続 さらば宇宙戦艦ヤマト 8
一週間ほど前…
「島です」
島はユキの父親に携帯で連絡を取っていた
〈あぁ島くん、元気かね?〉
「はい、少し地球を離れていたので…その後奥さまの体調はいかがでしょうか?」
〈あぁ、今は前と変わらない生活をしているよ。〉
父親の声も生き生きしていた。
「あの、地球防衛軍から頼みたい事がありまして…近いうちに長官とお伺いしたいと
思っているんですがご都合いかがでしょうか?」
父親は?という顔をしたが
「極秘の事なので電話で伝えられません。森さんのご都合のいい時にお伺いします。」
島の言い方に普通じゃない感じが読み取れたので
〈…そうですね、妻はいつもいるのでいつでも大丈夫だと思うのですが…私の仕事が
今週の金曜日休みをもらえるようになっているので…その日でいいですか?〉
「…金曜日…はい、時間は午前中でいいですか?」
〈はい。〉
「では長官とお伺いしますのでよろしくお願いします。」
島はそう言うと携帯を切った
サーシアが地球環境に合っているか…それを調べながら里親を世話しなければならない。2,3日経った様子で地球の環境に不自由してる様子はない。食事はYUKIの中で合っているのは確認済みだ。余り長く長官宅にいれば夫人に負担がかかる…島はサーシアがいなくなった時の夫人の事を心配していたのだった
島は通信機を取り相手が出た後敬礼すると
「長官、今度の金曜日の午前中、森さんに会う約束を取り付けました。」
そう告げた。藤堂はスケジュールを相原に確認させると
〈ご苦労だった。では9時に出発するのでロビーで。〉
敬礼しながら通信を切った。藤堂の顔も心なしか寂しそうだった。島もサーシアの事を思うと複雑な心境だった。でもあの心の優しいサーシアの事だからきっと理解してくれるとそう信じた。
不意に島の携帯が鳴った
〈島さん?〉
不安そうなサーシアの声だった。島は画像をONにした
「どうした?今日は薩摩先生と面会日だったろ?何かあったか?」
島はつとめて明るく話した。最初の別れが近付いてる事をサーシアは知っている
「…寂しくなっちゃったか?」
島の一言にサーシアの大きな瞳から涙がポロポロ落ちてくる
「そうか…」
島はちょっと時計に目をやると上がるには少し早いが
「ちょっと夕食でも一緒に食べるか?」
と言った。サーシアはどうしようか悩んでいたが
「おばあちゃんに“島さんとご飯食べに行くから”って言って。」
島がそう言うとサーシアは小さくうなずいたので
「じゃぁ出かける準備して。30分くらいで行けると思うから」
島はそう言って携帯を切った。そして
「太田、ちょっとでかけてくる。ここ、任せていいか?」
太田は後ろで全部聞いていたので
「了解です。サーシアちゃん、元気なさそうでしたね。」
と言った。
「長官の所…そろそろ、って感じて不安なんだろうな。地球にひとりでいる時点で
すっごい不安なはずだ…。太田も時々連絡取ってやってくれな。」(島)
「そうですね。おいしいものの写真とか送ったら少しは元気出るかな」(太田)
「そうだな、甘い物とか喜ぶかもな。写真じゃなくて連れて行ってやってくれよ。」(島)
「え~こんなの(お腹を指さして)と一緒に歩いてたら恥ずかしがるでしょ」(太田)
「サーシアがそんな風に思うわけないだろ…あ、なぁ今日行く店、いいとこ紹介
してくれよ。」(島)
「あぁ、そうですね、高校生ぐらいの子が行って喜ぶお店ですよね?でもちょっと
落ち着いてる方がいいですかねぇ?あの子ちょっと大人っぽいから。」(太田)
「そうだな、それにあの話もしなくっちゃ…だしな。」
島はちょっと含むような言い方をした
「…そろそろですか?ユキさんのご両親には?」(太田)
「あぁ今週末にアポいれた。長官の話だとだいぶ成長がゆっくりになってきた、
って言ってたからな…YUKIに乗った時と降りた時と身長30㎝伸びてたらしい。
身長さえゆっくり伸びてくれればまわりだって余り気にしないだろうし…それに
余り長いするといなくなった時長官の奥様がうんと寂しい思いをするだろうと
思って…少しでも早く森さん夫婦に世話してもらいたんだ。」(島)
「そうだよな…またサーシアちゃん、かわいいしなぁ…」(太田)
「素直で賢いからな。でもどこに行っても借り住まいじゃかわいそうだ。少しでも
はやく落ち着く状態を作ってあげないといけない…あ、ヤバ!時間!!太田、
メールくれな!」
島はそう言うと急いで長官宅へ向かった
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 8 作家名:kei