続 さらば宇宙戦艦ヤマト 3
「ほら、俺の番は終わったから…南部!次はお前だ!!」
島が調子に乗って南部を指名した
「えぇ~俺??」
南部が逃げようとすると
「いつもはお前がいじる方だけど今日は違うぞ!」
相原は訓練予備生だった時の頃を思い出していた。
島と加藤が古代をイジリまくって普段は静かな山本もゲラゲラ
おなかを抱えて笑ってた訓練の“く”の字も何もなかった頃…
(古代…帰って来てくれよ…ユキさんと一緒に…みんなを連れて
ヤマトに乗って…僕、第一艦橋のクルーのそろってない地球で
ちゃんとやっていけるか不安だよ…)
相原が泣きそうになると
「相原、次はお前だからな、用意しておけ!」
島が頭を何度もはたくようにバンバン叩きながら言った
「ほら、南部!オヤジにつつかれてたんだろ?」(山本)
「え?そうなの?さすが南部財閥!」
第二艦橋にいた二人のうち一人が叫ぶ
「で、実際どうだったのよ?」
知ってるくせに太田がつつく
「あぁぁぁっぁぁっうるせぇなぁ!ったくよぉ~こう言っちゃぁなんだけどよ
世の中の女で“南部”の苗字に無反応だったのユキさんぐらいだったんだよ。
だから、ってわけじゃないけどちょっと面白くなくてちょっと声掛けたんだよな、
“森さん、ちょっといいですか?”って。そしたら何て言われたと思う?」
南部が面白おかしく、でもちょっと複雑な顔で
「具合悪いなら医務室に行ってくれる?…って。普通さぁなんでもなさそうな人間が
声掛けてきたら“お茶”だと思うだろ?“医務室”だぜ?ありえねぇだろ。
それでも同じ第一艦橋、って事で食事する機会は結構あって二人っきりになる
事もあったんだけど“俺の事知りたい”って感じじゃないんだよな。今までだと
普通を装いながら“私”をアピールする女ばっかりだったのに全くそれがないんだよ
俺ホントびっくりしたんだ。で、俺思ったの。自分からアピールする事初めてだ、
ってさ。気付いたらユキさんと一緒になるために休憩時間は何処にいるのかリサー
チしたりしちゃったもんな。今まで逆だったのに…だぜ?偶然を装って食事したり
お茶したり…いろいろしたけど全く脈なしでよぉ…かなりショックだったぜ?
でもさ“おかしい”って思いだしたんだ。やたら真田さんといる時はリラックス
してるんだよ。で、島と古代といる時はちょっと女の子らしかったんだ。その時
思ったんだよ。“真田さんは相談役でユキさんの相手は島か古代だ”ってね。
だから途中から高みの見物することにしたんだよ、これでいいか?」
最後はちょっと投げやりな南部だったが
「じゃぁ島じゃなくて古代、って気付いたのはいつ?」
太田がマイクを向けるふりをして聞くと
「んぁ?太陽系を離れる時かな。やたら古代の事気にしててさ…“私、生活班なのに
乗組員の事何も知らなくて古代くん傷つけちゃった、って泣いてて…俺さぁ今思う
とすげぇアシストしちゃったなぁって思ったけどユキさん慰めてあげたんだよな
“そのユキさんの気持ち古代わかってますよ、何も言わなくても次に会う時は
あいつ普通の顔してますよ”って。古代はずっとその環境だったから家族がいな
い事いつまでも引きずるやつじゃない。だからきっと次の日は普通の顔して普通に
仕事をこなすって思ってたんだ。その通りだったからユキさんも安心してたけど。
心の中じゃ俺の心が寒いぜ、って思ったけどよぉ…」
南部は当時を思い出して本当に悔しそうだった
「オヤジもなんでユキさんみたいな人連れてこないんだって何度も言われたよ
オヤジは政府のパーティにもよく出るからユキさんの事よく見てるんだよ。
だから余計逃がした魚は大きい、じゃないけど…もし、ユキさんを俺が連れて
帰ってたらユキさんを社長に、って言い出しそうだったよ。俺、立場ないよなぁ」
仮にも南部財閥の御曹司…
「ははは、そうだったんだ、確かに逃した魚は大きい、だな!」
そこにいた全員大笑いだった
「ほら、相原、お前の番だ!!」
南部が叫ぶと
「僕?僕?えぇぇぇ~ちょっと憧れてただけですよ。ユキさんと、なんてとんでも
ない事ですからね。僕じゃ不釣り合いですし…」
ちょっと声のトーンが落ちた
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 3 作家名:kei