続 さらば宇宙戦艦ヤマト 2
「ヤマト…古代…迎えに来たぞ。ユキも一緒に帰ろう…」
島が宇宙空間に向かってそうつぶやくとどこからともなく嗚咽が聞こえてきた
「古代…帰ろう、そこは寒いだろう?」
山本もそうつぶやく。涙があふれているのを拭こうともしない。相原はインカムを外しただひたすら宇宙空間を見て泣いている。
誰もなにも話せなかった。
すすり泣きしか聞こえない救命艇の中で機械音がした
“仲間だから”と積んできたアナライザーの頭部が光りだした
「コラ、古代、ゆきサンハ俺ノ彼女、クッツクナ」
アナライザーの突然の言葉に全員が驚いていたが
「オイ、やまとヲドコヘ操縦シテ行クンダ?俺モ乗セテ行ケ」
手足のないアナライザーはもどかしそうにライトをいくつも点灯させながら叫んだ
「真田サン、俺ヲ作ッタンダカラ責任取ッテチャント連レテケ」
心なしか寂しそうにつぶやき始めた
「ナンデソッチニ行ケナインダ…」
島は涙を拭くとアナライザーの横に行った
「アナライザー古代とユキは一緒にいるんだな?」(島)
「モウ、ズットクッツイテ離レナインデスヨ。俺ニ喧嘩売ッテイマス」(アナライザー)
「他に誰がいるか見えるか?」(島)
「やまとニ乗ッテイルヤツラデスカ?」(アナライザー)
「そうだ、喧嘩してるやついないか?」(島)
「イマセンヨ、ミンナ仲良クコッチ見テマス。真田サン、先生、ミークンハゆきサンガ
抱イテイマス」(アナライザー)
「辛そうな奴はいないか?」(島)
「ミンナ笑顔デコッチミテ手ヲ振ッテイマス。サァ手ヲ振リマショウ」
アナライザーが両手がないので振れないでいると
「分かった、向こうか?」
島があの空間を指さすと
「ハイ、今出航ノ準備中デモウスグいすかんだるヘ向カウトノ事デス」
島は進が夢でイスカンダルへ向かう事を思い出した
「ア、今ゆきサンガ着替エテ出テキマシタ。真っ白ナどれすヲ着テマス」
珍しくアナライザーが白い光を点滅させた。相原がなんとなく宇宙空間をカメラに数枚収めた
「待ッテ…俺モ乗セテクレ!先生、置イテケボリニシナイデクダサイ」
アナライザーが焦りだし赤と青の点滅を繰り返す
「待ッテ…!」
そう叫んだ瞬間アナライザーは再び動かなくなってしまった
「アナライザー…お前が見たものは一体何だったんだ?真田さん…説明して
くださいよ。」
南部がアナライザーの頭部をなでながらつぶやくと大粒の涙がアナライザーを濡らした
「まさか本当にお前も乗っちまったんじゃないだろうな」
太田がペシっと頭を叩いた
「俺さ、夢で古代がヤマトに乗ってユキと二人でイスカンダルに行くって、のを
見たんだ。ユキは真っ白なドレス着て…すごいきれいだった。」
島がアナライザーを操縦席から見てそうつぶやいた
「二人とも幸せそうで…加藤もいた…」
島はそのまま操縦席に伏せて嗚咽を漏らさないように耐えていたがとうとう耐えきれず
「戻ってきてくれ…イスカンダルにはもう行かなくていいんだ。こっちでゆっくり
しろよ。俺、寂しくてしょうがねぇ…」
それっきり島は何も言えなくなってしまった
「みんな、いいか?出発するぞ?」
何時間そこで過ごしたのだろうか、長い夢を見ていたような感じで18人は月面基地へ戻るためにコースターンした。相原が基地と連絡を取りドッグの到着時刻も決まった
帰りももちろん迂回ルートで誰も話そうとしない
太田も無言で基地へ戻る自動操縦のデーターを島に送った
「いつも助かったよ、太田…お前のアシストは本当に助かってた。ありがとう」
不意に島が太田へお礼を言ったので
「やだな、島…もう、終わり、見たいな言い方よせ…俺はみんなと一緒に島と一緒
にまだまだ飛ぶんだ…誰よりもヤマトの近くにいたいんだ。」
太田が今までになく真剣な表情で島を見つめた
「太田…」
島が視線をさげる
「そしていつかこの18人でイスカンダルへ行きましょう。その時は通信衛星
積んで地球とイスカンダルの架け橋になりましょう。」
太田はそう言うとニヤっと笑った
「俺たちは生きてる…ヤマトのクルーの分も生きなくちゃいけないしあいつらの
分までいろんな事を経験しないといけないんだ。」
太田はさっぱりした表情でそう言った。
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 2 作家名:kei