宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 2
<宴>
扉が開くと青白い光が二人に当たり進とユキは何が起きたかわからなかった。…と、同時に温かい拍手に包まれた。進は言われたとおりに前に進とクルー達が待っていてくれた。
「古代、ユキさん、おめでとう!」(南部)
一斉にクラッカーが鳴る。二人は一気にみんなに囲まれた。
「ユキ、疲れたかい?」
余りに突然すぎてユキが外の風に当たりたいと言ったので頃合いを見て進は廊下からバルコニーに出た。
「ユキ、そのドレスすごい似合ってて…きれいだよ。今日のユキはいつもと
違ってどこか遠くにいる人みたいだ。」
ユキはベンチに座り進はバルコニーに肘をつきながらつぶやいた。
「私はいつも古代くんの傍にいるわ。」
ユキは立ち上がり進の横に立った。進はふと火星で亡くなったサーシアを思い出していた。
(そうだ、あの時初めてユキを見た時と同じ感覚だ…一瞬でキミに恋をして
しまった感じ…)
「まさか…中央病院ですれ違った美女が自分の奥さんになってくれるなんて
タイムマシンに乗って18の俺に教えてあげたいよ。あの時ユキは俺にとって
遠い存在だった。」
ユキは進の手に触れながらその言葉に耳を傾けていた。
「こんなに近くにいるのに…」(ユキ)
「考えてみたら最初の航海はずっとそうだったのかもしれない。手に触れては
いけないような…ユキは真っ白な存在で俺の手はどんどん血で汚れて…
だけどユキはそんな俺を包んでくれたんだ。何度この手に救われただろう
…ユキは俺を全力で護ってくれていた。俺はまだその何分の一も返せて
いないかもしれないし返せないかもしれない。俺は不器用だから…どう
返せばいいのか分からない…気の利かない男だから言葉でも言えないと
思う…けど今までの気持ちとこれからの気持ちは変わらない。いつか言った
と思うけど俺はユキがいてくれるだけでいい、って…。」(進)
「古代くん、いつか私に言ってくれたでしょう?“死ぬ事が裏切りだ”って。
私ね、すごく嬉しかったの。この世でそんな風に想ってくれる人って親以外
いないと思うの。だから古代くんも何があっても私の所へ帰って来て。
古代くんがちゃんと帰って来れる場所を作って待ってるから。」
空に月が浮かんでいた。少しいびつな月が寄り添う二人を照らしていた。
「あれ?主役がいなくなったぞ?」(南部)
南部が時計を見てキョロキョロし始めた。
「古代さんとユキさんならさっき廊下に出て行きましたけど?」
近くにいた太助が南部に教えた。
「そうか、ありがとう。」(南部)
「呼んできましょうか?」(太助)
「いや、大丈夫。俺が行くよ。」(南部)
「これから何かあるんですか?」(太助)
「お色直しが一度じゃつまらないだろう?」
南部はニヤっと笑うと廊下に出て行った。
廊下に出ると窓の空いたところが一カ所あった。南部は気配をさせないよう少しずつ近付く…それにしても二人の話し声が聞こえない。そろそろと近付くと反対に後ろから肩を叩かれた。びっくりして振り返ると進とユキが笑いながら立っていた。
「え…?あの扉……すっげぇ驚いたんですけど…うへぇ…寿命が随分縮まり
ましたよ。どこにいたんですか?」
南部が驚きの余り胸に手を当てて聞いて来た。
「いや戻ろうとしたら南部が出てくるのが窓の反射で見えたから別の扉から
こっそり出て驚かそうと思ったんだ。」(進)
「…まったく…あ、ユキさん、お色直しの時間です。悠輝が待っています
からこのまま一度戻ってください。ほら、古代連れて行ってやれ。さっきの
フロアーわかるだろう?」
南部はそう言うと“俺は戻ります”と言ってフロアーに戻って行った。進とユキは笑いながら南部を見送ると素直にエレベーターに乗り控室に戻って行った。
作品名:宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 2 作家名:kei