宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 3
それぞれの朝を迎えそれぞれが平和に感謝していた。その日の午後、進とユキは相原のしおりと共に新婚旅行へ向かった。
ディンギルの少年は藤堂と幕の内、アナライザーと共にユキの実家に来ていた。戦争孤児として戸籍を登録しユキの実家で養子として育てられる事になったからだ。
「ボク、お名前は?」
ユキの母が聞くと
「ルガール」
と答えた。ディンギルの王の名前はルガールⅡ世…誰も知らない事だった
「そう、ぼくはその名前気に入ってる?」(ユキの母)
少年は首を振った。僕を見捨てた親の名前なんて継ぎたくない…そう思っていたからずっと自分の名前は言わなかったし誰も聞かなかった。
「ボウズ…そうだよな、名前あるよな。ずっとボウズ、って呼んでて悪かった。」
幕の内がそう言うと
「ううん、ボウズ、って名前を付けてくれたのかと思ってた。だけどお姉さんは
ボク、って呼んでたし…みんな優しく声を掛けてくれるから名前なんて
どうでもよかったんだ。」
少年が正直な気持ちを話す。名前の事をどうでもいい、と言い切ってしまう事がユキの両親の心を打った。
(この子をこのままにしておけない…)
「ねぇ、私はね名前って親が子供に一番最初にあげるプレゼントだと思って
るの。とても大事なものなのよ。」(ユキの母)
「じゃあなんでお姉さんは雪なの?」
少年の素直な気持ちだった。
「あの子の肌が余りに白くて…だから雪、って付けたの。雪、ってね、冬…
寒い時期に降る氷の粒…みたいなものなんだけど水と違って積もる事が
あるのよ。そうすると辺り一面真っ白でね…とてもきれいなのよ。いつか
ボクも見る事が出来ると思うわ。」
ユキの母がにっこり笑う。少年はユキとよく似てる、と思った。そして自分もお母さんに似てたんだ、と思った。
「ふぅん。僕は?」
少年が聞いて来た。
「僕の肌はみんなと違う色…」(少年)
「肌の色で名前を付けるわけじゃないのよ?そうね…少し時間を頂戴?みんなで
いい名前を考えるわ。」(ユキの母)
それから幕の内が“散歩に行ってきます”と言って少年と席を外した。
「どうですか?森さん。」(藤堂)
「ちょっと難しい子の様ですね。はやり生活環境が違いすぎるせいでしょうか…
だけどあの子の素性を知ったら誰も面倒見てくれないですよね?言葉は悪く
なりますが地球を征服しようとした民族の生き残り…ですものね…たくさんの
人が亡くなりましたわ…。彼に罪はないけれど…」
母は少年を不憫に思った。
「長官、うちでよければあの子を引き受けます。」
ユキの父が力強く言った。
「男の子を育てた事がないので少し心細いですが進くんもいるし…」(父)
「承諾してくださいますか?」
藤堂が身を乗り出して聞くと
「えぇ…任せてください、と言い切れませんが…ただあの子をこのままにして
置けないんです。あの子は愛情に飢えています。自分の名前がイヤだと絶対
言わせないよう育てます。」
父が母を見て言った。
「式の帰りに話していたんです。どんな子供でも引き取ろう、と…。決めてたんです
ふたりで。」(父)
「ありがとうござます…そう言っていただけると本当に助かります。もし森さんの
所がダメだったら私が引き取るしかないと思っていたんです。ただあの子を
引き取っても彼が成人するまで私が…妻が生きてる可能性がどれだけあるか
を考えると…」
藤堂の考えは当然だった。ユキの両親は頷きながら聞いていた。
「こちらの提案としてアナライザーを常駐させます。幕の内を家庭教師として
週2,3日、向かわせます。月に一度健康診断させるために佐渡さんを派遣
します。まだ地球の重力に合わない見たいですがだるい時は休ませてあげて
ください。健康上ダメな事はないので…様子を見ながら…ただそのような状態
ですし学校に通うのも様子を見て団体生活に付いて行けるかを判断したい
と思います。知能指数は高いようなので勉強の遅れはすぐに取り戻せると
判断しています。とりあえず、地球人としての考えをしっかり教えて
ほしいんです。」(藤堂)
「わかりました。ご協力します。」(父)
「ところであの子の名前、どうしましょう…」
三人で悩んでいると父がすっと立ち上がった
作品名:宇宙戦艦ヤマト 完結編 アナザーエンディング 3 作家名:kei