続 さらば宇宙戦艦ヤマト 7
食事会は順調に進みデザートを食べ終えた者から自由にフロアーを移動していた
「あの時最上階は来なかったからな…いい眺めだ。」
島が南部とカクテルを夜景を眺めていた
「あの辺り…だよな。藪達が遭難したの…」
崩れかけたダイヤモンドの山脈が見える
「明日、ちょっと行ってこようと思うんだ。」(島)
「そうだな、一緒に行くよ。」(南部)
「いいのか?」(島)
「だって…藪達が一生懸命機関室を守ってくれたから俺達はここまで来れたんだ。
あの時はどうして、って思ったけど…今となってはそんなこともあったよな、って
思えるんだ。」(南部)
島はじっと山脈を見ている
「…南部…メインのやつは知ってるだろ?声掛けたら一緒に行くんじゃないか?」(南部)
「そうだな、きっと行く、って言ってくれるだろうな。後で声掛けてみるよ」(島)
二人は静かにグラスに口を付けた
「守…」(幕の内)
「幕さん…すまん、気付いていたんだが…」(守)
「いいさ、いろいろ…聞いたんだろう?」(幕の内)
「あぁ…」
守は手に持ったビールを一気に飲んだ
「どうしようもできない時お前よく一気飲みして忘れようとしたよな。でも酒に強くて
結局忘れられないんだ。で、悪酔いしてたな。」
そう言って幕の内は笑った
「よく覚えてるな」(守)
「あぁ、実技に自身はないが記憶力は自信がある。」
幕の内は胸を張った
「進くんは立派な艦長だった…イスカンダルの帰りだって艦長はほとんど寝たきりで
森さんが時間があれば付きっきりだった。本当によくやってくれる、と佐渡先生も
感心してたよ。生活班は忙しいからね…いつ寝てるんだろう、と言うぐらい森さんは
忙しかった。だけど誰よりもヤマトの乗組員の事を把握してていつも誰かしらに
声をかけていた。森さんはあの通りの人だからモテてねぇ…復路で何人にも告白され
たんだよ。…どうして分かったか、って顔してるな。顔は笑ってるけどとても悲しそ
うな顔をして笑ってるんだ。告白されるとね…人間の心理として告白される事は
ほとんどの人は嬉しい事なんだ。でも森さんは一番好きな人が告白してくれない
から自分に魅力がないと思って…告白されて悲しい顔は出来ないとでも悲しくて
複雑な表情になってしまうんだ。で、そのまま厨房に入ってきてしばらくぼんやり
して気持ちの整理をしてたんだ。だけど…復路にデスラーが追いついてきたんだ。
その時白兵戦になってガミラスは放射能ガスを送り込んできた。ヤマトにはコスモ
クリーナーDがあったけどまだテスト前で始動出来なかった。ガスが充満してきた時
急にガスが引いて行ったんだ。後から聞いたんだが森さんが…テストもしてない
コスモクリーナーDを作動させてその時の酸欠状態で事故死したと…」(幕の内)
「死んだのか?彼女が?」(守)
幕の内はうなずくと話を続けた
「進くんの落胆ぶりはそりゃあひどくて…誰も声をかけられなかったよ。いつも森さん
の遺体の安置された部屋にいて…」(幕の内)
守は何も言わず聞いていた
「結局仮死状態だったんだがな…地球を目前に沖田艦長が亡くなった時…ちょうど
その頃森さんが息を吹き返してるんだ。そこでやっと二人はお互いの気持ちを確か
め合う事が出来たんだが実際ちゃんと進くんも言えてなかったらしくてね…進くんは
放射能除去作業でそれからしばらくヤマトに乗り込んで地球全体を回っていたし
森さんは森さんで仮死状態が長かったから、と強制的に検査入院させられちゃって
結局ちゃんと話ができなかったんだよね。進くんはお前と違って本当に奥手だった
よ。その事で真田とよく話したがな…真田もそこまでは指導出来ない、って言ってた。
真田も…妹のようにかわいがってた森さんと弟同然に思ってた進くんが一緒になる
ってすごい喜んでたんだ。後…3日だったんだ。俺も休みを取って結婚式に参列する
予定だった…ところがヤマトに乗りこむようになって…壮絶な戦いだった。何度か
森さんに食事を届けた事もあったがとてもじゃないが固形物は食べられない状態
だったからペースト状にして…すまんな、そんな事話すつもりじゃなかったんだが…」
幕の内がそう言うと
「いや、そんなことない。」(守)
「…そうか?なんだか最初にお前が連れてきた小さな坊主がさ、あんな大きな戦艦の
艦長代理としてあの大航海を終えた時は立派になったな、って思ったよ」
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 7 作家名:kei