銀魂 −アインクラッド篇−
アスナは問答無用でクラディールの身体を切り刻む。クラディールは既に犯罪者を示すオレンジカラーへとカーソルが変わっているため、アスナに犯罪フラグが立つことはない。クラディールは断末魔をあげながら両手剣で応戦しようと試みるも、実力差が有りすぎて結果は説明するまでもない。HPバーがみるみる減少していき、黄色から赤い危険域に突入したところで、とうとうクラディールは剣を投げ出すと両手を上げて喚いた。
「俺が悪かった!こ、降参だ!ギルドも辞める!あんたらの前にも二度と現れない、だから―――」
「『助けて』って・・・あなたにやられた人たちも言っていたはずよ」
「ひッ!!?」
「それに加えて、キリト君を・・・ギンさんを・・・・私の仲間に手を出したこと・・・絶対に許さない・・・・もう、あなたを絶対に許さないッ!!」
アスナは剣を逆手に持ち換える。
そして、その剣の先は土下座するクラディールの背の真ん中に一気に突き立てられようとした。瞬間、殺人者が一際甲高い悲鳴を発した。
「いやだぁぁぁぁッ!死にたくねぇェェェェェェッ!!」
がくっ、と見えない障壁にぶつかったかのように剣先が止まる。
彼女の細い身体が、ぶるぶると激しく震えた。
―――そうだ、やめろアスナ。君はやっちゃいけない。
内心でそう叫ぶと同時に、キリトは全く正反対の事を口に出していた。
「駄目だァァァっ!!躊躇するなッ!!そいつはそれが狙いだァァァァァっ!!」
「っ!!」
未だに毒で動けない身体を必死に揺すりながらキリトはアスナに叫ぶ。
「っヒャアァァァァッ!!」
アスナの右手からレイピアが弾かれる。
体勢を崩すアスナの頭上で、ぎらりと金属が輝いた。
「アアアア甘ぇんだよォォォッ!!副団長様ァァァァァッ!!」
狂気を滲ませる絶叫と、どす黒い赤のエフェクトをまき散らしながらクラディールは剣を何のためらいもなく振り下ろした―――――。
「―――そうそうっ!本当に甘いよね!こーいうときはこ〜やって、思いっきりやっちゃうのが一番なんだよっ!躊躇しちゃうのが一番ダメダメッだと思うなっ!」
辺りに響く『第三者』の声。
クラディールが振り下ろした剣は、アスナには届いていなかった。
宙を舞っていたのだ。
―――いや、正確には彼の『両手』と共に舞っていた。
両腕の持ち主は『それ』が無い事に気が付いたのはそれから数秒後だった。
「え?・・・・はぁぁぁああああ゛あ゛っ!!?ギィヤァァァァァァアアアアアアアッ!!」
「ひぃッ!」
アスナはパニックになるクラディールに驚き、すぐさま硬直状態のキリトの前に移動する。
「い、今のは!?」
「わからない・・・でも、私じゃない!・・・っ!!」
慌てふためくクラディールの後ろには、女性の姿があった。
赤色の無地の一張羅に防具は装備せず、ポニーテールに束ねた黒髪に頭頂部から一本だけぴょこんと飛び出たアホ毛を風になびかせる。そして一番特徴的な『赤い眼』。小柄で可愛らしい声とは裏腹にその身体の1.5倍はある長い両手剣を片手でブンブンとふりまわし、パニック状態のクラディールに対し楽しそうに話し始めた。
「もう、そんな程度で人を殺そうだなんて絶対にむりだよっ?こうやって、おもいっきり剣を振ればあっという間なんだからっ!」
女性は、長剣でクラディールに対し垂直に斬り払う。
入念に研ぎに研いだ包丁で野菜や果物を切った時のように、いとも簡単に彼の両足が切断され、四肢を失ったクラディールはその場から動けなくなってしまった。
そのような彼女の行動に2人は絶句してしまう。
「助けてェェェェっ!!アスナ様っ!お願いしますっ!!なんでもしますからァァァアアアっ!!」
「ふふっ!女性に助けを求めるなんて、男らしくないぞっ?」
「――――っ!」
クラディールの『頭部』と身体が別々になった。数秒間だけ残り、別々となったその部位は無数のガラス片となり、消滅した。
しかし、助けてくれた―――という訳ではない。ありえない。
なぜなら、彼女の手にも『ラフィン・コフィン』のタトゥーがあったからだ。
「わたしの名前は『レフティ』っ!覚えてくれたら嬉しいなっ!さてと、今日はお仕事が山積みだね〜。今から君、キリトくんだったっけ?君を殺してって頼まれちゃって上の層からはるばるここまでやってきたんだからさっ!どうぞ一局お相手よろしくお願いしま〜すっ!」
「ラフコフ・・・っ!!?」
「俺を・・・殺す・・・っ!?」
大きくお辞儀をするレフティとは対象的にアスナの額から一筋の汗が流れ出る。
休んでいる暇などは無い。
動くことのできないキリトを守るべく、アスナは再び剣を構え直した――――。
・・・To Be Continued
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w