銀魂 −アインクラッド篇−
・・・
『銀魂』
・大江戸 かぶき町 万事屋銀ちゃん
「4つ目の・・・ナーヴギア?」
土方が出したその木箱の中には、銀時が装着している物と同じそれが収められていた。
土方達の思考は先に説明した通り、こちら側の誰かが銀時達が攻略するゲームに加担してさっさとクリアしてこいという訳だ。
だが、それはあまりにも危険すぎる。
ミイラ取りがミイラに・・・なんて、良く言ったものだが、まさかそのような状況が訪れる場面になってしまうとは新八は思いもしなかった。
「そんで、・・・まぁ言わなくてもわかると思いますが。誰がこのからくりを装着して旦那や近藤さんたちがいるあちら側に行くって話でい」
沖田は簡単にそれを言う。
危険な行為なのは間違いないのだが、確かにそれが一番手っ取り早いのだ。
しかし、あちら側が一体どのような世界なのかもわからない。人はいるのか?どのような世界観なのか?苦戦しているのか?それとも終盤近くなのか?
―――色々な思考が新八の頭にとぐろ撒く中、まず最初に手を挙げたのは神楽だった。
「だったら私行ってくるアル!銀ちゃんとゴリラとヅラ引き連れてさっさとクリアすれば良いだけでショ?」
「おい、簡単に言うんじゃねぇーぞチャイナ娘。力任せに事が進むっていう保証が無い上、ここは力量もあって策を練られる輩が行った方が確実だ」
「なら尚更私アルな!トッシー、ちょっくら行ってくるアル!」
「てめぇ人の話聞いてたァァァッ!?何コンビニに行く感じでそれ使おうとしてんだァァァァッ!!てめぇだけは絶対行かせねぇからなッ!!」
「土方さん、やはりこいつぁお上が推薦した奴に使わせた方がよさそうですぜ?こいつらに使わせたところでリーデットが増えるだけでさぁ」
「だれがリーデットだゴラァ!てめぇ包帯ぐるぐる巻きしてギブドにすっゾッ!?」
沖田の言う通り、ここは今回の任に最適な人物を決めてもらってその人に行ってもらった方が良い気がする――――。
するのだが、・・・この気持ちはなんだろうか?
本当に、このまま他力本願で良いのだろうか?
「ったく、時間の無駄だったぜ。とりあえず状況は説明した。あとは俺達真選組に任せてもら―――」
「ちょっと待ってください!」
新八は何も策も無く万事屋を後にしようとした土方と沖田を止めた。
止めた理由は無い。
だが、言いたい事なら一つだけある。
「そのからくり・・・僕に使わせてもらって良いですか?」
「・・・なんだと?」
「おいおい、メガネ。正気ですかぃ?」
土方と沖田は何だと言わんばかりに新八に迫り寄る。
2人の気迫に負けそうになるも、ここで下がればもう二度とチャンスは訪れない。
言い訳もなにもない。ただ、思っていたことを新八は口にする。
「銀さんが倒れた以上、残された僕たちがあの人の手を引っ張ってあげなきゃダメだと思うんです!僕たちは3人で万事屋なんです!本当は神楽ちゃんもつれて一緒に迎えに行きたいけど・・・だからお願いします!それを僕に使わせてください!!」
新八はその場で2人に土下座をする。
突然の行動に神楽は新八に顔を上げるよう、何度も声を掛けるが逆に新八はひたすらと額を床に擦りつけていた。
そんな新八に根負けしたのか、土方は普段のドスが聞いた声とは裏腹にちょっとばかり優しさを取り入れたような口調で新八に問いかける。
「何故だ。なんであの男の為にそこまでする?」
「仲間であり、家族なんですよッ!!銀さんはッッッ!!」
「ッ・・・。」
―「俺ぁこの街が大好きだぜ?どこか汚くもどこかが『美しい』。そんな街なんだよ、ここは」―
―「まぁな」―
―「俺はそんな街に住むここの住人も大好きだ。お前たちを含み『家族』だと思っている」―
―「ありがとよ、近藤さん」―
―「ふっ・・・鬼の副長から感謝の言葉が聞けるとな・・・」―
土方の脳裏に、近藤との会話の記憶が蘇った。
土方は今日何本目か忘れてしまったが、懐から煙草を一本取り出し、火をつける。
「ふぅ・・・・顔を上げろ眼鏡」
「えっ・・・・土方さん?」
「悪ぃが・・・一般市民にそんな危険な真似はさせられねぇ」
「・・・そんなっ」
「だから、万事屋に『依頼』する」
土方は4つ目のナーヴギアを新八に差し出す。
新八は驚き声が出なくなってしまうも、土方はお構いなしに話を続けた。
「あまり気乗りはしねぇが、俺達の戦力がこれ以上落ちても困るからな。正式に真選組から万事屋へ依頼する。うちのゴリラを救いにあちら側に行ってくれ。そのついでに万事屋だの桂だの救ってくれば良い。二度は言わねぇ」
「土方さん・・・っ」
土方の優しさに新八は目頭が熱くなった。喉の奥が閉まり、次第に涙があふれてくる。
新八はありがとうございます、と何度も頭を下げ、土方が差し出したナーヴギアを受け取ろうとした。
「ちょいと待ちなぁ」
しかし、それは沖田の一言で阻まれる。
沖田は何か面白くなさそうにナーヴギアを土方から無理やり取り上げた。
「土方さん、何勝手な事してるんでぃ。いくらこいつらが万事屋だからって所詮は子供。貴重なこいつを子供に預けるなんてどうかしてますぜ」
「総悟・・・俺はこいつの覚悟を聞いた上で渡しただけだ。責任なら俺が持つ」
「あんたにこれ以上の責任を持てると本当に思ってるんですかぃ?なんなら、あんたはうちの局長をあんな状態にしたっていう前科も持っていること、お上にしっかりと報告したって構わないんですがねぇ」
「総悟・・・てめぇ、何が言いてぇんだ」
土方と沖田は睨み合う。
そんな2人の威圧に新八はやや身体が硬直してしまった。
一色触発・・・そのような空気が万事屋内に広がる
「あんたやこいつらに子供にこれ以上の責任を追わせるってんなら、ここは大人である俺達がけじめつけましょーや。確かにあんたの言う通り、これ以上の戦力の低下は真選組にとっても不味いことでさぁ・・・だったら、選択肢は一つ」
「おい・・・総悟。お前もしかしてっ!」
「はい、そうです・・・俺、ちょっくら行ってきまさぁ」
沖田は次の瞬間、ナーヴギアを自身の頭に装着する!
あまりの突発的な行動に土方すらも驚きを隠せなかった。
沖田は装置を起動し、鈍い音を鳴らしながらその場に座り込む。
「ま、待ってください!沖田さん!」
「眼鏡・・・お前の覚悟、俺にもしかと受け止めたぜぃ?あっちの世界で旦那に会ったら、ちゃんとお前ぇの事伝えておくぜ?あと、・・・あんまり気乗りしねぇが・・・チャイナ娘、お前は?」
「おいお前!私だって銀ちゃんに伝えたい事いっぱいあるヨ!勝手に行くんじゃねぇヨ!」
「だったら早くしろぃ。・・・ちゃんとてめぇの分まで伝えてきてやるからよ」
「わかっているヨ!?銀ちゃん、早く帰ってきて!・・・それだけで十分アル!・・・あと、お前も、絶対に帰ってこいヨッ!?昨日の決着・・・ぐすっ・・・・まだ着いてないアル!」
「そうだったなぁ・・・・てめぇ、昨日ご飯の時間だ。って言い残して、勝手に帰ったからなぁ・・・」
神楽は泣きながら沖田に必死に銀時への想いを伝えた。
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w