宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 2
「アァトテモゆきサンきれいデス。トウトウ手ノ届カナイトコロヘ行ッテ
シマイマシタ。私コレカラ何ヲ支エニ生キテ行コウ…」
アナライザーが青いライトを点滅させながらつぶやいていた。
「お前さん、本当にユキの事が好きだったんじゃな。ロボットとして生ま
れてきて…その心をくれた真田くんに感謝するんじゃな。」
佐渡が熱燗をちびちびやっているとそこへ沖田が来た。
「佐渡先生、一つ肩の荷が下りましたな。」(沖田)
「いやいや、まだですよ。後何人、残ってると思いますか?島に、南部…
相原は先に片付くとして太田…これから幸せを掴まなくてはいけないあんた
の子供がわんさかいる…年齢的に真田くんを何とかしたいがなぁ…真田くん
は気難しいからなかなか心許せる相手、見つかりにくいだろう…」
佐渡が沖田にお猪口を渡す。
「いつも冷酒をグビグビいく先生が熱燗ですか…」
沖田が受け取り熱燗を注いでもらう。
「わしゃ、幸せモンじゃ…ヤマトに乗りこんで辛い事もあったがヤマトに
乗り込んだからあの子達に会えた…沖田さんには感謝しとるよ。」(佐渡)
「ははは、お礼は藤堂に言ってくださいよ。あいつが言ったんです。軍医なら
佐渡さんが適任だ、とね。何事にも動じず任務を全うしてくれるだろう、
と言ってね…それだけじゃない…“人”を育ててくれる、と…。まぁ佐渡さん
とは何度か一緒に航海した事あったし…」(沖田)
「そうじゃ…何度か一緒になったもんなぁ…古代守とも一緒になった…」(佐渡)
「守は…幸せになってほしかった。藤堂も辛い思いをしたな…」
沖田の視線の先にはユキと話す藤堂がいた。
「長官はずっとあの二人を見守ってきた…今日はおじいちゃんの気持ちで
参加しとるじゃろう…」
佐渡のつぶらな眼から涙が落ちた
「ユキ…」(母)
ユキが呼ばれて振り返ると両親が揃って立っていた。
「私たちは帰るわ。」(母)
「え?まだ途中よ?」(ユキ)
ユキと両親が話してるのを少し離れた所にいた進が気付きユキの元へ来た。
「進くん、私たちはここで失礼するよ。」(父)
「え…待ってください。途中なんですが…」
進も引き留めるが
「いいんだ、若い人だけで楽しく盛り上がるのもいいさ。おいしいものも
食べられたし…一番見たかった娘の晴れ姿も見れた…写真も撮ってもら
えたし…中座して申し訳ないと、長官に伝えておいてほしい。それと
先ほどの話、前向きに考えさせていただきます、と伝えておいてくれるか?」
進は何のことか分からなかったが母が
「もう一度子育てしてみようと思うの。あの少年…古代くん…いいえ、進くん
のように真っ直ぐな子に育てたい、って…。今戦争孤児を引き取って
育てる老夫婦が増えているの。“引き取りました”って顔をしていれば
突然大きな子供が来ても不自然じゃないでしょう?」
と、にこやかに言った。
「およその事は聞いたわ。不幸があった事も…」(母)
「お母さん…」(進)
「今すぐ、ってわけじゃなさそうだから…あなたたちも落ち着いたら一度
いらっしゃい。長官が一週間の休みを上げました、新婚旅行に行かせて
やってください、って言ってたわ。」(母)
「実家に来るのはいつでもいいからしばらくゆっくりするといい。」
ユキの両親はそう言うと“じゃぁ”と言って帰って行った。
作品名:宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 2 作家名:kei