銀魂 −アインクラッド篇−
第十二訓「フォースと共にあらんことを」
『ソードアート・オンライン』
・階層:不明 現在地:不明
「我が名は『ライト』。今は亡きラフィン・コフィンの幹部だった」
「いや、誰も聞いてねぇんだけど」
「武士であれば名乗るのは当然の行為。貴様、名はなんと言う」
「なんで見ず知らずの野郎に名前言わねぇといけねえんだ」
「名乗らない。それも良い。聞いたところで意味は無い。すぐにこの世界から消え去るから―――」
ライトと名乗った男。
銀時はすぐに「この男は危険だ」と察知した。
今までの長い戦いの記憶の中で、様々な強敵達に打ち勝ってきた銀時ですら自分は殺されてしまうという『恐怖』を味わっている。
「ったく、てめぇも人の話を聞かねぇタイプの人間か?さっきから何言って―――ッ!」
瞬間。銀時の目の前からライトと名乗った男が『消えた』。
いや、後ろだ!
銀時はすぐさま後ろへ振り返る。
そこには・・・
「だ・・・・だず・・げっ・・・・」
「ラフィン・コフィンを名乗ってこの様は見逃せない。黄泉の国で償うしかない。南無・・・」
「い゛ッいやだッ!!死に゛だくないッ!!死゛に゛ッ――――」
這いつくばる男の胸にライトの黒刀が無残にも突き刺さっていた。
男は最後の最後まで抵抗を続けるも無慈悲にHPは0となり、消滅してしまった。
ライトはそんな消滅した男に手を合わせてお経を読み始めた。
「・・・お前ぇ、そいつは仲間じゃなかったのか?」
「仲間だった。しかし、それはもう過去の話」
「だからって何故殺した!!そこまでする必要はねぇだろが!!」
「役に立たない。悲しいが、しょうがない」
「・・・・てんめぇッ!!」
―――銀時はライトまで一気に間合いを詰め、一撃を与えようとする。
しかしそれは当らない。なぜなら、そこにライトはいなかったからだ。
「速ッ!」
「違う。貴様が遅い。―――弱い」
「何ッ!!?」
足音も立てず自分の背後へと移動していたライトは銀時に一太刀を入れる。
銀時は瞬時にそれを察知、なんとか回避し後方へと下がる。
「危ねぇ・・・一撃与えるどころか貰いそうになっちまったぜ」
「・・・?何を言っている。もう与えている」
「へっ!はったりぬかすな、この通りピンピン―――」
自身の背中に大きな衝撃を受ける。
まるで、象のような大きな動物に背中を蹴られたかのような衝撃だった。
銀時の背中に大きな赤いエフェクトが出現する。それは、自分がダメージを受けた時のみに出現する、いわば仮想上の傷のようなものだ。HPバーを確認すると、たった一撃でごっそりと減らされており、あと何発か頂くと危険域を表す赤い表示に変わってしまう。
「・・・まさか、こんなところでやべぇ奴に出会うとは思っていなかったな」
「俺はやばくない。普通だ。どちらかというとお前の頭の方がやばい。南無・・・」
「人の頭見てお経唱えてんじゃねぇェェェッ!!」
「俺の剣。エクストラスキル『断空斬』・・・一振りで空間を削り取る。並大抵のものなら跡形すら残さない」
「なんで今それ言ったァァァァッ!!?あとど〜でも良いが、自分の技をほいほいと相手にネタバレする奴は後で大抵泣くことになるぜ!?」
銀時はライトの言うエクストラスキルという言葉に内心驚いていた。キリトも二刀流というスキルを会得しているが、まさか敵すらも会得しているとは思いもしなかったからだ。ライトは黒刀を構え直す―――もう一撃来る!そう察知した銀時は同時に回避行動に移った。
「無駄。避けきれてない」
「ぐっ!」
確かに回避したはずなのだが、銀時の左足に赤いエフェクトが出現、最初の一撃までは無いにしてもHPがまた減らされてしまう。
奴の剣は虚空を斬った――――なぜ届く?
本当に『空間』を斬っている?
少しずつ息が上がる銀時とは対照的にライトはすまし顔で一歩、二歩と銀時に近づいていく。銀時はその場でしゃがみ、足元にあった小石を掴みライトに向かって投げる。ライトは再び黒刀でそれを斬る。瞬間、銀時の投げた小石は『消えた』。
「そんなことして何になる?時間の無―――」
銀時はライトが話終える前にアスナの動きを真似た高速の突きを放つ!
「壱ノ型!ニンテンドースイッ―――ッ!」
だが、あと数センチというところで何かを察知した銀時は瞬時に自身の木刀を引っ込めた。その予感が的中したかのようにライトは斬り払いをする。
―――あと少しでも引っ込めるのが遅ければ、自分の木刀と右手は確実に『持っていかれた』。
「話を終える前に攻撃をしてはならない」
「んなもん関係あっか!そもそもなんでてめぇは俺を狙う!他の奴らみてぇに人斬りに飢えてんのか!?」
「そんなことはない。ただ俺は『あの方』に命令されただけ」
「さっきから『あいつら』とか『あの方』とか誰なんだよ一体!」
「貴様には関係ない。ただ、生きていること自体が問題。貴様はこの『世界』の人間ではない。排除する」
「お前ッ!俺の事―――」
こいつは、自分がこの世界の人間ではない事を知っているのか?
色々と聞きたいことがあるが素直に聞き入れてくれるとは信じがたい。
銀時は自分の窮地とは裏腹に、元の世界に帰れる希望を見つけることが出来たと言わんばかりににやりと笑った。
「・・・なぜ笑う?」
「さあな。本当に頭おかしくなっちまったのかもしんねぇ」
「理解できない。そろそろ消えてほしい」
ライトによる高速の斬撃が銀時に放たれる!
しかし銀時は全て回避、体中に微かな赤のエフェクトを出しつつも身体を大きく左回転させてその勢いを殺す事なくライトの顔面目掛けて薙ぎ払う!
「っ・・・」
ライトは鼻をひくんと動かし、やや後方へ回避行動をとる。まるで、予期せぬ事態が起きたといわんばかりに自身の右の頬をなぞった。
―――そこには、ダメージを受けたことを主張する赤いエフェクトがあった。
「・・・何故?」
「はぁッ・・・はぁッ・・・よ〜やくわかってきたぜ?てめぇの間合いッ!」
「成程・・・さっきの小石は牽制ではなく、俺の断空斬の攻撃範囲を読む為。そうなると先程の突きも同じ。この短時間で学習するとは・・・敵ながら見事」
「あの高速移動もその技の応用だ。その刀で空間を削り取り、あたかもてめぇが瞬間移動をしてるように見せる。俺からの攻撃にあの動きができてねぇってことは図星なんだろ。その傷が何よりの証拠だ。理屈が解れば話は早ぇ。だから言っただろ?自分の技をほいほいと相手にネタバレする奴は大抵後で泣くことになるってな!」
ライトは黒刀を構え直す。
それと同時に、強敵が現れたと言わんばかりに眼つきも変わった。
「再度問おう。貴様の名は?」
「再度言おう。なんで見ず知らずの野郎に名前言わねぇといけねえんだ!」
作品名:銀魂 −アインクラッド篇− 作家名:a-o-w