続 さらば宇宙戦艦ヤマト 3
山本が照れ笑いを隠さずにそう言った
「あれだけキレイで才女と来たら誰だって…なぁ。なんであんなお子ちゃま古代
相手なのか…ヤマトの7不思議の一つだと思うぜ?」
「確かに…7不思議だな。そうか、山本もそうだったんだ。」(南部)
「お?“も”ってことはやっぱり…!」
山本が茶化すように言うので南部はとうとう吐き出すように話し始めた
「そうですよ、ユキさんに一目ぼれですよ。こう言っちゃぁなんですがユキさんは
時代が違えば絶対ミスコン出られますよ。それも日本代表なれますって。
あれってすごい基準が難しいんですよ。キレイなだけじゃだめなんです。
性格も知識もないとダメなんですユキさんは完璧ですね。」
「すげぇ詳しいじゃん」
山本が感心して言うと
「島にも話したんだがオヤジがミスコンの審査員をやってて何度か会場に行った
事があったけどみんな化粧が濃くてどんな顔してんだかわかったもんじゃない。
でもユキさんはスッピンであれだからな。時々パーティーで一緒になったけど
少し化粧するだけで周りが一気に華やかになるからな…何度オヤジが口説け、
ってけしかけて来た事か…」
南部も山本も手が止まっていた
「でも…ユキさんだからあの古代も落ち着いたんだよな。」
南部は作業を再開した
「そうだな…あの攻撃的な性格を丸くしたのはユキさんだよな。」
しばらく作業をして二人は加藤の部屋に手を合わせると二手にわかれて次の部屋向かった
「さて…古代。お前ならどうする?」
島は展望室からあの空間を見つめていた
「俺はどうしたらいい?」
すでに涙で星は見えない
「あの時…うなずかないでお前と一緒に行けばよかった…頼む、今からでもそこへ
俺を連れて行ってくれよ…やっぱりこっちは寂しいよ。」
誰もいない寒々しい空間で島は泣いていた
「少しずつクルーも地球へ戻って行ってる。大丈夫か時々様子をみてやってくれな。
みんなボロボロの体と心で戻って行った。拠所のヤマトもいない…
あぁ、そうだ…今どこを飛んでいる?エンジントラブルはないか?」
島はぐっと重くなると言う事を聞かない操縦かんを思い出していた
「アナライザーがいなくて不便だろ?アナライザーは俺が預かったからユキの
スカートめくりなくなって安心してるだろ?」
島が静かにあの空間を見つめていると
「部屋にいなかったからここかな、と思って…やっぱりな。」
遺品の整理を終わらせて戻ってきた南部が島を探しに展望室へ来た
「終わったのか?お疲れさんだったな。」(島)
「あぁ、全員だと大変だったよ。明日地球にいる家族のもとへ送るよう手配して
きた。意外な事に加藤の部屋がすごいきれいだったよ。あの洗濯物の海を想像
してたから山本と驚いてたんだ。」(南部)
「そうか…加藤もそれだけ覚悟してたんだ…」
島は大きなため息をついた
「悩んで…乗らなかったら俺はどうなっていたんだろう…」(島)
「島はきっと最後絶対乗るようになってたさ。ヤマトの操縦かん人に預けるのイヤ
だろう?理由はなんであれ…俺達は信じてた。絶対来る、ってな。」
南部はそう言って“な”と進に話を振るようにあの空間に向かって声をかけた
「すみません…」
翌日田中が地球に戻りたいと申請してきた
「謝るなって。いつ戻るかは自由だって言ってただろ?いいんだよ、田中の気持ち
の整理が出来て地球の家族のもとへ戻りたい、って思えるようになったんだ
から。…俺はもう少し古代のそばにいたいんだ。あいつは帰れって言ってると
思うんだけど俺の踏ん切りがつかなくてな…だから俺の自由でここにいるだけ
だから…気にするなって。辛いと思うが…ヤマトの事、忘れないでくれ。
辛い訓練ばかりだったが古代の事恨まないでくれな。」(島)
「島さん、俺が生きて帰れるのは古代さんのお陰ですよ。あの厳しい訓練が
あったから生きて帰れるんだと思っています。訓練中はなんでこんな訓練受け
なくちゃいけないんだ、って思いました。だって月基地での訓練より厳しいん
ですから。」
田中はそう言って笑った。
「だからまた地球で頑張ります。一足先に帰って皆様の足場をかためておきます。」
「…頼むな…」
二人はがっちり握手をすると田中は島の部屋を後にした
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 3 作家名:kei