銀魂 −アインクラッド篇−
グリームアイズは雄叫びをあげながら己の巨剣を銀時に向かって振り下ろすが、銀時はそれを諸共せず木刀で受け止め、逆に弾き返す!!
「馬鹿なッ!」
コーバッツの驚きの声が聞こえるも銀時はお構いなしに胴体ががら空きとなったグリームアイズに斬撃を放ち、体勢を保てなくなった悪魔は大きく尻餅をついた!
「アスナ・・・」
「・・・キリト・・・君」
俺達二人は・・・何をしている?
目の前で・・・何も策を無しに・・・一人で・・・友人が・・・戦っている。
俺達は、―――何をしている!?
「・・・行こう」
「えぇ」
銀時に続き、白と黒の二つの閃光が敵に追い打ちをかける。
「ごめん、ギンさん」
「私たち、何もできなかった」
「できてるじゃねぇか」
悪魔を前に、3人は並ぶ。
「今、この場に立っているだろ。こいつらを守るためにな」
ここまで攻撃しても、グリームアイズのHPは全く減らない。
「ギンさん、俺、ギンさんに教えてもらった気がする。ずっと考えてたって駄目なんだ。自分から動かなくちゃ」
「私もキリトくんと同じ。言葉だけだった。・・・目の前の出来事から目を背けていた。背けていただけ」
3人は各々の剣を構え直す。
「へっ。ちったぁ後先考えねぇと、俺みたいな駄目な大人になるからな・・・さぁ、行くぜ!俺達3人、『万事屋』でこいつの討伐を承ってやる!!」
―――最初に動いたのはアスナだった。
アスナは閃光の如く、グリームアイズに中段の突きを三連続させたあと、敵の下半身に一転して切り払い攻撃を往復、次いで斜めに跳ね上がった剣先が、純白のエフェクト光をまき散らしながら上段に二度突きの強攻撃を浴びせる!
「キリトくん、スイッチ!」
「あぁ!!」
アスナは後方にステップ、十分な距離を取って退くのを確認したキリトは右斜め斬り降ろしの強攻撃から、手首を返してゴルフスイングのように同じ軌道を逆戻りして斬り上げる。そのままグリームアイズへ体当たりをし、姿勢をぐらつかせた後にがら空きとなった胴体めがけて右水平斬りを放つ!
「ギンさん、続いて!」
「へァァァァァッ!!」
銀時はキリトの肩を踏み台にし、大きく上空へ飛び立つ!そして落下の勢いを上乗せにしグリームアイズの左頭頂部から右足をなぞるように大きく一刀両断、爆音を共にグリームアイズは地面に数回バウンドするように叩き付けられた!
「二ノ型 ニンテンドースイッチライ―――」
「ト。・・・までは言わせないわよ。大体、何の呼吸法よ。・・・あいつは?」
「・・・駄目だ。全然足りない」
グリームアイズは3人の連撃によろめきながらもまたもや怒号の叫びをあげつつ3人の前に立ちふさがる。HPバーを確認するもろくに減っていない。
「ったく!勢いで飛び出しやがって!どうとでもなれってんだ!」
「クライン!」
3人に続き、クラインたちが声を上げて追随してきた。敵は再び巨剣を銀時たちめがけて振り下ろす!
「下がれ!」
キリトの叫びとともに、全員が後方へ回避を取る。地面に轟音が響き、振り下ろされた後は巨大なクレーターが出来上がっていた。見ての通り、致死とさえ思える圧倒的な威力で、ほんの一撃も受けることさえ許されない。おまけに、剣が次々と襲いかかってくる。巨体のわりにあまりにも早く、反撃をする隙などほぼ無い。
「クライン!前線は俺達3人でなんとかする!お前たちは動けない他のプレイヤーたちの安全を確保してくれ!」
「任された!行くぞお前ぇら!」
風林火山のメンバーは倒れた軍のプレイヤーを部屋の外に引き出そうとする。だが、自分たちは中央でこの悪魔と交戦しているため、その動きは進まない。
「キリト!よそ見すんじゃねぇ!」
「ぐッ!」
銀時の声が届くも、とうとう敵の一撃がキリトの身体を捉えた。
痺れるような衝撃。
HPバーがぐいっと減少する。
死の恐怖が、全身を駆け巡る。
駄目だ。いくらギンさんやアスナがいても、こちら側が不利だ。
このままじゃ・・・全滅だ。
・・・この状況を打破する方法。
―――『あれ』しかない。
ギンさんに教えられたではないか。動かなければ何も変わらない!
出し惜しみしても、しょうがない!仕方がない!
それで、この場所にいる人たちを守れるなら!!
「アスナ!ギンさん!十秒持ちこたえてくれ!」
キリトは前線を離脱、比較的安全な後方まで下がり、メニューウインドウを出現させ何やら操作を始める。
銀時もアスナもキリトが何をしているのかはわからない。
わからないが、二人が今、すべきことはたった一つ!
「何がなんでもお前ぇを守る!」
「何がなんでもキリト君を守る!」
二人は自然とスイッチを行いながら悪魔に攻撃の隙を与えまいと連撃を放つ。しかし、相手も黙っているわけがなく、無数の斬撃が二人の身体を切り刻んだ。銀時とアスナのHPバーがイエロー表示になるも、一歩もキリトに近づかせまいと攻撃を辞めない。
それを見かねた悪魔は、攻撃対象を『変えた』。
その先にいたのは――――クラインだ。
「っ!お、おいおい・・・・おいおいおいおいおいッ!」
たった数秒の出来事だったのだが、悪魔はクラインに向かって間合いを詰め、巨剣を振りかざす!クラインは軍のメンバーの救助に気を取られすぎており、回避行動に移行できない・・・このままでは直撃コースだ。
「クラインさん!」
「ッ!クライィィィィィンッ!!」
キリトもこのときばかりはメニューウインドウから目を離し、クラインへ手を伸ばす――――。
悪魔の斬撃がクラインの身体に直撃する寸前、間一髪、ボロボロの木刀が間を割って巨剣からクラインを防御した!
「ぐんぬゥゥゥゥゥゥッ!!!!!!」
「しょ・・・将軍殿・・・俺なんかの為に・・・!!どうしてッ!!?」
「がッあっ・・・俺がお前さんらの近くにいる限りッ!!・・・ぐッ・・・誰も傷つけやしねーよッ!・・・それよりッ・・・早くっ逃げろぉッ!!」
銀時のHPバーがついにレッド表示になり、危険領域に突入し始める!!
クラインは安全域まで後退するも、今度は守ってくれた銀時が動けずじまいとなってしまた。アスナはソードスキルの連発で長い硬直が発生し動けない。キリトもまだ『準備』が完了していない!
「ぐッ・・・・ガァァァァァァァァァァアアアアアッッッ!!!!」
―――押しつぶされる。
少しでも、気を抜けば巨剣に身体が押しつぶされる!!
銀時の両足は地面にめり込む!HPバーの減りが止まらない!!
「い、いやぁ・・・だめ!!ギンさぁぁぁんっ!!」
――――その時。
グリームアイズの巨剣と右手が宙を舞った。
「・・・え?」
辺りに―電撃−が走る。
悪魔は言葉にできない奇声をあげながら、その場でのた打ち回っている。
「なんだってんだ・・・・っ!」
銀時の目の前には機械仕掛け『サイボーグ』の身体に顔にバイザー、そして、見慣れた『黒の長髪』の姿があった。
「て・・・てめぇ・・・ヅ」
「ヅラじゃない」
黒の長髪の男は再び剣に電撃を浴びせ、のた打ち回る悪魔の左目を潰す。今度はアスナを守るかのように彼女の隣に飛び降り、顔のバイザーをゆっくりと開いた。
そう・・・その男の名は!
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w