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銀魂 −アインクラッド篇−

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・・・


――――アルゲードの飲食店街から少し離れた川沿い、ベンチに赤ブリーフ一枚の男が一人、ポツンと座っていた。飲食店街の大通りとは違い、こちらは商業施設があまり無いためか遠くからプレイヤーの話し声が聞こえる程度で辺り一面は静寂だった。

銀時はやっとの思いで到着。
ベンチに座るヒースクリフに話しかける為、後ろから近付いていく。ヒースクリフは銀時の到着に気が付いたらしく、後ろを振り向くことなくそのまま話し始めた。

「明日、決闘―デュエル―があるんだ・・・本当はね。するつもりは一切なかったんだよ」
「?・・・あ、あぁ」
「私がもし、明日のデュエルで敗北してしまえば、昔から今日の血盟騎士団を立ち上げるにあたって、死力を尽くしてくれた『彼女』を失ってしまうからね」
「・・・。」

銀時はヒースクリフの話を黙って聞き続ける。
そんな中、少しずつではあるも彼の真意が伝わってきた。

最強の男。生きる伝説。聖騎士等々・・・。

様々な二つ名を持つギルドリーダー―団長―とて、所詮、人の子だった。

「私は世帯を持ったことが無い・・・無いのだが。それでも今、私の家族と呼べる者たちがいる。『血盟騎士団』の皆のことだよ。ははっ。変な話だろう?別に何の血縁も無い。どこで生まれ育ったかも知らない。誰が父で誰が子で、そんな事も知る由もない。そのような人々の集まりを私は『家族』と揶揄しているのだ。・・・それでも、『彼女』は私の大切な家族の一員だ。だから・・・私の大切な家族を連れて行く覚悟があるか彼に示してほしかった。まさか、ユニークスキル持ちの私に本当にデュエルを受けて立つと返答してくることは予想外でもあったがねぇ・・・」
「団長・・・お前ぇもしかして・・・」
「ああ・・・そうだ。彼女・・・いや、私の大切な『家族』を連れて行かれるのが、悔しかっただけなんだ。嫉妬にも似た感情さ」

ヒースクリフの言葉に、銀時もどこか自分にも似たような感情を持った時の事を思い出していた。いつかの・・・そう、神楽があのハゲに無理やり連れていかれそうになったときだったか?
どことなく、ヒースクリフと自分は『似ている』ように感じられた。


「そんな前夜祭というわけでもないが、今日は久しぶりにくだらない事をやってやろうとして、店長にもかなり無理を強いれてしまったようだね。君たちは普段、あの場で働いていないのだろう?どこの、一体誰かは知らないが」
「ただの『お人よし』さ。弱小プレイヤーでなんのスキルも持たねぇ、あんたみたいに聖騎士ともよばれねぇ、馬車にすら乗る事ができねぇ補欠の一人だ。・・・だけどな、そんな俺でも一つ、あんたに伝えられることがある」

銀時はゆっくりとヒースクリフの座るベンチの後ろに歩み寄る。
そして、一言だけ、団長である彼に助言をした。

「家族の絆ってのは、どんなに離れていても切れる事はねぇ」
「っ・・・ふ。」

背中越しでわからなかったが、ヒースクリフはきっと笑ったのだろう。
そんな彼を見て、銀時も少し満足気味になった。

「ところでパー子さん・・・先程から『俺』と呼称しているが、もしかして君は女性ではなく男性―――ん?」

ヒースクリフが後ろを振り返る。
店内ではプレイヤーネームや各ステータス値は強制的に非表示とされていた。
しかし、今は店の『外』
するとどうなるであろうか。通常通り、全てのステータスが誰でも確認できてしまうのだ。

それは、彼のみではなく銀時も同じだった。
それに気が付いた銀時が取った行動はたった一つ―――。

「君の名は・・・ギ」
「団長ォォォォ!酔い覚ましに一杯どうぞォォォォッ!!」

銀時は大慌てで自身が所有していた睡眠薬をヒースクリフの口にそれを突っ込み、返答をさせる隙も与えず眠り状態にさせた。そんな中、ようやくキリトとアスナが息を切らしながら到着する。

「お、おう。遅かったじゃねぇか」
「ちょっとギンさん!団長に何させたのよ!・・・あぁもう、変な薬飲ませたのね?」
「もしかして、リズとシリカにも飲ませた『あれ』か?・・・まぁ、酒も結構飲んでいたみたいだし、酔いつぶれて睡眠状態になった・・・という話にすれば大丈夫か」
「そんな簡単に・・・って、キリトくん。ちょっと待って。リズとシリカにも・・・って今言った?言ったよね?」
「あっ・・・いや、違う!違わないけど・・・とにかく事情があってだな!」
「信じらんないっ!キリト君、どういうことか説明して!!」
「わかった!このあとちゃんと説明するから!!だからアスナ!レイピアを出すな!!」
「きっちりと1から10まで説明してもらうわよっ!!?あとギンさんにもちゃ〜んと説明・・・えっ・・・ちょっと待ってよ・・・」
「なんだ?どうした嬢ちゃん?」

アスナは怒りを忘れたかのようにヒースクリフの口に無理やり突っ込まれていた小瓶を見て、一気に青ざめる――――。
そして、その小瓶をとってまじまじと見つめた後、少しずつだが額から汗を流し始めた。

「・・・あの、キリトくん・・・2人にも飲ませたのって・・・本当にこれ?」
「ああ。ギンさんが飲み物だと勘違いして睡眠薬を飲ませたんだよ。だけど2時間も経てば目覚めるからそこまで危険性は無いよ」
「でもこれ・・・2時間なんて生温いものじゃないわよ?」
「何言って――――っ!!?」

キリトもアスナが手に持つ小瓶を見て驚愕する。
何故なら、ラリホー。いや、ラリホーマすら凌駕する代物だったからだ。

『ユニークアイテム:睡眠薬・極 効果:極稀にドロップする超強力な睡眠薬。飲んだプレイヤーは24時間睡眠状態となるので必ずプレイヤーホーム内で使用する事。三日三晩迷宮区を攻略し続けた玄人向け』

「え・・・・ちょっと・・・え?えぇっ?・・・・えぇぇぇぇェェェェェエエエッ!!?」
「キリトくん・・・今って、9時過ぎよね・・・・明日の決闘―デュエル―ってたしか、正午よね・・・・これ、起きないよね」
「・・・ははっ・・・やばいよ、これ・・どうしよう・・・ッ!おい、待て。このまま泥酔して起きなかったことにして、決闘―デュエル―をすっぽかした事にすれば良いんじゃね!?」
「そそそそ、そうね。それなら全て丸くおおおお納まるかもッ!ね?キリト君。ね゛ッ!?」
「あ、あぁ・・・とりあえず、ヒースクリフの身体をどこかに―――」
『おお!ようやく見つけましたでー!お、アスナはんに、キリトはんもいるやないですか!』

ふと、3人の立つ後方から血盟騎士団の白赤の制服がこれほど似合わない奴もいるまいというほど横幅のある男がたゆんたゆんと腹を揺らしながら丸い顔に満面の笑みを浮かべながら男がアスナに声をかけてきた。
「ダイゼンさん!ど・・・どうしてここに?」
「いや〜実は明日の決闘―デュエル―に向けて急ピッチで準備してましてな?ちょーどさっき終わったもんで団長はんに報告にきたんですわ!」
「ちょっと待って・・・準備って一体何をしていたの?」

アスナの嫌な予感がすると言わんばかりの問いかけとは裏腹に、ダイゼンと呼ばれた人物は満面の笑みのまま手で胡麻を擦る動作をしながら問いに答える。