続 さらば宇宙戦艦ヤマト 5
「古代は幸せ者です。」
島は涙を拭きながらそう言ってユキの父に“ありがとうございます”と言いながら手紙を返した
「実は私も手紙を受け取っています。私だけじゃなくて同期のメインクルーは全員もらい
ました。手紙には一人一人に思う事と古代を頼む、と辛いだろう体に無理して…
でも…私たちは今も繋がっています。ユキは…古代とこの宇宙のどこかで生きていま
す。飛べば…絶対逢いに来てくれるとそう…信じています。」
ユキの父は目頭を押さえて聞いていた
「森さん、実は近いうちに英雄の丘で今回の戦いで散って逝った仲間の慰霊祭を行う
予定です。ご出席願えませんでしょうか。」
島は様子をうかがいながら聞いた
「…慰霊祭?」(ユキの父)
「はい…でも今回の慰霊祭は特別なにするわけではないです。ただこの戦いを無意味な
ものにしないようそれを確認するものです。…英雄の丘に…みんな眠っています。
長官にお願いして古代の横にユキさんのレリーフを置いてもらいました。ずっと一緒で
すよ…ふたりは。」
島の言葉にユキの父は号泣してしまった
「そうか…ふたりはこのさきもずっと一緒なんだね。」
「はい」(島)
「妻の体調が良ければ二人で参加させてもらうよ。ぜひ連絡をください。」
ユキの父は涙を拭いた
「いつまでも泣いていたらユキが悲しんでしまう、ってよく妻と話すんだ。」
そう言って笑うと
「ご存じの通りユキは私たちの反対を無視して家を出てしまった。ヤマトに乗り込むのも
私たちは反対した。振り返ると私達夫婦は自分達の価値観をユキに押し付けようと
して彼女を理解しようとしなかった。せめて最期くらいは笑顔で送出したいと思ってる
んだよ。」
そして島を見つめて
「この戦いが最後になるといいな。そしたら島くんも平和になった地球でいい人を探せ
るようになるしな…あ、すでに決まった人がいたのかな。」(ユキの父)
「いえ…私にはまだ…」(島)
「…そうか。まだ若いもんな。あの子達が早すぎたんだ…これからじっくりでいいんじゃ
ないか?島くんの事だからきっといい人が現れるよ。」
ユキの父はそう言うと立ち上がり
「じゃぁ連絡待ってるから。」
そう言ってマネーチップをテーブルで通し精算を済ませてしまった
「あ、すみません」
島が立ち上がると
「呼び出してすまなかったね。じゃぁ妻が待ってるから…(店員を捕まえて)この人に
コーヒーのお代りを…」
と言ってもうお代りの分の精算済ませると右手を挙げて出て行ってしまった。島はユキの父の背中にありがとうございます。といいながら頭を下げた
「長官、ユキのお父さんと話しました。」
島はその足で司令部の喫茶室で藤堂と話をしていた
「そうか…様子はどうだったか?」(藤堂)
「奥様も体調も随分良くなったそうです。慰霊祭に出席していただける、との事です」
島が嬉しそうに伝えると
「…そうか…よかったな。」(藤堂)
「はい…ユキのおかげです」(島)
「ユキの?」
藤堂は不思議そうな顔をした
「ユキが古代に書いた手紙が荷物の中に紛れていて…」(島)
「…そうか。」
藤堂が安心した顔をすると
「島、ありがとうな。あ、そうだ慰霊祭の時の艦載機練習するならメールでいいから
申請するように伝えておいてくれ。」
そう島に伝えると“職務に戻る”と言って喫茶室を出て行った
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 5 作家名:kei