続 さらば宇宙戦艦ヤマト 8
気付くとすでに日も落ちて空には大きなガミラスが月として出ていた
「遅くなっちゃったね。明日にしようか?」
守はそう言ったが
「守…お願い、まだ読みたいわ」
スターシアは妹によく似たユキの事が気がかりだったのだ
「わかった…もう少し読もうか…」
守はそう言うと端末を閉じかけたのを止めた
土方の日報にはずっと何事もなかったのに急に平たい機敏な未確認飛行物体が現れてあっという間に全滅してしまった事が記載されていた。もうダメだと思った時にヤマトから救援があり助かった事、進の進言により艦長の任に治まった事が記載されていたが一言
「私はある意味部外者だ…彼らを後ろから見守りたい。」
と記載されていた。イスカンダルへ行った彼らの中に入るのは至難の業だと思ったのだろう。かつては校長として彼らの上にいたのに…
(それだけ土方さんは進達を買っていたという事なんだろうな)
守はそう思いながら時間も忘れて日報を読んだ
テレサの星にたどり着く直前に宇宙気流に巻き込まれた事…その後の戦闘に勝利しテレサを解放した事…白色彗星の目標が地球と知り急いで進路を地球に取った事をそこで知った
(息つく間もない航海だったな…進)
まだ二十歳の青年が生き急いで行く様を見ているようで辛かったが守は日報を追った
やがてデスラーの文字が出てきてアンドロイドを操りヤマトに攻撃を仕掛けてきた事を知ると
「…デスラー、あなたと言う人は…なんてかわいそうな人なんでしょう…あのまま
静かにしていればまだガミラスで生きていられたのに…」
長い間双子星として、隣人として一緒だった思いが涙となって流れた。そこでユキの負傷…
進の日報にユキのおかげで無事だった事とデスラーが弱点を教えてくれた事が記載されていた。守もスターシアもデスラーが人として逝った事を知った
「もっと早くに気付けばよい隣人だったでしょうに…」
スターシアはガミラスを見上げた
そして戦いは佳境に入る。白色彗星が止まり地球に降伏宣言を行った。ヤマトはその時弱点を見抜く事が出来て波動砲で撃ちガス帯を取り除くことに成功した…
ここで土方の日報は終わっていた。
そして進の日報を見たがやはり何も記載されていなかった。
「ここから先は島くんが言った通りなんだろうな…」
守が肩を落としてそこから何があったのか…思い出した。
「森さんが亡くなって…真田が亡くなって…大勢…亡くなって…最期に進も…」
守は涙を我慢できなかった。日報を見ても泣かないと決めていた…自分の意思でイスカンダルに残る決意をした時進に何があっても泣かないと決めたのだ…とその時不意に守はスターシアに抱かれた
「サーシアが死んだと聞いた後…あなたは何も言わずそっと抱きしめてくれました。
あの時ひとりぼっちになった私の心を癒してくれました。今度は私の番です…」
スターシアがそう囁いた。守はスターシアの暖かい体を抱きしめた
「そうだった…あの時のキミは必死に耐えていた。一人じゃないと言いたかったが
そんな大それたこと言える立場じゃない俺が出来る精いっぱいの事だった…」
守は涙が落ち着くとスアーシアを横に座らせ次のフォルダーを開いた
そこにはイスカンダルから帰った後の様子なのか陽気な写真がスライドされて出てきた
「…まぁ…楽しそう。」
スターシアも守も先ほどの涙を流したまま笑顔でその様子を見ていた。相原が時々クルーの仕事中の写真を隠し撮りしたのをフォルダーに入れておいたのだった。
式3日前の沖田艦長の銅像の前の写真もある。二人とも寄り添い幸せそうだった。
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 8 作家名:kei