続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10
「いつ来てもここは寂しい所だね」
ふたりでずらりと並んだ墓標を見つめて島がつぶやいた
「そうね…」
サーシアは島の気持ちに胸がつぶれそうだった。
(島さんはおばさまとユキさんが忘れられないのね…)
サーシアは島の気持ちが自分に向いていない事を考えると胸が苦しくて仕方なかった。呼吸するのも苦しいほど胸が苦しくなる…
「サーシア?」
心ここにあらずの返事に島がサーシアの顔を覗き込む
「…え?…あっ…う、ううん、なんでもない…。」
サーシアは島の顔が目の間にあって驚いてしまった。
「疲れたか?疲れた所で夜風に当たって風邪でも引いたら大変だ。
帰ろうか…」
島がそっとサーシアの背中を支えるように手を添えた
「えぇ…」
サーシアは恥じらいながらも島の横を歩いた
〈サーシアちゃん…どう?久しぶりのイスカンダルは。〉
ユキがサーシアの夢の中に出てきた
「ユキさん…お父様とお母様に会えて嬉しかったわ。地球の話をたくさん
したの…お父様とても喜んでらしたわ。お母様は地球に興味持った
みたいだし…後ね、私お姉さんになってたわ!妹が出来たの!嬉しい!
ユキさんにとっても妹だからね!一緒にかわいがってあげてね。」
〈そうね、サーシアちゃんはお姉さんになったのよね…ステキね。〉
「…ねぇ、ユキさん…島さんは今もおばさまの事が忘れられないのかしら」
サーシアは気になっていた事をユキに聞いた
〈地球に来る途中で亡くなったサーシアさん?〉
「そう…今回も墓標へ行って花を手向けてくれていたわ…」
〈気になるも何も地球の恩人ですからね…本来なら全員で行って
ほしい
くらいよ?でも…〉
「でも?」
サーシアが詰め寄る
〈島くんは古代くんと一緒に最初にサーシアさんを発見した人だから
古代くんと一緒でいろいろ思う節があるのかもしれないわね…それは
私からもそっとしておいてあげてほしいわ。〉
ユキがそう言って寂しそうに笑った
〈私も時々思ったわ…もしサーシアさんが生きてらしたら古代くんはどう
しただろう、って…〉
サーシアはユキの告白を聞いて驚いた
「ユキさんもそう思っていたの?」
つい本音が出たサーシアに
〈うふふ…やっぱり…サーシアちゃんは島くんの事が好きなのね。
サーシアちゃん無意識に島くんを目で追ってるから誰もがわかりやすい
って思ってそうだけど…〉
サーシアはユキの言葉を聞いて一瞬思考回路が止まった
(私が…島さんを好き?)
〈気付いてなかったでしょう?島くん見て苦しくなったりしたでしょう?
それは無意識に島くんを“意識”…気になってたからよ。〉
サーシアは黙ったままだった
〈好き、って事がよくわからないわよね…その感情は自分でコントロール
出来ない事なの…でも自然でとても素敵な事よ。そして普通の事なの。
大丈夫よ…。相手の事が好きになればなるほど自分に自信がもてなくて
些細な事で落ち込んでしまったりするの。〉
「ユキさんもそうだったの?」
〈えぇ…周りはすぐ分かったみたいだけど本人同士は分からないモノよ。
はっきりお互いの気持ちを言葉で伝えられるまではやっぱり不安だわ。
でもほんのちょっとの事で心が暖かくなったり…不思議よね。〉
ユキはそう言ってにっこり笑った
「島さんは私の事どう思ってるのかしら…」
サーシアがつぶやいたが
〈…さぁ?私からは何も言えないわ…私が出来る事はサーシアちゃんの
心を軽くするために話を聞いてあげることだけ…〉
「ユキさん…」
〈自分の人生は自分で切り開かなくてはいけないの。〉
ユキは凛としてサーシアを見つめた。
〈サーシアちゃんはサーシアちゃんなんだから…サーシアさんと違うの
よ。どんなに似ていてもあなたはあなた…だから頑張って!〉
サーシアはいつの間にか深い眠りに落ちていた
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10 作家名:kei