続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10
「行ってきます。」
軍のターミナルでサーシアは森夫妻ににっこり笑うとゲートへ向かって歩き出した。
「気を付けてね。」
母がそう声をかけるとサーシアはにっこり笑って手を振った。父は何も言わず手だけを振った。サーシアが久しぶりにイスカンダルへ里帰りする日だった。
ユキの両親はサーシアの後ろ姿をみえなくなるまで見送った
「ちゃんと帰って来てくれるかしら…」
ユキの母が小さな声でそうつぶやくと
「大丈夫だよ、サーシアはちゃんと帰ってくる…私たちの所へね。」
ユキの父はそう言うと“帰ろうか”と言ってユキの母の肩をそっと抱いた
「よろしくお願いします。」
サーシアはYUKIに乗り込むとすぐに艦長室へ向かい藤堂に挨拶した
「サーシア、待っていたよ。久しぶりだな…元気だったか?」
藤堂はおじいちゃんの顔だった
「はい、友達も出来て…学校ってとっても楽しいところです…いろいろ大変な事もあって
悩む事もあるけど…でもお母さんが相談に乗ってくれたり友達が助けてくれたりして
くれるので大丈夫です。それより…似合ってるかな?大丈夫?」
サーシアは特別に支給されたヤマトの制服を着ていた。ユキのお古だ。
「大丈夫だよ、よく似合ってる。さぁ後5時間で出航だ。そろそろ点呼も始ってる頃
だろう?下に行きなさい。」(藤堂)
「はい、長官!」
そう言ってにっこり笑うサーシアに
「二人の時は“おじいちゃん”でいいからな。」
藤堂はそう言って笑った。
「森サーシア、ただいま着任しました。よろしくお願いします。」
第一艦橋に降りたサーシアが揃っていたメンツに挨拶した
「サーシア、待ってたよ。お疲れさん…ご両親は?」(島)
「エアポートまで送ってくれました。」(サーシア)
サーシアはまだなにかいいたそうだったがそこへ赤い物体が飛び込んできた
「さーしあチャン、オ久シブリデス。オ元気デシタカ?三浦ニ行ッテカラズット会エナ
クテトテモ寂シカッタデス。」
アナライザーはサーシアが三浦に行った後半年ほど森家に滞在していたが頃合いを見計らって薩摩と時々森家に伺うようになっていた。ほんの二週間程時間が開いているだけなのに何か月振りかのような感じのアナライザー。
「アナライザー!会いたかったわ。元気そうでなにより…今日から
しばらくよろしくね。」
最初に合った時はアナライザーより少し大きいぐらいだったサーシアは中腰でかがむようにしてアナライザーの頭をなでた
「さーしあチャン、トテモきれいニナリマシタ。恋シテマスカ?」
さすが機械モノ。遠慮がない
「…やだ!アナライザー!」
真っ赤になってサーシアはアナライザーを追いかけようとしたがそのわきを抜けてキャタピラーをカタカタ言わせながらさっさと逃げてしまった
「もう、逃げ脚だけは…相変わらずね!」
サーシアがアナライザーの行った先を見つめながらそう言うと島が笑いながら
「ははは、アナライザーはサーシアに会えたのが嬉しくてしょうがないんだな。昨日
からサーシアに会いたくてずっとあの調子だ。」
と言った。そして真顔に戻ると
「YUKIはこれより出航前点検に入る。各自持ち場をしっかり頼むぞ…サーシアは
幕の内さんの手伝いを頼む。」
第一艦橋の空気が一変した。全員が敬礼すると各自の持ち場へ走って行った。
「島です、入ります。」
島がメインクルーに点検を言い渡した後艦長室にいた
「サーシアはどうしてる?」(藤堂)
「はい、予定通り幕の内さんのところへ行かせました。レーダーは太田が自分の
持ち場と一緒に点検することになっています。」(島)
「そうか…いや、久々に会ったがやはりユキに似てきたな。」(藤堂)
「えぇ…そうですね。だけど随分感じが変わりましたね。やっぱり同世代と一緒に
いると変るもんですね。」(島)
「サーシアが変わった?」(藤堂)
「いえ、ヘンな意味じゃないですよ。女の子らしくなったというか…以前はおとなし
い感じでしたが年相応の楽しんでいる感じが見られます。訓練学校へ通う前に
一般の中学に行かせてよかったかもしれませんね。」(島)
「そうか…楽しそうか………」
藤堂は島の言葉を聞いて嬉しそうにうなずいた
「サーシアはどうしましょう?前回YUKIのレーダー席に座らせていましたが…」
島が藤堂に指示を仰ぐと
「そうだな…しばらく幕の内のところで様子を見て体がきつくないようだったら
レーダー席に座らせよう。」
藤堂の言葉に島は了解しました、と言うと第一艦橋に降りて行った
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 10 作家名:kei