続 さらば宇宙戦艦ヤマト 9
マイクロは食事をとるために一度レストランに寄った後森夫妻を自宅に送り藤堂とサーシアを自宅へ送った後寮へ向かった
「しっかしサーシアちゃん、ますますきれいになったんじゃないか?」(南部)
「そうだな、あれで学校に通ったらモテちゃって大変だろうな」(相原)
「……」
島は何も言わず外の風景を眺めていた
「でも守さんがお父さんだろ?すっごいファザコンかもな。だってやっぱり父親
がバーになるだろ?」(太田)
「理想が高くなる、ってことか。」(山本)
山本はイスカンダルの復路でユキに玉砕覚悟で告ったクルーの悲しげな後姿を思い出していた
「まぁ…その辺りも似ちゃうって事かな…」
島が視線をそらさずにそうつぶやくと
「南部、行けよ!」
相原が突っ込む
「俺?ちょっと…」
やっぱり南部遠慮気味だった
「らしくないなぁ」(山本)
「う~ん、なんだかねぇ…違うんですよ。そう、違うんです。うまく言えないけど
そうとしか言いようが…」
珍しく南部が明言を避ける。
「まぁ…随分慣れてきたと言っても王女、だからな。立ち振る舞いとか見てても
やっぱり気品がある、って言うか…せわしなさがないよな。」(太田)
「あのぐらいの女の子だったらもっとキャピキャピしてるもんな。」(相原)
「学校に行ったら変わるんじゃないか?同じくらいの友達がいなかったんだ。
しょうがないって。そればっかりは俺達がどうこうしてやれる事じゃないしな」
島の言葉に全員がうなずいた
全員で食事を済ませ解散となると島は自室のベッドにゴロンと横になった
(複雑だろうな…)
島はサーシアの気持ちを考えていた。自分達が親元から寮に来た日を思い出していた。
(俺達はまだいつでも連絡取れたし気の合う仲間に出会えた…あの決断が
俺の一生を支えている、と言っても過言じゃない…でもサーシアは…)
島はガバっと起きると携帯をとった
「今、大丈夫?」(島)
〈はい、大丈夫です。今日はありがとうございました。〉(サーシア)
「いや…今日どうだったかな、って思って…サーシアの気持ちを聞いてないのに
話しすすんじゃったからちょっと気になって…」(島)
〈うん…大丈夫。〉
島は余り元気のないサーシアの様子が気になっていた
「言いたい事、言っていいんだよ。」(島)
〈…〉
サーシアは何か言いたそうにしてるが…
「無理して言わなくてもいいけど…ちょっと気になってね。」
島はサーシアが何か言うと思ってはいない
「一人で抱え込むなよ。みんながいるからね。」
島の一言にサーシアの大きな瞳から涙がポロポロ落ちてきた。
〈島さん…私…〉(サーシア)
「ん?」(島)
〈大丈夫なのかな、って…〉(サーシア)
「うん」(島)
〈嫌われたらどうしよう、って…〉(サーシア)
「うん」(島)
〈ユキさんと比べられたら敵わない…〉(サーシア)
「うん」(島)
〈帰りたいって言ったら…イスカンダルに帰れるの?〉(サーシア)
「…不安だよな。不安がないはずがないんだ。ねぇサーシア?」(島)
〈はい〉(サーシア)
「多分ね、イスカンダルにいたら何一つ不自由なく一生暮らせるんだ。余り
考えたくないかもしれないけどお父さんとお母さんがいなくなったとしても
サーシアのまわりには生活に困らないようロボットが全て世話をしてくれる
よね?」(島)
〈えぇ…多分…〉(サーシア)
「不安を煽るようだけどここに来て辛い事絶対あるんだ。決していいことばか
りじゃない。友達はたくさんできるだろうけど仲良くなったのにケンカしちゃ
て友達でいられなくなったり…人の裏側が見えてしまったり…だけどその
なかで一生信じられる友達…ずっと付き合える人を自分の力で見つけないと
いけないんだ。とても難しい事なんだけどそれはイスカンダルじゃ無理な事
なんだよね。どうしてもイスカンダルに帰りたいってなったら…俺がなんとか
するよ。でもその前に絶対俺に相談して。」(島)
〈島さん…〉(サーシア)
「ただ辛いだけでなにも地球で思い出もなく帰るような事だけはさせたくない
んだ。地球も楽しい事が絶対にあるんだ。
もちろん時々お父さんとお母さんの顔を見たい、って言うのは歓迎するよ…
と言ってもYUKIがイスカンダルに行くのは不定期だから今すぐ行きたい、って
言われてもすぐ対応できないけど…」
島が話してる間にサーシアの涙は止まった
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 9 作家名:kei