続 さらば宇宙戦艦ヤマト 1
「康雄…」
南部の部屋にも両親がやってきた
「父さん、母さん…なぜここに?」
南部の目は真っ赤で眠っていないのがすぐ分かった
「長官から連絡もらってな…怪我はないのか?大丈夫か?」
南部は電気も点けずソファーに座ってぼんやりしていた。間接照明が付いているのでそこにいる事はわかるが目が真っ赤なところまでは見えない。
「ちょっとした打撲と擦り傷くらいだよ。心配かけちゃったね。黙って出航したからね。」
南部がバツ悪そうに言うと
「実はヤマトの備品を運び込んだのはうちだよ。長官から直接電話があって事情を
聞いてね…お前も乗るだろうと思って予定より多くのものを積んだ。…だから事前
に判ってたんだ。」
「そうか…父さん知ってたんだ。」
南部はちょっと力が抜けた
「お前の力に…少しでもいいからなりたかったんだよ。そして康雄が無事戻ってきて
くれたらいい、とそう願ったんだ…でもな、違ったよ…」
南部は父親の顔を見た。初めて見る父の悔しそうな顔…
「康雄の乗る艦だけは絶対に戻ってこれる艦を造りたかったんだ。ヤマトが無事に
戻ってくれば康雄も戻ってくる…と。でも、ヤマトの乗組員はお前だけじゃなくて
全員息子のように思えてならなかった…ヤマトも南部重工がほぼ関わった戦艦
だ。絶対戻ってくる、と思っていたのに…」
南部は父の涙を初めて見たようなきがした。いつも部下に囲まれててきぱき仕事をこなす姿しか見た事がなかったようなきがするのだった
「父さん、仕事は?」
南部はちょっと気になって意地悪な事を聞いてしまった、と一瞬後悔したが
「お前の無事の確認が私の一番大事な仕事だよ」
そうはっきり言った
「義一…」
年老いた母が相原の部屋を訪ねていた
「かあさん…」
相原はずっと涙が止まらず泣きっぱなしだった
「辛い戦いだったね…お帰り…。長官から連絡もらってね…」
「ただいま…疲れたでしょう?ベッドで寝たら?」
高齢の母を労う相原だった
「いや、私は大丈夫だよ。それより…ほら、おにぎり作って来たんだけど…ひとつ
食べない?元気でるよ?」
母は相原におにぎりをひとつ渡した
「ゆっくり噛んで…」
そう言うと部屋にあるポットを見てお湯が入っていたので持ってきたティーバッグで日本茶を入れた
「食欲がなくても食べないとね。」
母は準備された朝食に手を付けない息子に“ほら”とお茶を渡した
「…おいしいよ、母さん…でもね、死んで逝ったみんなはもう食事も出来ない…
何も出来ないんだよ…一緒に訓練をずっとずっと一緒にしてきたのに…
イスカンダルに行った時さんざん迷惑かけて助けてくれた事もあった…何ひと
つ返せないまま…逝っちゃったんだよ…」
相原がおにぎりを持ったまま泣き崩れると
「だったらお前がその人たちの分も生きなきゃ…その人の分も勉強してその人が
何をしたかったのか、を考えて行動しないと…お前を通していろんな事見るかも
しれないだろう?その人たちのためにお前は生きなきゃ」
母も辛いだろう泣きながら
「私にはむずかしいこと判らないけどヤマトのおかげで今生きてる、って事は事実
で…一生懸命生きないとその人の価値も下げてしまう事になるんだよ」
そう言って諭した
「かあさん…」
「泣いてばかりいたらヤマトが泣くよ。ほら、食べなさい。」
相原は泣きながらおにぎりを食べた
「起きてるかい?」
太田の部屋にも両親がやって来た
「お父さん、お母さん…なぜここに?ここ月だよ?」
太田も珍しく電気は間接照明だけにして静かにソファーに座っていた
「長官の配慮でね…地球じゃ落ち着かないだろうとの事で月基地に呼ばれたのさ」
「そうなんだ…ただいま…ごめん、座ったままで…ちょっと立つのもしんどくて…」
太田は足のじん帯が延びていたらしく手術を翌日受けるようになっていた
「お前の足も聞いたよ。無理しなきゃすぐ元に戻るって。」
太田はなんとなくそれを聞いていた
「俺の脚は元に戻るけど死んで逝ったやつは元に戻らない…」
太田は静かに涙を流していた。太田の両親は何も言えず横に座り肩をそっと叩く事しかできなかった
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 1 作家名:kei