続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10
島はサーシアのお墓に来ていた。途中、摘んだ花を手向けながらじっと見つめていた。
(サーシアさん、私はあなたと出会ってから私の人生が変わってしまった
ような気がしてなりません。ユキ、そしてあなたの姪のサーシア…。
もし…あなたが生きて地球へ来ていたら…どうなっていたのでしょうか。)
島は一番新しいそのサーシアのお墓を見つめながら誰が答えてくれるわけでないことをずっと考えていた。サーシアを見ていると熱い想いがこみ上げてくる…。
(あなたの姪を私は慕っています…そしてあなたの姪も私を慕ってくれて
います…が、もし私が彼女を好きになって…不幸になってしまったら
どうしたらいいのでしょう…ずっと好きだったユキが先の戦いで亡くな
りました。親友と一緒に旅立ちました。大事な人が逝ってしまうなら
最初から好きにならなければよかったと何度も思いました。前に進まな
いといけないとわかっていますがどうしたらいいのかわからないのです。
自分がこんなに臆病だと思いませんでした…)
島はサーシアのお墓の前に座った
(あいつと別れて…あいつとユキがいなくなった俺の心はいつもぽっかり
穴が開いたようだ。しかし今その穴を埋める気にもならない…)
島は空に現れたガミラスを見つめた
「お疲れ様!」
サーシアがラウンジに顔を出した。その時すでにメインクルーだけがラウンジにいて他のクルーは部屋に入っていた。
「やぁサーシアちゃん。ちゃんと甘えてきたかい?」
太田がソファーでくつろぎながら聞くとサーシアは太田の横に座って
「やぁね、甘えるなんて…たくさん話してきたわ!お母様も地球の話した
ら一度見てみたいわ、って言ってわ。」
今までの中で一番いい顔をしてる、と太田は思った。
「…あれ?島さんは?いつも一緒なのにどうしたの?」
いつも一緒のメインクルー、一人少ないのは不自然だった
「あぁ、島はどこかへ出かけたよ。ちょっと疲れてるみたいだったから
ひとりにした方がいいかと思って…」
南部がそう答えると
「そう、なんか難しい顔してたんだよな。」
相原も付け加える
「でもサーシアちゃんが心配する事じゃないと思うよ。それよりサーシア
ちゃんも疲れたんじゃない?」
太田がそう聞くと
「…私は平気…そう、島さん出かけたの。」
サーシアはきっとあそこにいる、と確信した
「さて、そろそろ俺らも部屋に戻るよ。サーシアちゃん、また明日ね。」
山本が大きな伸びをして言うとサーシアも
「そうね、みなさんお疲れよね。じゃぁ私も戻るわ…おやすみなさい」
サーシアは山本にそう言うとラウンジを出た。
「サーシアちゃん、やっぱりいい顔してますね。」
相原が嬉しそうに言うと
「一年ぶりだからな…でもスターシアさんいなかったな。調子でも悪いのか?」
山本がずっと気になっていた事を口に出した
「そうだな…まぁ、今日は着いた時間も遅いみたいだし…とりあえず俺ら
も休むとしよう…島はまだ帰ってこないか…でも俺らがここにいなくて
もあいつは大丈夫だろう?」
南部がメガネを拭きながら言うと
「多分な…勝手知ったるイスカンダルになりつつあるからな…」
太田がそう言うと“じゃぁ”と言って立ち上がった。それと同時に他のクルーも立ち上がりラウンジを後にした
サーシアはラウンジを出ると一度守の所へ行って
「お父様、おばさまの所へ挨拶してくるわ」
と告げて墓標の並ぶ墓地へ向かうためにエレベーターに乗った
「島さん」
サーシアは離れた所から島をずっと見ていた。しばらく動く気配がなかったので様子を見ていたがサーシアが痺れを切らせて話しかけてきた
「あぁ、サーシア…どうした?」
島は少し驚いた顔でサーシアを見たがすぐにっこり笑って
「あぁおばさんに帰京の挨拶だね。」
島はそう言って正面の場所を譲った。サーシアは“ごめんなさい”と言いながら正面に座るとそっと手を合わせた
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10 作家名:kei