続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10
島は滞在中少し離れた所からサーシアを見ていた。
(キミはここに残る、なんて言わないだろうか…)
島は誰に気付かれることなく小さなため息をついた
「ねぇお母様?」
サーシアが甘えるようにスターシアに声を掛けた
「一度…お父様の故郷をご覧になったらどう?」
YUKIの滞在も後二日と迫っていた
「人がいっぱいいて息が詰まってしまいそうな時もあるけど…とてもすてき
なところよ。ユキさんのご両親にも会ってほしいし…」
スターシアはサーシアの心が痛いほどわかっていた
「サーシア…いい子ね。ありがとう。でも私はここを離れるわけには…
私がここを離れるときはイスカンダルが無くなる時…そう思って今生き
ているの。でもあなたが生まれてミオが生まれて…ひょっとしたらこの
星はもっと生きたいって私に訴えているのかもしれないわ。だったら
やはり一緒に暮らす人がいないとダメだと思うの。あなたの故郷はここ
だけじゃないわ。だからあなたはここに縛られる必要もない…自由に生
きていいのよ。」
サーシアは瞳にいっぱい涙をためていた
「私は…やっぱりお父様とお母様と暮らしたい…地球で何一つ困る事なく
暮らしてるけどやっぱり本当のお母様とお父様と暮らしたい…」
サーシアの正直な言葉だった。スターシアはサーシアの訴えを黙って聞いていた
「私…ここに…残る。残ってミオの世話をするわ。」
サーシアの瞳から大粒の涙が落ちた
「サーシア…私には分かる…逃げてはダメよ。」
スターシアの言葉にサーシアはハッとした
「ここにいたらあなたはその困難に立ち向かわずに済むでしょう。だけど
それでいいの?これから先あなたの幸せはここにないのよ。いずれ私も
お父様も先にあの墓標へ行くわ。あなたはそれを見送らなくてはいけな
いのよ…私と妹はずっとその役目をしてきました。見送る、ってとても
辛い事なのよ。いずれミオも地球へ行くでしょう。そしたらあなたは
ここで一人になってしまう…地球でたくさんの人に囲まれて生活した事
があるならばここでの生活は寂しくて耐えられないはずよ。」
スターシアはミオをカプセルに入れるとそっとサーシアを抱きしめた
「あなたはミオの手本にならないといけないの。ミオが幸せになるために
導いてほしいのよ。そのためにお母様はどんな辛い事も我慢できるわ。」
「お母様…」(サーシア)
「大丈夫よ…私の娘ですもの…。」
スターシアはそう言ってサーシアの涙を拭いた
「守、世話になった…スターシアさんもありがとう…どうかお体を大切に
してください。これから1年に一度くらいのペースでイスカンダルへ、と
思っております。」
藤堂が守とスターシアに挨拶をした。サーシアはスターシアの横に立っている。
「えぇ、ぜひお越しください。お待ちしております。」
藤堂が守に握手を求めると守も右手を差し出して力強くお互いの手を握った
「お父様、お母様…」
サーシアがスターシアの隣から二人の正面に立つと
「行って参ります…私はこれから訓練学校へ入学するのでしばらくこちらに
来る事は出来ないと思いますが次に来る時は立派な宇宙戦士として戻って
参ります。それまでは戻らないので…どうかお体を大切になさってく
ださい…。」
サーシアはそう言うと敬礼してメインクルーの方へ向かい走り出した。スターシアは一瞬声を掛けそうになったがそれを守が制した
「サーシア…頑張れ!」
守はサーシアの後ろからそう声を掛けた。
「YUKI地球へ向け発進!」
YUKIは静かなマザータウンの海をけるように大海原へ飛び立っていった
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10 作家名:kei