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銀魂 −アインクラッド篇−

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第九訓「階級と運気はいつだって反比例」




『銀魂』
・大江戸 かぶき町 真選組屯所

―――時は少々遡る。

雲一つ無い無数の星々と月の光がかぶき町を照らしていた夜。
江戸の治安を守る特殊警察の屯所の縁側で2人の男が静かに一献交えていた。

2人は多忙な業務を終えた後、やや瞳孔が開き気味の男は昔からの数少ない同志でもあり上司でもあるその人物から珍しく「一杯やらないか?」と誘われたものなので、特に断る理由もなかった事もあり「わかった」とそっけない一言を返す。
男は一風呂浴びた後に普段着に着替え、縁側へ移動をすると既に誘った本人はどこか虚空を見つめながら自分でおちょこに注いだ酒をぐいっと飲みこんだ。
「・・・来たか、トシ」
「近藤さん。隣、座るぜ」
トシという愛称で呼ばれた土方十四郎は真選組の局長である近藤勲の隣に座り、懐から一本煙草を取り出しマヨネーズ型ライターで火をつける。土方は肺に煙草の煙を吸い込んだ後、一気にそれを吐き出し、近藤から注がれたおちょこを口元に近づけゆっくりと一杯飲む。土方は普段、誰かと一緒に酒を飲むことは好まず、たまにではあるがいつも一人で晩酌をしているのだ。先も説明したとおり珍しく近藤から誘われたものなので、誰かと話しながら酒を飲むのは久しぶりでもあった。
屯所の無駄に広い庭には小さな池があり、雲一つなかったものなので綺麗な満月がそこに描かれている。風呂上りの気持ちのよい夜風が酒の匂いを運び2人の鼻腔を刺激する。
「なあトシ・・・俺らが武州を経って幾度の四季を迎えたのかもう忘れちまったがよぉ。どんなに時間が経っても、俺たちの守るこの街の夜ってのは、本当に気持ちが良いもんだよな」
「あぁ、そうだな。ほら、近藤さん」
土方は徳利を手に、今度は近藤のおちょこに酒を注ぐ―――。
普段はその性格でいつも覇気が絶えない近藤なのだが、今回ばかりはどこか消沈しきっているように見受けられた。土方はそんな近藤の異変に気が付かないようにいつも通りに接することとした。変に気を使ってしまえば、相手にも更に不快感を与える可能性があるからだ。
「俺ぁこの街が大好きだぜ?どこか汚くもどこかが『美しい』。そんな街なんだよ、ここは」
「まぁな」
「俺はそんな街に住むここの住人も大好きだ。お前たちを含み『家族』だと思っている」
「ありがとよ、近藤さん」
「ふっ・・・鬼の副長から感謝の言葉が聞けるとな・・・」
注がれた酒を再びぐいっと飲み干し、勢いよくおちょこを置いた。土方は一本目の煙草を吸い終え、当たり前と言わんばかりに二本目の煙草に火を付ける―――。


「なあトシ・・・なのに、何故だ・・・」
「あ?」

「俺ぁ・・・もしかしたらよ・・・・・」
「・・・。」


ついに、近藤が核心を話し始めるのか、土方は黙って煙草を吸い続けた。

そして、二本目も吸い終わる頃―――ようやく近藤の重たい口が開かれた。

「俺ぁ・・・もしかして・・・ッ!お妙さんに嫌われているのかなッ!!?」
「散っ々引き延ばしておいてそれかよ!!」

土方はやっぱりその件か、と言わんばかりに近藤に怒号を浴びせた。
そもそも、近藤勲・・・もとい、ゴリラは銀魂三大ストーカーの一人として有名人である。その志村新八の姉・お妙への執着心は並みのものではなく、本人も当初はストーカーだと自覚していた頃もあったが、あくまでも『愛の狩人』であるらしく断じてストーカーではないと断言をしている程でもある。もう一度説明するが、近藤勲は特殊警察組織・真選組の局長である。この設定だけは忘れないでおこう。これ忘れたらもうただのストーカーだから。

「ったく、近藤さん今更気が付いたのかよ。嫌われているどころか人として認識されてねぇよ。そもそも、あんたゴリラゴリラってあの女から言われ過ぎて愛称みたいに受け入れてるが人として認識されてない証拠だからな、それ」
「ゴリラは別にいいんじゃないか?トシ。キテ〇ツ大百科のブタゴリラだって一見、みんなからそういわれてすげぇ馬鹿にされてる気がするじゃん?だけど当の本人は怒り狂うどころか当たり前のように受け入れてるから、俺もそういうポジをねらって行こうと思うんだ」
「いや、ブタゴリラは本名が女の子みたい名前だから自分から周りにそう呼ばせているだけであって、別に本人が受け入れているわけじゃないから。しかも、あんたと違ってちゃんとしたガールフレンドいるから。あんたはゴリラだとしても当の本人であるブタゴリラとは一切共通点ないから」
「なるほど。そうなるとすれば、俺もあの傘みたいな帽子を被って八百屋を経営して自分からゴリラ呼びを周りに推奨すれば人として認識される・・・という訳だな?なるほど」
「いや!それブタゴリラになっただけだろォ!?作品の垣根を越えて藤〇・F・不〇雄ワールドに入門しただけだから!!」

―――土方の悩みの一つがまさに近藤のお妙に対する執着心なのだ。
普段はもちろん真面目に公務を行っているのだが、その瞳にほんの少しでもお妙が映ってしまえば、あとは皆が想像する通り、超が付くほどの悪質ストーカーへ変貌してしまう。原作でも小説でも映画でも実写でもアニメでもOPでもEDでもそのような絵面が強く協調されるものなので、市民にも隊士にも示しがつかない・・・。一刻も早く、このゴリラにはあの女を諦めて頂かねば。

「というか、近藤さん。もうあの女に執着するのは止めておけよ。あの女と眼鏡はあの万事屋とかなり密接に繋がっている事を忘れてないよな?なにか事あるごとにあの銀髪もじゃもじゃに振り回されて正直困ってんだ。これ以上面倒事に巻き込まれんのは御免だぜ」
「何を言う!我が弟、新八くんを侮辱することはいくらトシでも許さんぞ!」
「いつ、あの眼鏡が近藤さんの弟になったんだよ・・・・はぁ・・・」

土方の悩みは尽きない。
三本目となる煙草に火を付け、おちょこに残った酒を一気飲みし、そそくさと自分の寝室へ戻ろうとした。
「待てぇ!トシィィィィッ!!まだ『お願い!お妙さんこっちに振り向いてくれ作戦』の本筋を説明してないんだけどォォォッ!!?」
「本筋入る前にクライマックスに突入していることぐらい自覚しやがれ!!」
振り向きざま罵声に似たツッコミをして足早に寝室に戻る。
駄目だ。このままでは本当に近藤さんはただのストーカーとなってしまう。
・・・いや、原作では、『ほぼ』ただのストーカーなのだが。

自分が何とかしなければ・・・!

土方は舌打ちをして、吸いかけの煙草の火を消した―――。

・・・

『銀魂』
・大江戸 かぶき町 ターミナル前大通り

翌日、土方は一人でかぶき町を巡回していた。
基本的に奇襲や事件があった時の場合を見越して2〜3人の隊士で見廻るのだが、土方は喫煙者の為、煙草臭くなるから嫌です、と隊士たちから煙たがられているため、こうして1人で出歩いているのだ。

そんな最中、大通りの一角で何やら人ごみの集団を発見した。