宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 1
<はい、古代進、この航海が終わったら森ユキと結婚します!>
突然スピーカーから進のプロポーズが聞こえてきた。ヤマトの乗組員は全員時間が止まったかのように固まって聞いていた。
(え?うそ??古代くん???)
ユキも同じように固まった。ユキと同じフロアーにいたクルーは固まりながらもユキを見た。すると沖田から放送が入った。
<ユキ、聞いてるだろう?艦長室に来なさい。古代が待ってるぞ。>
一瞬で我に返り何が起きたのか頭を整理しようとするが何が何だかわからない…。
「班長、艦長と我らの戦闘班長が待ってますよ!早く行ってください!」
ユキはコスモタイガーの隊員にアクエリアスの植物採取をお願いしていてそのサンプルを取りに艦載機の格納庫に来ていた。
「え?え?えっと…でも、これ真田さんに届けないと…」
ユキはかなり動揺していた。
「ユキさん、いいですよ、俺らが持って行きますから!ほら一生の事なん
ですから…おい、誰かエレベーター呼んで!」
加藤四郎が叫ぶと
「すでに呼んでます…あ、来ました!森さんどうぞ!」
コスモタイガーの隊員が最上階のボタンを押した。加藤がユキの手を引いてエレベータに乗せる
「行ってらっしゃい!ゴールはすぐそこですよ。」
加藤四郎は笑顔でユキを見送った。
(なんでこんな展開になってるのかしら…)
ユキはエレベータの中で考えた。
(古代くんは艦長室に"明日、発進する事"を伝えるために行ったはず…)
ほんの数秒のエレベーターがとてつもなく長い時間に感じた。そして最上階にエレベーターは到着した。扉が開くと目の前に艦長室がある。前回の航海で進がいた場所だ…ユキは震える手でノックをした。
「森…です。」
「入れ。」
沖田が返事をするとユキは深呼吸して扉を開けた。艦長室には沖田が宇宙空間を背に立っていて進が扉近くに立ちユキを見ていた。
「…古代くん…さっきの…」
ユキが進に聞こうと近付いた時沖田が
「ユキ、聞いたとおりだ。古代は返事を聞きたいそうだ。」
と、聞いて来た。
「え…今…ですか?」
ユキは上目づかいで進を見た。
「だって、返事も何も…婚約中だし…」
渋るユキ
「ユキ、すぐに式を挙げよう。」
進が真剣な顔で言った。
「うそでしょう?いつもなら亡くなった戦友を弔ってから、とか…仕事の都合
とかいろいろあるじゃない。」
ユキが泣きそうな顔になった。
「いつもはそうだけど…」
進がバツ悪そうな顔をすると
「ユキ、これは艦長命令だ。この男は相変わらずで自分の事になるとなかなか
決める事が出来ない。最初の航海の時もそうだったがあの時は私の体調が
思わしくなく“艦長代理”と言う重い肩書を背負ってしまったから何も
言えなかったんだろうと思ってはいるが…しかし今回の航海は違う。古代は
戦闘班長だ。この戦いで亡くなった者の事は私の責任だ。それに…」(沖田)
「艦長…」(進)
「待たせて待たせてユキがおばあちゃんになってしまったら困るだろ?」
「艦長!」(ユキ)
沖田もユキも笑っていた。進だけが困惑した顔をしていた。
「何か困った事でもあるのか?ユキじゃ不服か?」(沖田)
「そんな事ありません!」
即答するあたり沖田は(本当にユキしか見えてないな)と思った。イスカンダルへ行った後の戦いを見ると進が命を削って生きてきたとしか見えなかった。沖田は一日でも早く二人を落ち着いた生活を送れるようにしてあげたかったのだった。
「ユキ…地球に戻ったらすぐに式を挙げよう。ユキが望むような式を挙げられ
ないかもしれないけど…小さな式になってしまうかもしれないけど……
俺に付いてきてくれるかい?」
進はユキの右手を取って言った。
「古代くん…」(ユキ)
「ふたりで…幸せになろう…みんなの分も。」(進)
ユキの瞳は今にも涙が零れ落ちそうになっている。
「ユキ…」(進)
ユキは名前を呼ばれた瞬間進の胸に飛び込んだ。沖田は静かに艦長室を出て第一艦橋へ向かった。
作品名:宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 1 作家名:kei