続 さらば宇宙戦艦ヤマト 9
「私…ユキさんのように優秀ではありません…だからご迷惑たくさんかけてしまうと
思います。」(サーシア)
サーシアが言葉を選びながら話すと
「ユキが優秀だったなんて私たちにはわからないわ。ただ人の言う事を聞かないガンコ
な娘だった、ってずっと思っていたの。自分の事は全部自分で決めて…今思うとなぜ
そんなに生き急いでしまったのかしら、って思うけど…ユキが幸せだったならそれで
よかったじゃない、って思えるようになったわ。あの子が自分の事を決める時に私達
に相談しなかった理由が今ならわかる…私の幸せとあの子の幸せは別だった、って
気付いたし…ひょっとしたらこの巡り合わせもあの子が導いてくれたのかもしれない
って思うのよ。ユキも姉妹がほしい、って幼い頃言ってたわ。きっとどこかで
見ていて喜んでいると思うの。」(母)
サーシアは思わず“とても喜んでくれています”と言いそうになってしまった
「ねぇイスカンダルの事も知りたいわ。ユキは忙しくて仕事の話してくれなかったの。
ニュースで知ってる事しか知らないわ。あなたの故郷の事…あなたの両親の事を
教えてくれるかしら?」(母)
ユキの父もニコニコ笑っている
「…私の両親ですか?」(サーシア)
「そう…多分ユキや進くんの事はよく聞いてると思うし私よりヤマトのクルーの方が
二人の事よく知ってるはず…でもあなたのご両親の事はあなたしか知らないの。
あなたのお母様は地球の恩人…間接的でも私たちがイスカンダルに繋がっているよう
で…あなたのご両親と私たちはサーシアちゃんを通じて家族になるの。」(母)
「そうだよ、ユキとサーシアちゃんは姉妹になるんだ。家族になるんだよ。」
ユキの父が優しそうに言った
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
サーシアはやっと自分の居場所を見つけたような気持ちになった。
しばらく三人で話をしていたが扉のノックの音で随分時間が過ぎた事に気付きユキの父親が対応するために立ち上がった
「お話が弾んでるところすみませんがマイクロが来ましたので三浦に行こうと思います。
戻ってきたら別の場所で食事を、と思っていますので荷物を持ってロビーに移動して
頂けますか?」(相原)
扉の先に南部と相原がいた。父親は
「そうですか、わかりました。用意してすぐ下へ行きます。」
そう言うと奥の二人に声をかけて南部と相原に頭を下げて扉を閉めた
「うまく行った感じですね。」(相原)
「あぁ、お父さん随分にこやかだったな…ユキさんに似てるとは言えあれだけキレイな
お嬢さんだから一緒にいるだけで嬉しいだろうな。」(南部)
「お?早速立候補ですか?」(相原)
「いや、彼女は違うな」(南部)
「違う?」
相原は何が違うのかよくわからなかった
「まぁ見てなって…」
南部は大きく伸びをするとエレベーターホールに向かって歩き出した
「ここはまだ未開発エリアで赤土のままですがいずれは緑化指定区域になるところです。」
相原が道路部分だけがアスファルトで舗装された道を走っている時に森夫婦に説明していた
「三浦など海岸線に沿った地域は緑化が済んでいてリニアなどのアクセスも整備されて
いるので生活には問題ありません。」
すると遠くに緑の地域が見えてきた
「あぁ見えてきましたね…あの先に海が見えてきます。」
しばらく走ると海岸線が見えてきた
「まだ本来の海水ではないですが…」
15分ほど走ると緑化地帯に入りそれから間もなく海岸線沿いの道路に出た
「キレイ…」
サーシアが太陽に輝く海を見て小さな声で言った
「これからこの風景が毎日見られるよ。」
島がそう言うと
「島くんは行った事があるのかな?」
ユキの父が聞いてきた
「実はここにいるクルーは完成した時一泊してるんです。リニアのステーションが
出来たばかりで人もまばらで…ユキさんとエアカー買おうかって相談してましたよ。
みんな気に入っちゃって…人数分鍵よこせ、って言ってたくらいです。」
島は当時を思い出して相原に同意を求めるように言うと
「そうなんです、別荘たくさん持ってる南部まで言う始末でしたから…」(相原)
「だってうちのは全部オヤジので自分のじゃないですからね。」(南部)
「加藤は月に家を買おうか真剣に悩んでましたよ。月からみる地球は格別だ、って
言ってこの風景と対抗しようとしてたんでしょう。」
山本が静かにそう言うと
「あいつの部屋はいつの間にか家族が来て住んじゃいそうだな」
太田の一言に全員がうなずいた
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 9 作家名:kei