緒に行動するって言っただけでパーティ登録するとまで言ってねぇよ!!」
「ゼータっていうことはそれ以前に万事屋が存在したってこと?ギンさん」
「アスナはさっきから一体何に食いついてるんだッ!!ゼータでもF91でもなんでも良いけどさッ!!」
「あ、お前ぁあれだろ。中の人の年齢的に00か?もしくはAGE・・・」
「どちらかといえばSEEDだ!!って、そんなのどうでも良い!!俺が言いたいのは・・・」
「でもパーティっていうのはいい案かもしれない!」
アスナが満面な微笑みをして両手をパンッと叩く。
それと同時にキリトと銀時の漫才のような会話に一区切りつく。
「さっきも言ったけど、君は基本ソロなんだからこれを境に私達3人でパーティ組んでみない?現状では上層部のダンジョンに進むに連れて危険度は増すばかりだし、いくらキリトくんが強いといってもきっと君一人じゃ限界がくるかもしれないわ」
「あ、安全マージンはしっかりとってるよ、第一、ギルドに入るってのがどうも・・・それに、パーティメンバーってのは助けに入るよりも邪魔になる事のほうが多いと思うし、特に俺の場合・・・
その瞬間、キリトの鼻先に先程ステーキを食べる時に使用したナイフが捉えられていた。
その持ち主は銀時・・・ではなくアスナであった。
キリトはこの光景を見るのは二回目だったかもしれない。デジャブというやつだ。
「わ、わかった!アスナは例外だ!」
「そ」
「・・・ま、なんだ。そういうことにしとけ。キリト」
「あ、あぁ・・・ギンさん」
ちなみに銀時もこの時ばかりは顔を引きつらせていた。
どうやらアスナには銀魂の世界で生きていく素質があるらしい。十分にキャラ立っているだろうし。
「そんなにギルド嫌だったらせめて私と二人でコンビ組みなさい」
「あれ?急に銀さん頭数に入ってないんだけど」
「ボス攻略パーティの編成責任者として、君が噂ほど強い人なのか確かめたいと思っていたとこだし、私の実力もちゃんと教えて差し上げたいし、あと今週のラッキーカラー黒だし」
「な、なんだそりゃ!?」
「お〜い、銀さんどうなったの?シルバーは?」
「シルバーは今週のアンラッキーカラーよ」
「ちょっと待てよアスナ!ギルドはどうするんだ!?」
「うちは別にレベル上げノルマとかないし」
「あの護衛は!?」
「置いてくるし」
「ギンさんはッ!!?」
「そろそろ一人立ちしてよ」
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w