続 さらば宇宙戦艦ヤマト 2
「ごめん、父さん…わからないわけじゃないんだ。違うんだ…地球じゃ遠いんだよ
ヤマトの少しでもそばにいたいんだ。古代のそばにいてやりたいんだよ。
あいつが“もういいよ、地球に帰って”って言うまで俺はここにいたいんだ。」
島の眼から涙があふれてきた
「少し一人になりたいんだ。あいつと話したいんだよ。頼むから…」
島はそう言うとベッドに潜り込んでしまった
「太田…」
いつも島が先に展望室にいるが今日は太田が先客だった
「あぁ、島か。いつもながらここはよく星が見える。地球は見えないけど。」
太田は視線を島に向けることなくそうつぶやいた
「ヤマトの残骸は残ってるんだろうか?テレサは反物質世界の人間だろ?跡形も
なくなる、って聞いたんだよな。」
島は黙って聞いていた
「都市帝国の残骸はきっと地球防衛軍が今後の資料にするといろいろ探るだ
ろうけどきっと長い年月がたてば太陽の引力で引き寄せられて燃えちゃうだ
う?」
太田はそう言うとそっと島にメモを渡した
「太田…これは…」
「そう、座標…つい…」
島はそのメモを見つめてポケットに入ってる羅針盤を握りしめた
「行くか」
島がそう短くつぶやくと
「行こう…俺たちは今フリーだからな。」
太田が嬉しそうににっこり笑った。
「みんなも誘うか?」(島)
「もちろんだよ。」
太田はそう言って携帯を取り出すととりあえず展望室に来るように伝えた
「大丈夫か?」
南部が島に聞くと
「大丈夫だ。長官からOKもらってるんだ。」
そう言いながらドッグにとめてある救命艇に乗り込んだ
「島、障害物が多いから気を付けろ、一応迂回ルートを用意してある。これは
救命艇だから機敏性に欠けるが…どうするか?」
南部の助けで太田はサブシートに座りなおすと島に伝えた
「そうだな、急ぐ旅じゃない。ゆっくり迂回ルートで行くか。太田、準備したルート
を読み込ませてくれ。」(島)
「了解」
太田は水を得た魚のように救命艇のコンソールを叩いて座標を隣の操縦席に送った
「長官、準備出来たようです。」
伊藤が長官室で一緒にモニターを見ていた
「そうか、私も一緒に行きたいが彼らの心の整理のためにも彼らだけで行くのが
一番いいだろうと思って遠慮したよ。ゆっくりしてくるがいい…そしてヤマトと
心おきなく話すといい…島と話せるか?」
「少しお待ちください。相原と連絡取ってみます」
伊藤は長官室の隣の秘書室から連絡を取った
「相原、島に繋いでくれるか」
<了解です>
しばらくするとモニターに島が現れた
「すまんな、出発前の忙しいところで」
<いえ、長官、いろいろありがとうございます。>
「いや、私の分までゆっくり話してきてくれたまえ。」
<了解です。>
月面基地も地球からの定期便が来る以外はエアポートに着く便もなかったので長官は特に戻りの時間を決めていなかった
「出航準備完了です」
太田が島に伝えると
<では長官行って参ります>
全員が敬礼して通信は切れた。
救命艇は静かにドッグを出航した
18名の乗組員は月面基地に向かい敬礼をすると無言で救命艇から見える宇宙空間を無言で見つめていた。
「山本、大丈夫か?」
相原が声を掛ける
「あぁ…大丈夫さ。なぁ、相原…」
山本がじっと窓の外を見ている
「古代はユキと一緒かな…ユキは笑ってるかな…」
山本の眼から涙がこぼれる
「…きっと、一緒だよ…俺たちを絶対どこかで見てるはずさ。」
相原もインカムを付けたままヤマトが消えた一点を見つめた
いつもなら数分の距離だが救命艇のボディーの強度が弱いので障害物に当たった時どこまで耐えられるかわからないので迂回ルートをとった。速度も遅く1時間ほど時間を有した
島が救命艇を止めると太田がエンジンを止めた
「着いた…ここがヤマトが消滅した場所だ」
島が立ち上がりクルーに向かって告げた
そこには何もなかった。反物質と触れ合うと一瞬にして全てのものが消滅してしまう、というのは本当だったのだ。
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 2 作家名:kei