宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 1
「え?何?なんで??」
ユキは自室で袋に入っているものを見て驚いた。
(ウェディングドレス…それも私の…)
手に取ると手紙が入っていた。
<ユキ、良かったわね。>
母の字で書かれた手紙は一行だけだった。ユキは涙が止まらなかったまさか…ここで式を挙げる事になるとは思ってもみなかった事…ちょうどそこへ島からメールが入った。
<着替えが済んだら俺にメールで教えて。部屋まで迎えに行くから。
1時間、って言ってたけど慌てなくていいよ。>
ユキは涙で画面が見えなくなっていた。何度も何度も涙を拭きながら
<ありがとう。>
とだけ返事を入れた。時間がない。ユキは冷たい水で顔を洗うとシャワー室に向かった。
「お~い、少年!!」
太田が医務室へ来た。
「はぁい」
少年と佐渡がふすまから顔を出す。
「ホレ、これに着替えて…打ち合わせ通りだ。キミはユキさんの指輪持ち。
責任重大だからね。」
少年はずっとディンギルの服を着ていた。だけどそれも今日で終わり…これからは地球人として生きて行く…
「お、似合うぞ?将来俺の次にいい男になりそうだ!」
まっしろなスーツに着替えた少年は“え~、太田さんに似て?”とふざけながらも嬉しそうだった。
<用意できました。>
ユキからメールが来た。島は真田の隣に行って
「真田さん、ユキの準備が出来ました。一緒に迎えに行ってください。
相原、少し、時間を置いて艦長室以外の艦内放送で全員側面展望室に集合
させてくれ。」
島がお願いすると真田は快く“よし”と言って第一艦橋を出た。進は藤堂からこれからあるイベント(ウソ)の打ち合わせとして艦長室に閉じ込められていた。
「あいつが騙されやすい性格でよかったですね。」(島)
「そうだな、俺だったら何かある、って思うけどなぁ」(真田)
そんな会話をしながらエレベーターは居住区のある階に着いた。そしてユキの部屋をノックした。
「ごめんなさい、1時間じゃ無理だったわ。」
いつもと違うメイクに真っ白なウェディングドレス…真っ赤な目が時間を取った理由の一つだろう…あまりに美しい花嫁姿に島と真田は何も言えなかった。
「もう、二人とも気が利かないわね。今日くらい、キレイだよ、って言って
くれてもいいじゃない?」
ユキがそう言うと真田がポロっと涙を流した。ユキは驚いた。
「ユキ…人間は…本当に美しいものを見た時言葉で表現できなくなるんだ…
ユキ、すごくキレイだよ。今までいろんなユキを見て来たけど今日が一番
キレイだ。なんだか古代の所に嫁にやるのもったいないな。ユキの父親の
気持ちがわかるよ。」
真田の言葉を聞くとユキの眼から一気に涙が溢れて真田に抱きついた。真田はユキを受け止めると“よしよし”と背中をさすった。
真田はユキが医師から看護士に志望変更した時からずっと後見人として全て見てきた。ユキがどれだけ努力してきたか、無理を自分に課してクリアーしてきたのか…その一つ一つが思い出として浮かんできて本当の父親の気分だった。
「さて、そろそろ…行きましょう。」
島も涙が溢れていた。
ユキが自室を出ると相原の艦内放送が聞こえた
<乗組員全員側面展望室へ集合>
島は沖田に“後10分でokです”とメールを入れた。
作品名:宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 1 作家名:kei