続 さらば宇宙戦艦ヤマト 8
サーシアはユキの声を聞くと不思議と心が静まる気がしていた
「ユキさん、時々こうしてお話出来るかしら?」(サーシア)
〈えぇ…いつでもどうぞ。私の姪になる予定だったんですもの…大歓迎よ〉
ユキはそう言って笑った
「ありがとう」
サーシアもにっこり笑うと
〈幕さんが首を長くして待っているわ。食堂へ行ってらっしゃい。〉(ユキ)
「じゃぁ…また!」
サーシアは立ち上がると部屋を出て食堂へ向かった
YUKI最後の食事は月と地球の間で一時停止させて全員で食べることにした
「長かった航海も後数時間となり最後の食事となった。大きな故障もなく無事
帰還できる事を感謝しゆっくり食事をしてほしい。」
長官一言で太田が“いただきます!”と声を掛けたを機に全員で食べ始めた
「幕の内さん、この稲荷寿司おいしいですね。」
幕の内の隣に座った太田がよく味わいながら言った
「そうか?うまいか。太田がうまい、と言うなら合格点だな。次の戦艦で出そうと
思ってるんだよ。」
幕の内がうなずきながら言った。まさかこの稲荷が古代家の母の味と知る人はいない
「え~ダメですよ、次、幕の内さんと乗れる保証ないんですから!」
太田が本当に残念がるとその横にいた相原が
「ほんと、おいしいです。実家のはもうすこし甘いかな…でも甘すぎない分いくら
でも食べられそうですよ。」
と、言った。それをサーシアは少し離れたところで聞いていた
(ふぅん…これがお父様のお母様の得意料理だったのね。幕の内さんはそれを
私に教えたくて厨房に呼んだのね。)
サーシアは味見で食べた稲荷をじっくり味わいながら食べた
「そろそろ地球へ着くころかしら…」
スターシアは通信機の前で落ち着かないようすで守に声を掛けた
「地球できちんとした人がサーシアの面倒をみてくれるんだ。大丈夫だよ…」
守はスターシアの肩をそっと抱いた
「あのユキを育てたご両親にお願いする、と言っていたからきっと大丈夫だろう。」
守はそう言ってはるかかなた地球の方を遠い目で見ていた
「守…日報…見たの?」(スターシア)
「いや、スターシアと一緒に見ようと思ってしまってあるよ。YUKIが近くにいたら
地球に戻りたくなりそうで…時間がたってから見ようと思っていた…見るかい?」
守が優しくそう言うと
「えぇ…」
スターシアがそう返事をすると二人で守の書斎に入って行った
最初は進の乗り込む前の地球防衛軍にオブザーバーとして出席した時の事が書かれていた。それはひどいもので守の知っている瀕死の地球を護ろうとした気持ちのかけらもないような気がした。
「せっかくテレサさんが呼びかけてくれたのに…」
スターシアは過去の自分に重ねた…もしサーシアが無視されていたら…と。
「そうだね…でもあのときは藁にもすがる思いだったからな…今と状況が違い
過ぎるんだろう…」
守はため息をつきながら日報を読んだ。翌日は出航に必要な武器とエネルギー、食材が積み込まれていく様子とクルーの様子がかかれていた。最後に“島から連絡がない”と記入されていた。
そして月を通過するとき旧ブラックタイガー隊が新しいコスモタイガーに乗って乗り込んでくれた事などが記載されていた。時々真田からのアドバイスなども記載されている。
「結婚式まで後二日だったんだろ…」
ユキが密航した事に気付いた日はゆうなぎの事と合わせて記載されていた。嬉しいだろうにユキの事はほんの少しだけ記載されていた。
「素直じゃないなぁ…土方校長も複雑な心境だっただろう…」
かつて自分も艦と運命を共にする覚悟で沖田艦長の命令に背いた。結果的にガミラスに生かされたが自分が生きていると分かった時はクルーとその家族を思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだったのを思い出した。
「守…」
スターシアはその辛い気持ちを察してかそっと守の手を握った
「大丈夫だよ…確かにガミラスの実験体として生かされたけど今は感謝している
こうしてスターシアと一緒にいられる事…仲間には申し訳ないと思うが彼らの分
も命を大事にしていこうと…今は本当にそう思っている。」
守は力強くスターシアの手を握り返した
進の日報はある日を境に日記になっていた。土方が艦長に就任したからだ
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 8 作家名:kei