宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 2
「大丈夫か?」(幕の内)
三人が301に行くと少年は子供用のパジャマに着替えベッドに横になっていた。
「古代、いいのか?ユキさんを置いて…」(南部)
「そのユキがこの子の様子を見て来てほしい、って…疲れたか?」(進)
「横になると随分ラクだと。やはり重力かもしれないな。こればかりは
慣れるしかないからなぁ…」(南部)
「そうだな……(三人を見て)ここは俺が見てるから三人とも戻って…ボウズ、
俺がいればいいよな?」
幕の内が少年に聞くと静かに頷いた。
「ほら、ボウズがそう言ってるし…進くんは主役だし…南部がいないと
会場、仕切れないだろう?ほら、行って…」
幕の内が三人を追い出す。
「僕、大丈夫だから…お姉さんにも大丈夫、って伝えて」
少年の一言で三人は301を出た。
「本当に大丈夫か?」
幕の内が心配そうに顔を覗きこんだ。
「うん…」
少年は何か思っているようだった。
「思った事、言っていいんだぞ?」
少年は深呼吸して話し始めた。
「僕のお兄様のお母様と僕のお母様、違う人なんだ。お兄様のお母様は
病気になっちゃってお父様に捨てられた。ディンギルの女の人は病気に
なったら家を追い出される…弱い者は省かれてしまうから…お父様は僕の
お母様を神殿に呼んで結婚した。お母様は結婚する相手がいたんだけど
お父様は“王”だから逆らえなかった。逆らえば殺されちゃう…けど、
お母様は嬉しそうだったよ。ディンギルで一番強い人と結婚できるって
事はディンギルで一番幸せになれる、って事だから…。お母様は僕に強く
なってディンギルを治めてほしいって言ってた…だけど僕は弱虫だった。
だからお父様は僕を置いて行ったんだ…。」(少年)
「大丈夫だよ、ここは強くなくても生きて行ける。優しい気持ちが大切なんだ
具合が悪そうなら病院に行けばいい…それだけの話だよ。それに艦長と
もう一人いたおじいちゃん…との話でボウズも新しい家族の所へ行く、って
なってる。一人じゃないよ…新しい家族とずっと地球で暮らすんだ。
おじさんも時々様子を見に行けるようお願いするから…。」
幕の内は不安な表情をしてる少年に言った。ヤマトに乗ってる間は誰かしら面倒を見てくれていた…だけどヤマトを下りたらクルーは新たな任務に着く…ずっと少年といられるわけではない。それは少年もわかっていたが一番不安に思っていた事だった…
(自分はどこへ行けばいいのだろう)
ディンギルが崩壊してヤマトのクルーと打ち解けて行けばいく程その不安が頭をよぎっていた。
「その家族はヤマトのクルーのお父さんとお母さんだから全部わかって
くれてる…」(幕の内)
「え?」(少年)
「相手さんも前向きに、って言ってくれてるから大丈夫だろう…これで心配な
事、なくなっただろう?さぁ寝なさい。おじさんも隣のベッドで寝るから…
あ、シャワーしてから寝るか…先に寝てろよ~」
幕の内はそう言うとシャワー室に向かって行った。
<ボウズは大丈夫だ。でも一人じゃかわいそうだから私が付いています。>
幕の内は南部にメールを送った。
作品名:宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 2 作家名:kei