続 さらば宇宙戦艦ヤマト 1
「俺も…ヤマトに残りたかった。」
ポツリと島が呟いた
「でも古代が…何十年で終わる命を永遠に続く命に代えに行く、って言って…
そしてこの戦いをきちんと伝えてくれ、って。俺らはあの戦いの生き残りとして
これからずっと言われ続ける。大きな大きな荷物を背負って生きて行くんだ。
でも俺はそれを放置するわけにいかないんだ。死ぬまでこの事を語りそして
誰よりも地球の事を思いながら死んで行ったヤマトの乗組員の事を誰ひとり
として忘れずに生きて行かないといけないんだ」
手に握られた二つの羅針盤がその重みを語っているようだった
島が自室に戻るとノックの音がした
「島、いいか?」
藤堂が入って来た
「用事があれば私から伺いましたのに」
月面基地には長官室がきちんとある。
「いや、いいんだ。それより怪我は?」(藤堂)
「えぇ、あちこち…打撲と…肋骨にひびが3本ありましたが大事に至る怪我は
ありませんでした。コルセットでしめてますんで大丈夫です。」
島がそう答えると
「そうか、よかった。本当によかった…沖田の息子をこれ以上私も失いたくない
と思っているんだよ。……島、辛いだろうがユキの最期を教えてくれないか?」
藤堂が静かに聞いてきた
「…ユキはガミラスとの白兵戦で敵のレーザーガンを直接腹部に受け負傷しま
した。ヤマトで佐渡先生のオペを受けましたが最後に収容された事と薬品と
血液が不足していた事、戦闘が時間を置かず頻繁だった事が彼女の体の
回復を妨げたのでしょう、最後無理して戦闘に参加し…第一艦橋付近に被弾
した時の衝撃で自席から飛ばされたショックで…最期古代の腕の中で息を
引き取りました。私は操縦かんを握っていたので直接みてはいませんが
後から聞くとそうだったようです。」
藤堂は涙をこらえきれず拭きながら島の話を聞いていた
「退艦するときにユキの亡骸に挨拶しました。まるで眠っているようでとてもキレ
イでした。今にも“よく寝たわ”と言って起きてきそうな感じでした。
二人は今やっと誰にも邪魔されず幸せだと思います。いつも自分の事は後回し
で人の事、地球の事ばかり優先してて…でもそれが古代とユキなんですよね。
…あれ…すみません…さっき山本のところでさんざん泣いたのに…俺、こんなに
自分が涙が出る人間だと思わなかったからびっくりしちゃってるんですけど…
古代もあれだけの病気を克服してやっと“ただいま”って帰った時“お帰り”って
言ってもらえるところを見つけたのに…って思うと……あいつには帰るところが
なくて…守さんしかいなくて…」
島は嗚咽で何も話せなくなってしまった。藤堂がそっと島の背中をなでる
「あいつ…ヤマトに乗ってからの方が寂しがり屋になっちゃったんですよ。ヤマト
に乗ってると家族と一緒にいるみたいだ、って言ってました。そうなんです、俺
ら、家族と同じなんです。誰一人掛けちゃいけないんです…それなのに…」
「すまない…島…本当にすまない。しばらくここにいてゆっくり休んでほしい。」
そう言うと藤堂は
「私もしばらくこっちにいるから…とにかくゆっくり休んでくれ。すまなかった」
島の部屋から出て行った
島はしばらく茫然としていたが疲れがたまっていたのだろうかベッドに横になるとうつらうつらし始めた
<古代くん…>
<ユキ…>
島は夢を見ていた。ユキの純白の花嫁姿に見入っている進の姿…
<お~い、古代、惚れなおしちゃうだろ?>
島が叫んだが進は無言だった
<外野の声は何も聞こえないらしいな>
加藤が横に立っていた
<ユキさんきれいですね。この日を迎えられてよかったですね。>
相原がカメラを抱えつつ涙でボロボロだった
<新居、まだ家具入っていないらしいですよ?>
太田がどうでもいい情報を話すと
<仕方ないな…うちにある使わない家具送りつけちゃいましょうか?>
南部が“アンティークがいいかな?それとも…”とブツブツ…
場所はヤマトの甲板だった。秘密ドッグに係留されていた。
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 1 作家名:kei